水瓶座の国
『水瓶座の国』
ウールネット=フィリアが統治する国。魔法が発展しており、そのため、魔導師が多く集まり、魔導書も沢山置いてある。
フィリアは水瓶座の国で群を抜いている治癒魔法師だ殆どの怪我はフィリアにかかれば簡単に治る。
契約者であるルカは乙女座の加護で使えるようになった転移魔法を使用し、寄りたがっていた天秤座の国へと立ち寄る。
剣技が有名な天秤座の国では、武具を販売している店が多数あるためそこに少し用事があるのだ。
「コレ、もう少し小さいのください」
普通に兵士が持つであろう剣よりは大きくなく、小型の果物ナイフよりも小さくもない刃物を買いに武具店へと訪れた。これからの戦いで何か加護よりは強くはないが、護れるモノを欲しかったのだ。
買った刃物を腰の見えないところに装着し、武具店を後にした。
天秤座の国を出て、水瓶座の国へと急いで向かった。転移魔法は行ったことのない国へは行けないため、水瓶座の国へは自分の足で行かないといけない。幸い、獅子座の加護のお陰でスタミナが減らないためそんなに時間は掛からないで済む。
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水瓶座の国へと着くと、夜が開けていた。少し眠いが十二支が襲ってきたらと思うと眠ってなんかいられない。
乙女座の国で十二支の辰ウィルフレッドとの戦いで腕が負傷したが、ベルセが少しは治療した。
それでもまだ完治は出来ていない。十二星座の中で最高治癒魔法を使えるフィリアにまずは治してもらえないか掛け合ってみないとわからない。
水瓶座の国では、魔法に関係する店が多いがそれと同じく喫茶店みたいなのも多く見える。
「この世界でもああいうのあるんだな」
まだ早朝だというのに、喫茶店には座って茶を飲み、読書をしている人も複数いる。
王宮へと急いで向かう。
王宮は街と違って、少し静けさが目立った。
「フィリアー!! いつんなったら出てきてくれるん?」
フィリアをの名を呼びながら、扉を優しくノックしている男性がいる。頭を丸めた高身長な男性だった。
「まぁ、ええわ。また来るからよろしゅうな」
頭をポリポリと掻きながら振り返ると、ルカに気付いたらしく笑みを浮かべながらこちらに向かってくる。
「お前もフィリアに会いに来たん? あいつ出てけぇへんで。頑張りや」
手をヒラヒラと振り、去っていってしまった。男性からは敵意は感じ取れなかった。
男性が去った後、フィリアがいるであろう扉をノックしようとすると後ろから声をかけられる。
「フィリア様に何かご用でしょうか?」
振り返ると中性的な顔立ちをした男性が立っていた。
「俺は契約者だ。契約をするためにここに来た」
「それはそれはご苦労様です。フィリア様は自身の部屋から滅多に出ないですよ」
「そうですか...」
「はい。申し遅れました、フィリア様の側近の魔導師アセラと申します」
深々と礼をするその姿は、一動作一動作がとても凛としていた。
「さっきの男性は?」
「先程の男性はボニフェース様と言いまして、結構前からフィリア様にコンタクトを取ろうとしてるのです」
少し嫌な予感がした。
もしかたしたら、ボニフェースと言う男性は十二支ではないかと。もし、合ってたのならフィリアが危ない。
「うる..さい...さっき..から」
アセラと話していると扉が開いた。見ると寝間着姿のフィリアが目を擦りながら出てきたのだった。
「フィリア様、珍しいですね」
「うるさか..ったか..ら」
獅子座の国の姫君アリュレ程ではないが少し小柄でまだ幼女と言われても信じてしまう。
「失礼な...こと..考えてる..?」
「考えてないよ」
最高治癒魔法師と聞くが、もしかたら心の中も読めるのではないかと少し冷や汗をかいた。早速、本題に入ろうとすると。
「契約で...しょ? するよ..?」
「契約内容聞かなくていいのか?」
「ウルカから...少し聞いて..る」
天秤座の姫君であるウルカが根回しをしてくれたのであろう。それはとても助かった。
「その...腕..」
欠伸を噛み殺しながらルカの腕を指さす。
「治す...?」
「そうしてくれると助かる」
「わか...った」
フィリアは腕に手をかざして魔法を唱える。
『中・治癒』
治癒魔法をかけると、みるみるうちに痛みが引き嘘みたいに治っていった。
「痛く...ない?」
「あぁ。ありがとう」
「うん....私は..これで」
フィリアはそう言うと部屋へと戻っていってしまった。
「フィリア様は人と話すのが苦手でして」
フィリアとの会話を聞いてから、ルカに話しかける。言葉が途切れ途切れなのだから、話すのは苦手な事は伝わった。
だが、重要な事を言い忘れている。
十二支の事についてだ。
いつなんどき十二支が襲ってきてもおかしくはない。だが、アセラが言うに出てきても一日一回しか出てこないらしく今日はもう出てきてはくれそうにない。
アセラに挨拶をし、仕方なく王宮を後にした。すると、さっき会った頭を丸めた男性ーボニフェースに話しかけられる。
「よぉ。兄弟」
「....兄弟? 」
「そうや。恋敵って書いて兄弟や。ええ響きやろ?」
白い歯を見せてニヤリと笑う。
「フィリアに会いに来たんやろ、会えたか? めっさべっぴんさんやろ?」
ボニフェースの口調は明るく、とても親しみやすい感じだ。だが、誰かわからないのが現状のため警戒を怠らない。
「ちょっち付き合ってくれや」
ボニフェースに連れられてやってきたのが一つの喫茶店だった。店員を呼び軽く注文し、兄弟にも同じやつでと注文する。
「さてと、少しお話しようや」
「何も話すことはないぞ」
「そんなつれないこと言わんといてくれや。契約者なんやろ? 兄弟」
契約者という言葉を聞き警戒心が高くなった。
「そんな警戒せんでも、なんもせえへんよ。ワイはただフィリアと付き合いたいだけや」
ボニフェースの言葉に嘘は言っていないようにも聞こえるが、何か罠かもしれない。
「でもな、全然ワイと会おうとせえへんね。なんでやろうな顔か?」
「さぁな」
「おっと、自己紹介がまだやったな」
コホンとわざとらしい咳払いをしたあと飲み物を飲み干し口を開く。
「ーー十二支の申のボニフェースや」
ガタッと席を勢いよく立ち上がり、身構えるが。それを、ボニフェースは手でまぁまぁと抑えている。
「ワイは戦わへんよ。さっきもいったやろ? フィリアと付き合いだけやって」
「...そんなの信じられるかよ」
「信じてくれんのか、兄弟。せやろうな、そっち側からしたら敵やもんな。仕方ない」
「それなら」とボニフェースは言葉を続ける。
「十二支の情報を教えるで手を打ったらどうや、兄弟」
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ルカが居なくなった後アセラは、フィリアの自室へとノックをし入っていた。
「フィリア様、なぜルカ様にお会いしたんでしょうか?」
椅子に座り読書をしていた手を止めて、本を膝の上に置いた。
「ウルカが...来るって言ってた..から」
「それだけが理由でしょうか?」
眠気眼だった目が鋭くなり、緊張感がアセラを襲った。
「何が...言いたいの...?」
声色が変わらないのに空気だけが変わり、冷や汗がアセラの額を伝った。それでも、言葉を捻り出す。
「ボニフェース様には何度目かでやっと顔を出したのにも関わらず、ルカ様に最初の一回で顔を合わせたのが疑問だったのです」
「別に...ただ..顔をちゃんと...見ておきたかった...だけ」
顔を伏せながらフィリアは答えるが、先程の寒気はもうなくなっている。若干顔が赤くなっているが気の所為だろうか。
「それよりも...お腹...すいた」
お腹をグーッと鳴らして、視線を下にする。
「わかりました。今ご用意します」
深々と頭を下げ、部屋を出る。
アセラの後ろ姿を見送ると、はぁとフィリアは溜息をついた。
「ウルカが...変な事..言う...から」
ウルカとの会話を思い出す。
ルカが来る前の日に、魔鏡という対話するために使用される道具を使ってウルカと話していた。
「フィリア、王都で会った以来ですわね。お元気でしたか?」
「元気....だけど..どうしたの...?」
鏡写っているウルカは、長い金髪をクシで梳きながら話しているため、風呂上がりなことがわかった。
「いつかわかんないけど、ルカ様がそちらにいらっしゃると思いますわ。契約についてで」
「契約....」
「えぇ。ルカ様のいう事は嘘はないですわ。信じても損は無いですわよ」
正直ウルカの言ってる事はわからない。だが、十二星座のまとめ役的な存在のウルカ言うのだから正しいのだろう。
「それに、フィリアも結婚できる歳になったのですから少し考えてみてわ」
「け..結婚...!?」
思わず顔が赤くなる。
フィリアは姫君になったと同時に結婚できる歳になったのだ。ウルカの言っている事はルカも結婚相手としてはいいんじゃないかと言っている。
ウルカとのこのような会話を思い出したせいでまた顔が赤くなる。頭を振って切り替える。
「何言って...んだか....」
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ボニフェースに連れられて軽く二時間は経った。
「十二支の事についてだと?」
「あぁ、そうや。兄弟」
信じられない、それが正直な気待ちだ。それでも、嘘を言っている様には見えない。
「ワイが言う情報は全部事実や。そして、二つだけや」
軽く息を飲んだ。
無言は肯定としてとったのだろう、話を続けた。
「一つは、十二支のリーダーである子のフレイヤ様についてだ。二つは十二支の強さについてや」
「それを俺に言って何が目的だ」
「ワイの恋を叶えさせてくれや」
ルカは口を開けてポカーンとしている。それもその筈、予想外の答えだったからだ。
「お前の恋?」
「そうや。さっきも言ったがワイはフィリアが好きや。特に女が好きなんやけど、あいつは別格や」
確かにフィリアは可愛かった。
幼い感じがまた可愛さの一つであろう。
「嫌だ」
そう一言ルカが答えると、ボニフェースはにやりと笑った。
「言うと思ったぜ、兄弟」
ボニフェースは十二支の中では話しやすい部類に入るのだろう。今は敵対していないとはいえ、警戒は怠らないようにしようと決めた。
「兄弟と会ったのは何かの縁っちゅうことかもしれへんしな、教えちゃるわ」
頭を軽くポリポリと掻き、再び店員に飲み物を注文する。
「ワイ達のリーダーはフレイヤっちゅうめっちゃ強いヤツや。兄弟の想像してる十倍以上は強いな。魔法は殆どのモノも使えるし、武術も全て覚えてるから、まぁ無敵っていうやつやな」
無敵。
その言葉は昔というほど昔ではないがルカも無敵だった。ある時、妖精のユウリが居なくなった瞬間、自分が何も出来ない、無敵ではなくなった。
「二つ目は、そうやなー。ワイは十二支の中では四番目っていう強さやな。下から順に戌、午、酉、卯、寅、丑、未、亥、申、辰、巳、子やな」
十二支の中でも強さはある。この前戦った辰のウィルフレッドも三番目に位置している。
魚座の国で会った、妖艶な美女の巳の刺繍の入ったアリアステリアも上位に位置していたため、意外だった。
「まぁ、こんなもんでええやろ」
「こんな事言ってフレイヤっていうやつに消されないのか?」
「何言ってんだ、兄弟。消されるに決まってんやろ。でも、その方が恋は燃えると思わへんか?」
ボニフェースの堂々っぷりに思わず笑みがこぼれる。
「お前、言っていいのか悪いが大変なんやな」
「ホンマやよ。あ、兄弟は手伝ってくれへんでええよ。ワイが一人でやってこその恋だろ?」
「...そういうもんか」
タダで情報をくれ、尚且つ敵意がない。何か裏があると思っていていても裏があるようにも見えない。とても、不思議なやつに出会った。
「なぁ、兄弟」
「なんだ」
明るく上機嫌だった口調が、少しトーンが落ち真面目な顔つきになった。席を立ち、お代を机の上に置いた。
「気ぃつけろよ」
その一言だけを残すとボニフェースは街の中へと消えていった。
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宿屋で一室を借りて、夜を明かした。一日ぶりの睡眠のため直ぐに眠りに落ち、スッキリとした気分で一日が始まった。
「...王宮行かないとな」
欠伸を噛み殺しながら宿屋を出る。街はいつも通りに穏やかで平和である。王宮へと早足で向かう。
すると、アセラが頭を抱えて溜息をついている姿が見えた。
「どうかしたのか?」
ルカの姿を見ると柔らかい表情になり口を開く。
「また、手紙がきたんですよ」
そう言って手に掴まれている手紙をヒラヒラと振っている。昨日のボニフェースからの話で大体の察しがついた。ボニフェースからフィリアへの手紙だろう。所謂、ラブレターというやつだ。
「...随分と可愛い事するな」
ボソッとルカは呟いた。
アセラは首を傾げキョトンとしている。
「いや、こっちの話だ」
身体や性格に似合わず、随分と可愛い事で愛を伝えにいったため少し驚いただけなのだから。
「その手紙どうするんだ?」
「一応、フィリア様に渡しますが、読まないと思いますよ」
苦笑い気味にアセラは答えた。
ルカが見るにフィリアは余り恋愛に興味が無いように思えた。実際は興味深々なのだが。
アセラと共にフィリアの自室の前へと移動する。アセラがノックをするもフィリアは出てこない。
だが、声だけが扉の奥から聞こえた。
「お腹....すいた....」
その声を聞いたアセラは軽く礼をして「任せました」と言って去っていった。
一人残されたルカはアセラと同じく扉をノックする。
「な...に...」
キィーッっと扉が開く。
アセラがノックをした時とは開かなかったのにもかかわらず、簡単に開いた。
「俺がやると出てくるんだな」
ルカがそう言うとフィリアは静かに扉を閉めようとしたが、それを手で抑える。
「ちょっと待てって」
女性なのにと言ったら失礼かもしれないが尋常じゃない力で扉を閉めようとしている。
「な...にさ」
「聞きたいことがあるんだって」
段々と力が抜け閉めようとした手を離す。
「誰かと付き合いたいって思わないか?」
「......はい...?」
ウルカの一件もありウルカが何か言ったんではと思ったがルカの様子を見ると何も無いように思える。段々と顔が赤くなっていく。
「付き合...う...とか....わかんない」
いつも籠もっている声が一段と籠もっている。そのためか上手く声が聞こえない。
「そうか。悪かった変なこと聞いて」
二人の会話が終わるのを待っていたのかアセラが入ってきた。アセラが少しニヤニヤしているため、やはり聞かれていた事がわかる。
少し気恥しい。
「食事をお持ちしました」
テーブルの上には二つの皿に食事が乗ってあった。持ってこられた食事はパンだったがとても美味しそうな匂いが鼻をくすぐった。
「ルカ様もよかったらどうぞ」
差し出されたスープをまず口に運んだ。まろやかな味が口いっぱいに広がり幸せな気分になった。
「これ...食べたら...帰って..」
「あぁ、わかったよ」
2人が食事をしているとアセラがフィリアに手紙を差し出した。
「また...コレ...?」
受け取った手紙を机の上に置いた。見ると机の端には山のように手紙が積んである。
「見ないのか?」
「一回見た...よ..でも...好き...好き...って書いて...たから」
フィリアがボニフェースの手紙の内容を掻い摘んで教えてくれた。
「最初見た時からワイは貴方のことが好きです。ワイは女好きで有名やけど、ここまで一人の女を好きなった事なんてないんや。だから、最初から恋人なんて言わへん。友達からでええ。たまにはその可愛い顔見してくれや。最後に、好きや」
フィリアは話終わると食事を再開する。フィリアはグイグイ来られるのがあまり好きではないらしい。よって、ボニフェースの行いは逆効果なのだが、これだと報われない。
「そうなのか、また会ったらどうだ?」
「なん...で」
「なんとなくかな」
ボニフェースと会って会話したとは言えないため、何処と無く曖昧に答える。
「どうし...ても...?」
「まぁ嫌ならいいが」
「ルカが...そう言うな...ら..会う」
アセラは会話を聞き目を見開いて驚いた。なぜなら、フィリアは人の名前を覚えるのが苦手だ。ある程度の期間を置かなければ覚えない。
人の言う事を聞くのも苦手なのでこれもある程度の関係でなければ、言うことを聞かすのは無理だろう。
もしかしたら、ルカに特別な想いがあるのだろうが決して言葉にしては行けないと思い言葉を飲み込んだ。
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「さぁてっと、今日もフィリアの所行かへんとな」
うーんと体を伸ばし、街の中を歩くボニフェース。ゆっくりと歩きフィリアのいる王宮へと向かおうとしていると。
「おい、何をしている」
白いマントでフードを被っている男性に話しかけられる。振り返らなくても声だけで誰かわかる。
「フレイヤ様!?」
十二支のリーダーであり子のフレイヤがボニフェースの後ろに立っている。一気に緊張感が身体が感じた。
「なんでや、こんな所におるんや」
フレイヤに聞こえるか聞こえないかの声でボソッと呟くが、フレイヤは聞こえているだろう。
「もう一度聞くぞ、何をしている」
寒気が背中を走った。
恐怖を感じるのはフレイヤただ一人にだけだ。
『転移』
フレイヤは転移魔法を使用し、ボニフェースと一緒に荒地へと移動する。
「ここなら邪魔は入らないだろう」
「....はい」
フードを外すと透き通った白銀の髪をし、整った顔がそこにはあった。白い肌は陽の光に当たると一層白さが際立っている。
「姫君を、ウールネット=フィリアを殺そうとしています」
「ーー嘘は無いな?」
「はい」
二人は沈黙し、静寂が居心地が悪かった。そして、血飛沫が沈黙を破った。
「う、うぐぁぁぁぁぁぁぁーーー!!」
何が起こったかわからなかった。
見ると右肩から下が消し飛ばされた。切断された所からヒタヒタと血が垂れている。
「私は嘘は嫌いだ」
「く、うぁぁぁぁぁ。すいませんでした」
必死に痛みを抑えようとしているが、抑えれるわけがない。
「本当の事を言えよ」
「...フィリアを殺さず、妻にしようとしました」
激しい痛みが再びボニフェースを襲った。もう片方の腕が消し飛ばされたのだった。
「私は殺せと命令したのにも関わらずか。それなのに、お前はたかが恋愛で命令無視をした。その罪は重いぞ。言ってる意味がわかるか、何か言いたい事があるなら発言を認めよう」
「な、なんでそんなに姫君を殺さなアカンのや!! 帝国に命令されたからか? 違うやろ、何かの因縁があるからやろ!!」
押し殺されていた感情をフレイヤにぶつける。
「ーー言いたい事は終わったか?」
何もフレイヤには届いていない。
フレイヤはそういうやつだ。そんなことはわかっている。でも、とても悔しい。
『火炎放射』
フレイヤの周りを炎が包み込み、舞い上がる。その炎を腕の一振りでかき消してしまう。
「そんな程度なのか」
差はあると自分で自負していたが、まさかここまでとは。自分の力の無さに失望する。
『火炎龍』
炎の龍が床から出てくるが、一瞬にして消滅する。
「もういいだろ」
『空斬』
風を切って足に向かって斬撃が飛んできた。炎で防ぐもそれをも貫通しボニフェースの足を切り落とす。これで、ボニフェースは四肢を切断された状態だ。
「何か言い残す事は」
フンと鼻を鳴らしてニヤリと笑う。
「...くたばれや、悪魔」
『天殴』
フレイヤの拳がメキメキとボニフェースの頭を砕いた。
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フィリアとの食事をした次の日。
再びフィリアの元へと訪れていた。フィリアの自室に入ると、急いでアセラが部屋に入ってきた。
「フィリア様、ルカ様」
「どうした...の...?」
額の汗を拭うと少し息を整えてから口を開く。
「ーー荒地に謎の死体が」
フィリアと共に荒地へと向かう。なかなか外に出ないフィリアをアセラが半場強引に連れ出したのだ。
荒地へと着くと、とても無惨な死体が一つ四肢を切断され転がっていた。顔は潰され誰か分からないが、服装でルカとフィリアは察した。
「...ボニフェースか」
こんな事をやるのは一人しかいない。ボニフェースの言っていたフレイヤという人物であろう。
フィリアはボニフェースの元へと近づくとボロボロと涙を流し、深々と頭を下げた。
「ごめん...なさ...い」
好きだという気持ちを知っていながら見て見ぬ振りをしたのが心残りなのだろうか。
「そして...あり....がとう」
泣いている姿をアセラとルカはただ黙って見ている。
フレイヤに対する怒りが激しく燃えている。会ったときはちゃんと決着をつけないといけない。
ボニフェースの死体は王宮へと持ち帰り、埋葬した。
フィリアの自室へと戻ると、重苦しい空気が散漫している。アセラが部屋に入ってくると手紙を渡される。
フィリアは受け取り中を見る。
「よぉ。元気にしってか? ワイはいつも元気や。これで手紙を送るのは最後になるかもしれへん。それでも、気にせんでくれ。ワイはお前を好きになることをやめることにしたんや。多分、近くに兄弟が居るやろ、ソイツはワイが会った中で面白くて良い奴やよ。幸せになってくれや」
手紙を読み終わると、再びボロボロ涙が出た。何も無い私を好きになってくれてありがとうと小さく呟いた。
「ねぇ...ルカ...結婚って..興味...ない...?」
「色々と終わってからだ、そういうのは」
「う...ん...わか...った」
涙を拭って、ニッコリと微笑む。
ボニフェースのお陰で何かを確信したようだった。
ルカは次の国にフレイヤがいるかもしれないと思い、次の国へ向かうのを決意する。
「次...どこ...行く...の..?」
「ここから近い蠍座かな」
「絶対...もう..一回...来てね」
「あぁ」と答えて、次の国『蠍座の国』へ行く準備を整えることにしたのだった。
蠍座の国は未定です。




