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12 勇者達との接触




 叙爵式はつつがなく終わりました。全くトラブルも無く、本当に簡単な式でしたので、私とマルクリーヌさん以外に誰もいない状態でしたが。

 たった二人の叙爵式を終え、私はまた王宮内を歩き回ります。


 久しぶりの王宮なので、マルクリーヌさんにも少し見て回ってみてはどうか、と提案された為です。そして、シュリ君にも顔をみせてきてはどうか、という話にもなりました。

 なので、今はフラフラと王宮内を見て回りながら、シュリ君の居る研究室を目指しているところです。

 ついでに、勇者の誰かと交流できれば御の字です。


 すでに勇者と出会ったような気がしなくもありませんが、気の所為でしょう。超加速するストーカーが今も私をどこかで見ているのかもしれません。が、やはり気の所為でしょう。


 なので、そういったストーカーの類ではない勇者との邂逅を求め、歩き回ります。

 時刻も少し日が傾いてきた頃ですし、日中はどこかに出かけていた勇者も戻ってきているかもしれません。



 という偶然を狙い、散策していたところ。都合よく、見覚えのある勇者達の姿を見かけました。


「あれ、乙木さんっ?」


 ちょうど正面から歩いてきた三人組のうち、一人が声を上げます。

 その顔はよく見知った顔。勇者称号の中でも、聖女を冠する少女。我が魔道具店の携帯食料『甘露餅』がお気に入りで、よく買いにいらっしゃる常連勇者、三森沙織さんです。


 三森さんはトタトタ、とこちらへ可愛らしい仕草で駆け寄ってきます。駆け寄る姿すら、様になるとは。これが女子力というものでしょうか。


「どうなさったんですか? 王宮にいらっしゃるなんて、珍しいですね」

「ええ、まあ。所用で。それも終わったので、顔見知りに顔を出していこうかな、と王宮内をフラフラしていたところです」

「あ、そうだったんですか。なら、今はお急ぎですか?」

「いえいえ。特に決まった用件があるわけではないので」

「そうですか、良かった。お急ぎのところを引き止めちゃったら悪いかな、と思ったんですけど、平気みたいですね」

「ええ、むしろ三森さんとお会いできたなら、こちらとしてもお話ぐらいはしていきたかったぐらいですよ」


 とまあ、私が三森さんと親しげに話を盛り上げていきます。そこに、先程まで三森さんと一緒に居た二人の少年が追いつき、話に入って来ます。


「お久しぶりです、乙木さん」

「ようおっさん! 久しぶりだな」


 礼儀正しく『勇者』の金浜蛍一君が。気さくに『剣聖』の東堂陽太君が声を掛けてきます。このお二人とは、かなり久々の顔合わせですね。勇者称号の四人が揃って私の魔道具店に来た日以来、会っていなかったはずです。


 まあ、そもそも定期的に交流のある王宮内の勇者というのが『聖女』の三森さんと『賢者』の松里家君ぐらいなのですが。

 その松里家君も、何やら最近は忙しいのか顔を出してくれていません。そうした事情もあり、王宮内の様子を知るのに都合の良い伝手を増やしておきたかったわけです。


 これも良い機会でしょう。松里家君以外の勇者称号の三人が集まっているのですから、他の召喚された方々を仲介して貰いましょう。


「お久しぶりです。最近どうでしょう、お変わりありませんか?」

「はい。まあ、最近になって僕らは前線に送られることが増えましたが。特に危険も無いので、大きな変化はありませんね」


 金浜君の答えに、私は頷きます。勇者の皆さんが前線に送られる頻度は、そのまま戦争の激化を示します。つまり武器や防具等の戦時特需は確実に発生するでしょう。

 一つ良い話を聞けました。他にも何か情報が得られないか、と話題を変えます。


「ところで、皆さんはこれからどちらに?」

「晩メシだよ。今王宮に居る奴ら全員で集まって晩メシだ。一応、クラスの結束みてーなやつを維持すんのにそれだけは続けていこう、って話になったからな」


 今度は東堂君が答えてくれました。それも、理由まで添えてです。

 そして、確かにこれは良い選択です。集団を維持しなければ、王宮に渦巻く魑魅魍魎、つまり政治力に対抗し辛い個人が狙われ、何らかの不都合な事態を招くリスクが増えます。


 ということは、勇者の皆さんも王宮側の人間に対して何らかの不信感を抱いている、ということになります。


「王宮に、何か不審な動き等はありませんでしたか?」


 そこで、私は最も重要な部分を確認します。すると、予想とは異なる答えが帰ってきました。


「あぁ、まあそれも多少はあります。でも、一番は身内というか、僕たち召喚された勇者の側に原因があって」

「ほう、それは初耳ですね」


 私が興味を示すと、金浜君はニコリと微笑み、こう言います。


「どうでしょう、乙木さん。せっかくですし、夕食をご一緒しませんか?」


 この話の流れで、この誘い。単に夕食を一緒に食べたくて誘った、というわけではないでしょう。


「ぜひ、こちらこそ」


 私も笑みを浮かべて、金浜君の提案を受け入れます。


「それは良かった。では、行きましょう」


 こうして、私は勇者の皆さんと夕食を共にすることとなりました。

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