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17 ニューハーフ魔法の仕組み




 私は先を進む松里家君に話しかけ、疑問を口にします。


「ところで、気になっていたことなのですが」

「なんでしょうか?」

「ニューハーフ魔法、というのは何なのですか?」

「ああ、そういえば説明していませんでしたね!」


 松里家君は、嬉しそうにこちらを振り返り、話し始めます。私も松里家君が話しやすいよう、足を早めて隣に立ちます。


「まずそもそも、僕が最初に目指したのは一時的な女体化魔法。つまり、性別転換魔法です。これの一部を流用することで、男のまま女性的な肉体を手に入れることを可能にするつもりでした」

「ほうほう。それは成功したのですか?」

「ええ、大成功です。一時的な女体化はもちろん、永続的な女体化も可能です。宮廷魔術師の方、僕の師匠なんですが、そちらの方と一緒に研究することで女体化魔法は完成しました」


 なんと、どうやら女体化魔法なるものまで完成していたようです。どうやら、松里家君は魔法研究家として既に一人前の実力があるようですね。

 もしかしたら、今後はそういう方面で協力を求めることがあるかもしれません。


 と、考えがそれてしまいました。


「では、ニューハーフ魔法というのはその女体化魔法の一部を流用して完成したのですね?」

「いえ、それがそう上手くは行きませんでした」


 残念そうに松里家君は首を横に振ります。


「といいますか。そもそも、研究する過程で初めて明らかになった恐るべき事実といいますか。簡潔に言うと、僕たち召喚された勇者達は人間ではないようなのです」

「は?」


 突然の発言に、私はさすがに驚きを隠せませんでした。勇者は、人間ではない。これは私もまた、人ではない何かであるという意味になります。さすがに他人事では済みません。


「この事実に関しては、まだ一部の宮廷魔術師と僕しか知りませんが。どうやら、勇者とは人間によく似た形の、個別のユニークモンスターのような存在なんです。人間よりも、どちらかというと魔物に近いんですよ。なので、女体化魔法はそもそも人間の肉体構造を前提にしていますから、上手く働かず使えなかったわけです」

「あの、それよりも先に聞きたいのですが」

「はい何でしょう?」


 私は女体化魔法についての説明を続ける松里家君を止め、先に訊きたいことを訊いておきます。


「勇者が、私たちが魔物のような存在というのは本当なのですか?」

「ええ。僕自身がサンプルを提供してまで調べましたからね。間違いありません。わかりやすい証拠を挙げると、例えば髪型や顔です。召喚されてから、既に一年以上の時が経過しましたが、髪が伸びた勇者は一人も居ません」


 言われてみれば。確かに、私も髪が伸びてきて切った記憶がありません。これはてっきり、勇者の召喚ボーナスの一つかと思っていたのですが。


「魔物は基本的に、成長であまり姿が変わりません。決まった姿形を維持します。勇者の特徴と一致するんですよ。恐らく、何十年かすれば勇者が魔物同様に不老の存在だということがはっきりしますよ」

「そう、ですか。さすがに少し、驚きを禁じえませんね」


 私は気分を落ち着かせようと、深く息を吸い、吐き出します。ともかく、勇者は人間と異なる種の生き物。それだけ分かっていれば、十分でしょう。変に意識する必要は無さそうですし。そもそも自分たちがこの世界の異物であることは、最初からの話です。

 ステータスやスキルという異常。それと同様に、種も異常である。ただそれだけの話です。


「では、話を戻します」


 松里家君が言って、本題に戻ります。


「女体化魔法が直接役に立たず、僕という固有の種の構造を変化させる魔法は難しかった。サンプルが取れると言っても、殺して解剖するわけにもいきませんからね。データが足りず、僕を女体化したり、肉体構造を変化させたりする魔法は完成しませんでした」

「なるほど。そうなると、ニューハーフ魔法とは何なのですか?」

「ええ。そこで逆に考えたんです。肉体構造そのものを魔法で弄る必要は無い。もっと古典的な方法でもいいんだ、と」


 松里家君は、得意げな表情を浮かべながら語ります。


「古来、女性はコルセットを使って体型を矯正しました。他にも纏足等、圧力で身体を矯正し、形を変える手段というのは数多く用いられて来ました。ちなみに、この世界にも同様の文化が見られる地域はあるそうですよ」


 その話を聞いて、私も少し察しが付きます。ニューハーフ魔法の仕組みについて。

 ですが、ここは松里家君の話をしっかり聞いておきましょう。説明したがっている様子ですし。


「そこで、僕は肉体そのものに作用する魔法でなく、恒常的に肉体に圧力をかけ、構造を矯正する魔法を作ったんです。男性的な骨格を女性的な骨格に。骨盤や肩幅がわかりやすい部分でしょうか。他にもくびれを作る為に腹部を圧迫したりもしています」

「つまりニューハーフ魔法とは、骨格矯正魔法なのですね?」

「ええ。ただ矯正が効きやすいよう肉体に働きかけたり、他にも体脂肪の付き方のバランスを変えたりする効果もあります。これが無いと、体つきが男性的になりますからね。完全な構造変換の魔法は無理でも、その程度の働きかけなら可能だったので、ニューハーフ魔法に組み込みました」


 つまりニューハーフ魔法とは、骨格矯正と軽度の変身魔法を組み合わせたものなのでしょう。


「今はまだ、魔法を発動し続けなければいけない状態です。しかし、もう数ヶ月ほどすれば矯正は完成して、魔法の発動も必要なくなります。そこまで時間は掛かりますが、ともかくニューハーフ魔法はおおよそ完成したものと見ていい状態です」

「ふむ。ちなみに、松里家君の胸部には膨らみがあるように見えますが、それもニューハーフ魔法ですか?」

「あ、これですか。こっちは別の魔法です。胸板の上にパッドのようなものを生み出す偽乳魔法です。こっちは一日で完成したので、特に言及するようなものでもありませんが」


 つまり、松里家君は現在二つの魔法を常時発動しているわけですか。男性が女性的に振る舞う、というのは大変だというのがよく分かります。

 これに加えて、仕草等も女性らしさが求められるわけですからね、松里家君の苦労が伺えます。


 それほど、私との行為に及びたいのでしょう。となれば、こちらも生半可な態度ではいられませんね。

 受け入れるにしても、断るにしても、かなり真剣に考えてあげる必要がありそうです。

突然ですが、18時の定期投稿を今後は21時に変更させて頂きます。

これは、現状を考えると18時ですと投稿に遅刻する場合が増えると考えられる為です。

何度も遅刻するよりは、定期投稿の時刻自体を遅らせた方が良いかと考え、このような対応に至りました。


投稿は少し遅い時刻になりますが、どうか今後共宜しくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
話は面白いんだ。間違いなく。 ただ、このまま読み続けて本当に良いのか、物凄く不安になるなぁ>_<
本当にどうしてこうなった
[気になる点] そこまで矯正出来るのなら、声帯も変えれると思うんだけどなー。 あえて残してる?
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