Ⅵ , 整理
そういうわけで,貴重な情報源を失った俺であるが,何か手掛かりになるかもしれない物を探すためにまずはこの部屋を整理することから始めた。そうすれば何か思い出すかもしれないし,別の情報を見つけることができるかもしれない。
最初に,散らかっている服をまとめて洗濯機に叩き込んだ。電源と洗剤を入れ,水を出す。妙に生活感のあることは忘れていなかったが,これは相当ありがたいことだった。
次にカバンを整理した。リュックサックが2つ,リュックサックのようだが肩に掛ける部分が一本しかないカバン,手提げカバン,腰につけるポシェットがそれぞれ1つであった。
リュックサックは大小あり,黄色の大きい物にはリュックサック用の合羽,軍手の他,一対の筒状でビニール製のものが入っていた。そのビニールについては何か思い出すことは出来なかった。どうやら物についての記憶も一部はなくなっているようだ。
小さい方のくすんだ青色をしたリュックサックには,財布,腕時計,たくさんのビニール袋が入っていた。財布には2780円とカード,レシートが入っていた。
レシートは3枚。1枚目の日付はちょうど1ヶ月前の4月9日だ。店の名前はスーパーーマンプクで,醤油,塩,砂糖,酢,味噌に加え三角コーナーや洗剤なども買っている。いっぺんにこれらを切らしてしまうことは滅多にないだろう。もしかしたら,俺はこの部屋につい最近越してきたのかもしれない。
2枚目は4月29日。コンビニエンスストアのもので,時間は午前0時ちょうどになっていた。こんな真夜中に何を買っていたかと言うと,クレープ,バナナ,カップラーメン,エナジードリンク10本だ。この日は一体何があった日なのだろう。
3枚目は日付の部分を含めほとんどが滲んで読めなくなっていた。たった一箇所だけ,〈ツオダ〉という文字だけが読むことができた。
肩に掛ける帯が一本だけの物にはポケットティッシュ以外には何も入っていなかった。
手提げのカバンにはファイルや本が入っていた。その他に黒い手帳が見つかり,まずはこの手帳について詳しく調べることにした。