表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/13

5.見合い話

本日二話同時更新です。

「とにかく、責任取ってください」

「……なんでそうなる」


 一階の食事処で朝飯を食いながら、俺は頭を抱えていた。

 雛原は八時にちゃんと起こしてくれたし、襲われたような形跡もない。あのまま諦めたんだろうと思っていたんだが。


「……先輩の責任なんですからっ」


 顔を真っ赤にしながら雛原はだし巻き卵にぱくつく。

 俺は何もしてないはずなんだが。なんで雛原の見合いに俺がついてって親を説得せにゃならんのだ。

 というか、娘が男連れて現れた時点で婿確定じゃねえの。そんな罠に自らかかりに行くバカがいるかよ。


「俺がお前を抱いたからってそれでぶち壊せる見合いでもねえだろ」

「っ……だって、それで諦めようと……諦められると、思ってたんですからっ……くろがね先輩のこと」

「馬鹿」

「……傷心の乙女にひどいです」


 ぐすぐす泣き始めた雛原に、俺は額に手をやった。

 これはまずい。思ったよりこじらせてやがる。

 ……なんで俺なんだ? 大して接点はなかったはずだ。婚約者がいるってのは聞いてたし、必要以上の接触はしないようにしてた。

 前の席に座ってるって言っても、モニターが邪魔で顔が見えるわけじゃない。仕事で直接何か指導したこともない。

 なのに、どうして俺なんだ?


「と、とにかくっ、明日ついてきてください」


 このままだといつまでもこいつに付きまとわれかねない。それだけは御免だ。

 妹の寮訪問してあの美人さんと仲良くなって口説き落として……。


「お前の田舎ってどこだったっけ」


 雛原は山陰地方のとある村の名前を口にした。


「わかった。……まあ、特急で行けるか。今日のうちに移動するのはアリか?」

「えっ……ほんとに来てくれるんですか……?」

「……来いと言ったのはお前だろ。但し、見合い自体はきちんと出ろ。俺は今日のうちに移動する。明日の見合いはどこでするんだ?」

「えっと、E駅の駅前のホテルで……」


 スマートフォンで駅前を検索する。参院ではそれなりに大きな町らしく、いくつかビジネスホテルがある。


「んじゃ、明日お前が乗る列車の便と時間、教えといてくれ。で、見合いが終わったら俺に電話しろ」

「あの……先輩」

「ん?」


 顔を上げると、雛原は茶碗と橋をテーブルに置いて俺の方を目を丸くして見つめていた。


「なんで……わたしの頼み、聞いてくれるんですか……?」


 俺はしばらく雛原の顔を眺めて、ため息をついた。


「お前が後輩だから、かな」


 その答えはお気に召さなかったようだ。唇を尖らせて食事を再開する雛原に、俺はもう一度ため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ