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走り出す  作者: 美濃部
5/7

再び決意

翌朝。いい寝起きだった。昨日の疲れが飛んでいった気がする。こんな快眠は久しぶりだった。栄養ドリンク5本分の体力の回復。約束の時間に、金をカバンに入れて外に出た。すぐにユウヤはやってきた。

「おまたせ、おはようコウタ」

「おはよう」

隣町は約30キロ離れているが、立派な街である。遊びに行くというよりは、サイクリングをする、と言った方がふさわしい。二人は時々休憩を挟みながら、2時間かけて隣町に行った。

そびえ立つビルディング、足元はスパンディング。絶えることのない人と自動車。ジャングルのように並ぶ建物、中にいるのは猿でなく人間。うごめく街は活気に溢れ、流れがとまることはない。

僕とユウヤは本屋を目指した。自転車を停めて飲み物を飲んで、本屋に入る。とてつもない広さ。どこを向いても本がズラリと並んでいる。2匹の子羊は本の神に導かれ、迷宮に迷い込んだ。

本屋に来たのはコウタの為だけではない。ユウヤは美術部の作品のため、着想のヒントを得ようとしていた。

芸術関連の本も山ほどあり、いちいち見て回ることはできない。これは?と思うとユウヤは手にとって調べ、1時間の内に納得のいく書籍を集めた。

コウタがこの本屋に来たのは2回目であった。昔、母親に連れてきてもらった。その時も大きいという印象を受けた。今は、多くの本を目の前にして、迷いたくなった。適当に小走りすると、場所が分からなくなった。本屋をさまよって、面白そうな本を見つけては立ち読みしていると、1時間が過ぎた。

ユウヤは腹が減ってきたので、コウタを呼びに行った。コウタは立ち読みが似合う。動物園にゾウがいるように、図書館にいるコウタは自然と空間に溶け込んでいた。本を読んでいるコウタは集中しているように見える。無視されるかも、と思いながら声をかけると、あっさりと気づいた。


近くにラーメン屋があった。ホントに近くて、歩いて1分もかからない。平日ということもあって、席は空いていた。

「お前さっき何読んでたの?」

「シェイクスピア」

「聞いたことあるわ、面白かった?」

「いや、難しくてよく分からなかった」

「じゃあ何で読んだんだよ」

「外国文学は、図書館でタクミが読んでたから敬遠してたんだ。僕が敬遠したのは外国文学ではなくタクミなんだけどね。だけど、タクミから遠ざかってるままじゃダメなんだ。変わらなくちゃ、って思ったんだ」

「それでシェイクスピアに挑戦か。立派じゃないか」

「本屋に行って分かったよ。本はおもしろいし、僕は本が好きだ。だからおもしろい小説を書きたいんだ」

昨日の自分を乗り越えて、明日へと進むために。

「来年は絶対大賞を取ってやる」

僕はそう決心した。


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