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第2章「フールズ・ゴールド」⑦

「ちょっとキム、どういうこと!? 今何処に居るの――ファック、ちゃんと答えてッ、くそッ――」

 グロリアは受話器の前で怒号する――が。

 ブツリという音が、後方の二人にも聞こえた。

「……電話……切れちゃった」

 グロリアは静かに、言った。

 事務所内には夕陽が帯状に差し込み、陽のあたる場所を生暖かい橙色で包み込み、反対に影となっている部分をチョコレート色に薄暗く染め上げる。

「どうしよう、さっさと二人を追わないと――」

 ――大変なことになる。

 グロリアがそう言おうとした次の瞬間。


 ……一瞬、窓ガラスの向こう側が不自然なまでに明るい閃光を放った。夕暮れさえ超えるほど。

 続いて、猛烈な風が硝子の外側を叩いた。

 それから――轟音。何重にも重なって、一瞬ずつズレたタイミングで聞こえてくる。

「何――」

 三人は窓辺に駆け寄った。

 それから見た――その状況を。


 ダウンタウンのあらゆる場所で爆発が起き、サイレンの音が響き渡っている。

 ――かつての、『ハルク事件』の時のように。



 ダウンタウンで青果店を営むフリーデマン氏は、突如として自我を失い、店内を無茶苦茶に破壊し始めた。

 ……彼は自身の体の変化から来る衝動を、仕事に打ち込むことでなんとか押さえ込みながら十年間生活し続けていた。しかしそれも今は、鎖が引きちぎられたようになくなっていた。

 彼は体中から刃物をむき出しにしながら、唸り声を挙げて店内を破壊し尽くす。これまで築き上げてきたすべてがスクラップになっていく。

 白目を剥き、咆哮する――彼の妻はそんな愛する夫の様子をただ見ていることしか出来ない。あの様子では、止めに行けばたちまち膾切りにされてしまう。

 呆然――彼女は立ち尽くす。

 しかし、間もなく。

「キャアアアアア!!!!!!」「なんなんだこいつら、」「知らねぇよ、急に暴走しはじめて――」

 店の外で、何十にも重なった悲鳴。それから、明らかに建物や道を破壊していると思われる轟音。戸外が、揺れているようにも思えた。彼女は――それを見た。

「VOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!」

 アウトレイスたちが――暴走していた。

 そうとしか表現できなかった。ある者はモロウとしてその身体を完全に獣と化して走り回り、建物の外壁を荒らし回っていた。ある者は全身を兵器に変えて銃弾を乱れ撃ちし。ある者は野放図にフェアリルのちからを周囲へ拡散させ、逃げ惑う人々の力を奪っていく。混乱と狂騒――それはこの街では、あまりにもいつも通り。

 だが、事情が今回は違う――到るところで爆発が起き、車がスクラップになり、ビルからもうもうと煙が立ち込める。その中を人々が逃げ惑い、正気を失った『元・人間』たちが駆け回る。

 恐怖に駆られた人々でさえ、その違和に気付くことは出来た。いつもであれば、そう――いつものこの街の騒動であれば。こんな暴れ方はしない。

 こんな、誰かに操られているかのような。

「ヴォアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」

 そして――また別の場所で爆発が起き。


 ――フリーデマン夫人の振り返った先に、白目を剥いて刃を向ける夫の姿がある。



「何よこれ、こんなの――」

「……――ディプス……」

 フェイが、窓の外の光景を見ながら、静かにその名を呼んだ。

 そこには、すべてを納得させる響きがあった。

 ミランダは頬に汗を垂らし、グロリアは窓の外に悪態をついた。



「……」

 まずはじめに、頭に鈍痛を感じる――すぐさま茫洋とした意識の中で思い出すのは、あの酒の席の騒動だ。あぁ――あれがまだ続いているのか。

 しかし、すぐに、そうではないと思い至る。何事かの光景が頭の中に弾けて――自分がそこへ手を伸ばそうとした場面が見えたような気がして。


 ……何か、光を感じた。

「……っ」

 間もなく――シャーリーは、目を開けた。


「……目が覚めた、ようね」

 低い女の声が聞こえる。

 全身の痺れが、その声によってゆっくりと雪解けするような感覚。

 緩慢に上体を起こしていく。ひどく重い。そして、腹部にも痛みがあった。

 間もなく――視界の端の光がなんであったか気付く。

 きしんだ音を立てながら左右に揺れ動く電球だ。それが、灰色の薄暗い空間の中を照らしていたのだ。

 視界が、クリアになっていく。

 喉の奥から声を出そうとするが――すぐにはかなわない。

 そのかわり、自分の置かれている情景が顕になっていく。

 見えるのは――無機質なトタンの壁。それから間もなく理解する。電球の揺れ続けている空間。やけに広く――そして、少し蒸し暑い。

 ここは、どこかの空き倉庫かなにかだ。

 そして、声の主は――。

「……まさか、あなたが現れるなんてね」

 ――エスタの、母親だ。

「……――ッ!!!」

 その時シャーリーは、あの一瞬の邂逅における『何故』を思い出した。衝動が駆け巡り、やや自分から離れた場所で腕を組んでいる彼女に食って掛かろうとした。

 だが――。

 腕が、足が。動かない。締め付けられるような痛み。前に進めない。

「動かないほうが良いわよ」

 その声とともに、シャーリーは自分の体を見た。


 そこでようやく気付く。自分の体が、椅子に縛り付けられていることに。何か極細の、糸のようなものに。

「ここはどこッ――……一体、何が……ッ」

 枯れた喉で、シャーリーは前を向いて叫んだ。椅子がガタガタと揺れて、身体への食い込みが激しくなる――痛みに、呻き声を上げる。

「アー。それ以上動かないほうがいい言いましたですね? 聞いたほうがいいでございますよ。モニカさんの糸強い。クソ力で引っ張り込めば、あなたチリソーセージのザマでございますですねー」

 ――別の女の声が、聞こえた。奇妙な声音だ。

「……シュヴァンクマイエル」

 見ると――エスタの母親の奥に、別の女がいる。移り変わる電球の光とともに、その姿が見え隠れする。

 ……乱雑に積み上げられた木箱の上に、一人の女が足を組んで座っている。

 奇妙な風体。足首まで覆う修道服。そのフードから僅かに見える、灰色の髪。眠たげな女の顔……ガムを噛んでいる。

 その指先から伸びるものが……細い光になって、シャーリーの身体に伸びている。それは彼女が身体を動かすたび、僅かに揺れる。

 繋がっている――というよりは。

 糸は、女の指先から出ていた。

「テロド……!?」

「正の解でございますですよー。でもあなたの現状、関係ない。面倒、黙ってるしてもらえるとモニカさんは嬉しいでございますねー。ケツ穴の痛み(めんどくさい)。この言葉、合ってますですかー?」

 間延びした女の声。しかし、シャーリーの返答を待つことなく、すぐに顔をそむける。

「くッ……」

「……」

 エスタの母は、無表情で前に佇んでいる。光が移動して、薄暗く広い空間を照らす。シャーリーは虚しく身体を揺すり……その動作の中で、冷静さを取り戻そうとしていた。知るべきことが多すぎて、整理すべきことも多すぎる……。


「目を覚ましたか、女」

 遠くから声が響いて、混雑した思考は中断する。間もなく足音が聞こえてくる……明滅する光の中で、姿を現す。

 ――ツイードのジャケットにベレー帽を被り、奇妙に縁の分厚い眼鏡をかけた黒人の男。

「悪いが歓迎の用意は出来ちゃいない。なんせここは……」

 ――男はそう言って近づいてくる……が。


 次の瞬間、転がっている木箱に、盛大に足首をぶつけた。

 彼はつんのめり転倒しそうになり、頓狂な悲鳴を上げながらよろめく。シャーリーは思わず口が開いた。

「ッ――っ」

 男は足を引きずりながら苦悶の顔をする。

 モニカ、と名乗った女は溜息を付きながらガムを弾けさせ、彼を避けるようにして暗闇に去っていく。

 男はそれから「くそッ!!!!」と叫び、木箱を蹴りつけた。転がる乾いた音。

 そして――ややあって。

 男は、少しだけ跳ねながら正面を向き、大きなため息を付いた。

 その表情は――不自然なまでに、固い笑顔。

 ……先程までの痛みなどなかったと、改めて宣言するかのような。

「――なんせここは……ゲホッ。俺の、アジトだからな」

「……――」

 シャーリーは口が開いたまま、男と向き合った。

 彼の笑顔は時間が止まったように貼り付いたままだ。

 だから思わず、言ってしまった。

「あの……大丈夫ですか」

「……余計なお世話だ」

 笑顔がぎこちなく崩れる。

 シャーリーは口をつぐむ。

 ……だが、数秒後。

 彼女は思い出したかのように身体を揺さぶった。そして、男に向けて叫んだ。

「ここはどこだっ、ボクを何故ここへ……――」

「まぁ落ち着けや」

 男はシャーリーに歩み寄る。

「ちょっと、あんた……」

 その歩みを止めようと、エスタの母が駆け寄った。

「どいてろ、グレース」

 肩におかれた手を、男は煩わしそうにはねのける。彼女はよろめく。

 シャーリーはまた前のめりになり、反感を感じる。

 男はパイプ椅子をどこかから持ってきて、シャーリーの正面につける。そして前後を逆さまにして座り、彼女に向き合った。その手には……銃が握られている。デザートイーグル。黄金色の。

 ――……その冷たい銃口の色合いが、こちらを向いている。

 シャーリーは背中に悪寒を感じる。そして変わらず、片腕に力は戻らない。今自分は――ただの人間と変わらない。命が、この目の前の男に……握られているのだ。

「良い銃だろ。俺という男にふさわしい……重みと威力だ」

「……ッ」

「まぁそうビビるな。会話ってのは楽しむもんだ。そんな顔でするもんじゃねぇぜ。俺の名はオデール。よろしくな」

 シャーリーは返事をしない。オデールと名乗った男は芝居がかった大袈裟な動きで肩をすくめる。


 ……この男に気を許してはいけない。シャーリーの中の何かがそう警告を発する。迂闊でまぬけであっても――善ではない。振る舞いを見ていれば、そのような判断が出来た。

「――さて。俺の生み出した成果の確認といくか」

 彼は、暗闇の中から大きなアナログテレビを引きずってきた。そして動けないシャーリーの目の前に置く。

 それから、電源をつけた。

 間もなく――その惨状が詳らかにされる。


『こちら、中継はダニエル・ワナメイカー!! ダニエル・ワナメイカーです!! 只今街中は大変な騒ぎに……クソくらえ、マイク奪うなッ――“おい警察何やってる、とっとと助けに来い、ダウンタウンは地獄だ!” ……失せろ、俺の仕事を奪うなッ――……ハーッ、ハーッ……とにかく、見ての通りのありさまです!! 一体何がどうなったのでしょう、これではまるで先日のハルク騒ぎと何も変わらない!!!!』

 『いつもの彼』がヒステリックに中継する通りの状況が、砂嵐の隙間から見える画面の中で展開されている。

 ダウンタウンの棕櫚とビルの隙間、ひび割れたストリートを逃げ惑う人々――そして、彼らに襲いかかる……アウトレイス達。彼らは皆、正気をなくしている。白目を剥き、咆哮しながら……おのが凶悪性をむき出しにして襲いかかる。モロウは動物としての姿を顕にし、テロドは自身の無機物を最大稼働させる……その中で、看板はへし折れ、車は炎上し、サイレンはヒステリックに鳴り響く。その状況が、遠くへ、遠くへ、矢継ぎ早に広がっていく。


「こんなことが……」

 シャーリーの中で、あの時の――ハルク騒ぎの状況が蘇る。

 あのときも、はじめは何も出来なかった。今なら、出来るはずだった。

 はずだった――……。

 もう、何も出来ない。自分は今ここに縛られている。力も使えない。使うための精神が、湧き上がってこない。

「ッははははは、たまらねぇな、俺が創り出した光景なんだぜ!! こいつがっ!!!!」

 オデールは下品な色に輝く指輪がいくつも嵌められた手を叩いて、まるでシンバルチンパンジーのようにはしゃいだ。そこには一切の良心などありもせず。

 ……シャーリーは、心の底から胸が悪くなった。

「あんたは――……っ……ふざけるな、どうしてこんなことを、一体何があったッ……!!!!」

 目の前の男に食らいつこうとして、身を乗り出す――だが動けない。糸が身体に食い込んで、奥歯の向こう側から痛みが漏れる。

「おっと――忘れるなよ」

 それから。

 額に冷たい感覚。椅子が揺れて、元の場所に戻る。

 その感触により、怒りが強制的に冷まされる。

「――お前の生殺与奪は、俺が握ってるんだ」

 オデールは――あらためて、シャーリーに銃をつきつけた。

 ……彼は再び目の前の椅子に座る。

 それから……口の端を曲げて、笑顔を作る。

 だが、目の奥は笑っていない――“生意気なガキだ”と告げている。

 笑顔を取り繕うことさえ、下手くそだった。

 彼は、表面上穏やかに、静かに聞いてきた。

「さて――何か聞きたいことは? お嬢さん」

 視界の端に……戸惑いと恐怖をわずかに滲ませながら佇んでいるエスタの母……グレースが映っている。だがそれよりも優先して聞くべきことがあった。

「何の目的があって、ボクを……いや、あの女の子を攫おうとしたんだ」

 その質問を受けて――オデールは目を丸くし、そして……肩を揺すって笑った。喉に引っかかる、高音の笑い。決して愉快なものでは、ない。

「……なら、答えてやるよ。その質問に」

 その言葉尻には隠しきれない喜びのようなものが滲んでいる。まるで褒められた子供のような。

「俺の計画はな――…………」



 フリーデマン婦人は思わず顔の前面を両腕で覆った。間もなく迫りくる斬撃は、確実に自分に到達し――そして肉体を切り刻むものと思われた。

 しかし。

 ……銃撃音。

 前を見ると――夫が、フリーデマン氏の両腕が……無数の小さな穴で穿たれていた。そこから煙が立ち上り、彼はよろめき……そして、後方の陳列棚へと転倒する。

 沢山の野菜も同様に穿たれていた。彼はその中へと倒れ込んだ。わずかにホコリが舞い、夫人は両腕を解いた……そして後方を見る。

「危なかった……――マダム、お怪我は?」

 そこには……両腕を捧げるように前方に突き出した、浅黒い肌の青年が立っていた。彼の両の指先は鈍色に光り、その先から筋のように煙が立ち込める。

 夫人は彼を見て――後ろを見た。両腕の刃物を失い、うめいている夫を。そしてその目は……濁ってはいるものの、正気を取り戻しているように見えた。

「……」

 彼女はその場にふらふらと倒れ込む。そして、ただ目の前の男を見つめる。

「無事なようだ、良かった……」

 浅黒い肌の青年――リカルドはほっと息をゆるめた。

「隊長ォ!!!! こっちの地区に人手が足りねぇ!! 応援頼む!!!!」

 そこへ――けたまましい粗雑な大声。店の入り口に向かって投げかけられる。そして間もなく、大柄の、銃を持ったならず者然とした男たちが入り込んでくる。リカルドは彼らを見ると夫人にウインクをこぼし、背を向ける。それから店外へ――街の情景へ。


「どうなってんだ、この前のハルク騒ぎは終わったんじゃねぇのか!?」

「知るかよ、なんだこれ、逃げろ逃げろ!!!!」

 ――ああ確かに、何も知らぬ人間が見れば、そのありさまはパレードに相違ない。

 ……極彩色のフリークスたちが、正気を失いながらダウンタウンのストリートを破壊しつつ歩き回っていた。

 ある者は全身から怪しげな香気を発揮しながら、道行く人々に抱擁する……そして何かしらのエネルギーを吸い取って、物言わぬ木偶にしていく。あるいは、悲鳴を上げていく人々に向けて、巨躯の猪となった存在が向かい合って突進していき……跳ね飛ばしていく。血が地面にほとばしる。そのまま彼はビルディングに衝突し、黒い煙が立ち込める。スプリンクラーがどこかで作動して水しぶきが上がる。あるいは、車が爆発炎上する――身体機能を強化したものが、それを殴りつけることで。

 その合間を、大勢の人間が逃げていく。白目を剥き、正気を失った者達から逃げていく。到るところに破壊が刻まれていく――化け物たちによって。

 それはかつて、この街が勃興した時に見られた光景のはずだった。今はもう、滅多にありえない光景のはずだった。

「……――」

 死体が転がっていた。それは逃げ惑う人々に、知らず知らずのうちに踏み荒らされ、土塊と相違ない様相を呈していた。

 到るところで炎上が起きて、ビルの向こう側、東であっても西であっても、サイレンが鳴り響いていた――そして、色とりどりの悲鳴。破壊、破壊、破壊――。

「……隊長、こりゃ」

「ああ、どう考えても。あの稀代の色男、ディプスの仕業に相違ない」

「だったらどうします」

「やることは一つだ――何時も通り水際で、食い止めるぞ」

 リカルドはうろたえる部下たちの背中を叩いた。

 次の瞬間より――武装したならず者の精鋭たちは――咆哮を上げながら、化物たちに向かって突撃していった。そして、強化型ライフルを撃ち始めて、戦闘が開始される。到るところで。

 ――ストリートの、到るところで。

 ……きっと今頃ロットン坊やもそうしていることだろう。この状況において出来ることは限られている。

「……キーラ」

 リカルドも、そうすべきだった。

 彼の横を、蛇のような姿をした化物が通り過ぎていき、その手前でアスファルトが噴き上がり、破壊された。

 もう間もなく、彼も戦端に加わることとなる。

 だがその前に彼は――今、彼女のことを思った。

「あなたはどうする……『あの』状況を……どう切り抜ける」

 つまり――我らがキーラ・アストンは……全く違うシチュエーションに居るということを意味している。



「……」

 キーラの服が、風にたなびいた。

 その向こう側に、炎と煙にまみれたダウンタウンが見える。

 彼女は今LAPD本部の屋上に居て、一枚の紙を握りしめていた。

 それは――ほんの一時間ほど前、SCCに対して直接送られてきたものだった。


 内容は、ひどく幼稚で、シンプルで――それでいて、キーラの精神を激高させるにはあまりにも適していた。



 キーラ・アストン。覚えているか? 俺だ、オデール・ジャクソンだ。


 今回愛しい愛しいお前に要求することはひとつ。

 添付した地図に書いてある俺のアジトに、一人で来い。援軍は無しだ。そうすれば人質は無事だ――もし、つまらん小細工を考えているようなら。

 街の連中は更に荒れ狂うし――娘の命だってただじゃ済まない。

 よーく考えることだ、キーラ。

 ――俺には……女神様がついてる。

 あの、魔人ディプスがな。

 だから。考えろ、考えろ、考えろ。

 そして、実行しろ。

 お前にとって大事なものがなんであるか……分かるよな?


                                       』


「……ッ、あの馬鹿野郎……やってくれるじゃねぇか……!!」

 キーラは吐き捨てて、その『果たし状』をぎゅっと握りつぶした。


 彼女の行動は――当然、決まりきっている。


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