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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魔王だけどなんか勇者召還された

作者: 冬導

お読みいただきありがとうございます。

 俺の名前はゼア、四四代目魔王だぜ。


 そして、元日本男子高校生の転生者だぜ。


 えっ! この人頭大丈夫かだって? いきなり何言ってんだだって?。


 分かるぜその気持ち。


 ある日学校の帰り道、道ばたに落ちていたエロ本を拾いひゃっほーいって浮かれてたら、道路を渡ってる最中トラックと強烈な顔面キスをして気がついたらこうなってたんだぜ。


 俺の初キスがまさかトラックだとは思わなかったぜ。


 悲しさのあまり思わず発狂したぜ。

 オギャアアアと叫びながらな!。

 何せ赤ん坊だったからな!。


 そして自分が魔王の子だと知り、色んな事があって現在。



 周りには「成功だ!」とか「やった!」とか「これで魔王も終わりだ」とか神官服みたいな服装の人達がどよめいている。


 えっ! いきなり話が飛びすぎて現状が分からないだって?。


 安心してくれ。俺も分からない。


 本当に何が起きた!。


 とりあえず落ち着け俺。

 まずはこうなる前の事を思い出せ。


 確か俺は魔王城(俺の家)から抜け出して街にナンパしに行って、「そこのおねーさーん! 俺と愛の楽園に旅立たないかー!」とかなんとか言って綺麗なお姉さんに向かってスーパーダッシュをかましている時だ。


 あの時の俺はウルトラテンションMAXだったから、今思えばなんとも恥ずかしい事を口走っていたな………。


 その時だ、突然足元から眩い光が発して、気づいたらここにいたんだ。


 あーなるほど、これはあれだ。


 拉致! じゃなくて、異世界召還という一種の誘拐だ!。


 馬鹿な! 何だと!。


 やっとあの妹を含めたヤンデレ野郎達から逃げ延びて、綺麗なお姉さん達とイチャイチャ出来るところだったのに。


 それに俺魔王だぜ。

 魔王召還してどうすんよ。


 せっかくの俺のイチャイチャフィーバー大計画が台無しだぜ。



 立ち上がって周りを見回すと俺と同じように何が起きたのか分からないというような表情でキョロキョロと周りを見回すやつらがいた。


 どうやら召還されたのは俺だけじゃないらしい。


 黒髪のイケメンに茶髪のイケメン、白髪のイケメン、更に金髪のイケメン………って。


 ちょっと待てやおい!。

 何だこのイケメン集団は!。

 つうか、男だけじゃねぇか………それにしてもイケメン多くないか? イケメン率半端ねぇー。



「ようこそいらっしゃいました。勇者様」



 突然の声に思わずびっくりしたぜと思いつつ俺は、声のした方向を見る。


 そこには白いローブを着た16か17ぐらいの金髪ロングストレートの少女が深々と頭を下げて、翠の瞳をこちらに向けていた。


 その時、俺の魔王的何かが感じた。


 この少女………めっちゃ可愛い!。


 あえて言おう、ただ者ではない!。


 俺のハートに即死級ストレートパンチが入ったような衝撃が生じる!。

 自分でも何言ってんのかわかんねー。



「勇者ってどういう事ですか?」



 黒髪イケメンが戸惑いながら言う。

 

 それに対して白いローブを着た少女は柔和な笑顔を浮かべると口を開く。



「あなた様がたは精霊様のご神託により選ばれた魔王を討つ勇者様です」

「おい、待て」



 そこへ、いかにも短気そうな金髪イケメンが敵意丸出しの表情で少女を睨む。


 俺もついでに睨む。主に胸の部分を。



「何だか知らねーが、早く家に帰せや」



 苛々しく隠そうともしない怒りの態度で金髪イケメンは怒鳴る。


 俺もその場でジャンプして下さいと叫びたくなるが、ここは空気を読んであえて何も言わない。


 金髪イケメンのその様子に少女は若干顔を附せて申し訳なさそうに言う。



「誠に申し上げにくいのですが、元の世界へ戻すことは現状では出来ません」



 その言葉を聞いて金髪イケメンのこめかみにピクリと血管が浮かび上がる。


 どうやらかなりお怒りの様子だ。


 今にも殴り掛かりそうな雰囲気に茶髪イケメンがすっと、間に入り止める。



「とりあえず落ち着いて下さい。ここで怒っていても仕方がありません。まずは詳しい説明を聞いてからにしませんか?」



 金髪イケメンを宥めるように温厚そうな微笑みを浮かべる。


 おお………すげぇ茶髪イケメンだ。


 初対面で魔王である俺でさえも、思わずこいつめっちゃ出来る子やと思ったぐらいだ。

 それに対して金髪イケメンは舌打ちをすると、渋々といった様子で引き下がる。


 すげえぞこの紳士的茶髪イケメン。


 どうやらこういったタイプの扱いを心得ている様だ。


 茶髪イケメンは少女に向き直ると先を促すように視線を向ける。


 俺もジャンプして下さいという視線を向けるが、ことごとくスルーされた。


 何故だ?。



「この世界―――アルマ・リーゼは今、魔王の侵略により危機に晒されています。魔王を打ちこの世界に平和をもたらす選ばれし勇者様があなた様がたです」



 少女が真剣な面立ちで説明する中、皆それぞれが驚愕や困惑といった表情を出す。


 しかし、先ほどから一言も喋らず静かに口を閉ざしている白髪イケメンだけは、どこか静観や傍観にも似た視線で事の成り行きを見ている。


 こいつ………纏っている雰囲気が明らかに他の奴らと違う。


 どこか歴戦の戦士みたいな気配を感じる。

 こいつはただ者ではない。色んな意味で。



「申し遅れました。私はこの国―――クリューメル王国第二王女、ミラ・ノア・クリューメルと申します」



 視線を少女―――ミラに戻し、俺は改めて目の保養のため、ミラをガン見する。


 だって仕方ないだろう。


 魔王城にはほとんど筋肉ムキムキの暑苦しい男しかいなかったんだから。


 しかも、女に話しかけただけで何故かヤンデレ妹に全力で阻まれるし。


 あの時の妹はマジ怖かった。



 たが、そもそも何で俺は勇者に選ばれたんだ?。魔王だぜ俺。


 確かに俺は魔王城にある絶対不落の最強最悪のバリケードが張られた女風呂という禁断の楽園に正面突破を試みた事のある最低の勇者(見事に失敗した)だが、それが関係しているのだろか。


 いや、きっと関係しているに違いない。


 何せ今まで誰もチャレンジした事がない戦いだったからな。

 間違いなく超高確率でこれが関係しているに違いない。

 絶対そうだ、関係しているに違いない。


 大事なことなので三回言わせてもらいました。



 だが、その後で女性陣にかなりきついお仕置き(体罰・調教・洗脳、最後のは妹にやられた)をくらったんだよな。

 特に洗脳は冗談抜きでマジでヤバかった。

 周りの連中が思わず止めに入るぐらいのヤバさだった。



「それでは玉座の間に案内します」



 おっと、過去の恐怖な思い出に浸っていたらどうやら話が進んでしまったようだ


 玉座の間とは、王様に会うのか。


 どんな人なんだろうな。


 俺は何だかわくわくしながらミラの案内の元、イケメン野郎達と共に玉座の間に向かうのだった。




◇ ◇ ◇




「ようこそ、若き勇者達よ」



 左右にずらりと様々な格好をした男女が並んでいる。

 正面のド派手な椅子に座っている二人がこの国の王と王妃だろう。


 まずは一言。


 俺の爺ちゃんそっくりだ!。


 いやー、マジびっくりしたわー。


 俺の爺ちゃんもあんな偉そうなオーラを撒き散らしていたから、一瞬爺ちゃん何してんだって思ったぜ。


 ここに来るまでの最中、ミラに色々と聞いていた俺と白髪イケメンを除いた黒髪茶髪金髪イケメン三人は説明された通りに膝まずく。


 ついでに白髪イケメンも。

 俺もそれを真似して膝まずく。


 俺も何か質問はしなかったのかだって?。


 ここに来る最中、めっちゃ美人なメイドさん達に夢中でそれどころじゃなかったぜ!。


 それにしても王の隣にいるあの女性は一体誰だ!。ミラにどことなく似ているような金髪青目の美人たが、もしかして姉だろうか?。

 なんというけしからん胸をしているんだ! あの美人は!。


 最低だって? どうとでも言え。俺はへんた……魔の王だからな!。



「そちらは勇者となりて何をもたらす」



 おっと、話をまた聞いてなかったぜ。いきなり振られて訳分かんないぜ。



 「俺はこの世界にいる全ての人を救い、苦しめられている人達を救済しながら、俺の全てを持って魔王を倒し、世界に平和をもたらします」



 真剣な表情で真っ直ぐな目で言う黒髪イケメン。


 ちょっと待て!。


 この短時間で何が起きたんだおい!。


 お前の中で一体どんな勇者魂が目覚めたんだ!。



「俺も気は進まねぇが、魔王だろうが何だろうがやってやる」



 茶髪イケメンも真っ直ぐな目で言う。


 お前も何が起きたんだ!。


 さっきまですげー反発してたのに、お前の中で何があったんだ!。



「僕も出来る限り尽力します」



 あー、こいつは何となく予想できてたから、そこまで驚かないな。


 そして白髪イケメン。



「………」



 何か言えよ!。



 おっと、ついに俺の出番が来ちまったか。



「それでは勇者諸君」



 おいぃー! 俺まだ何も言ってないんだけどぉー!。


 白髪イケメンめ、こいつのせいだ。こいつが何も言わなかったから、その次の俺も何も言わないだろう的な雰囲気で流れたんだ。

 まあ、別にいっか。俺魔王だし。別に……全然言う気なんかなかったんだからな!。だから……悲しくなんかないもん……うぅ……。



「今日はゆっくり休まれよ」



 そして、俺たちは玉座の間を後にして各部屋に案内されるのだった。


 悲しくないもん!。



◇ ◇ ◇




 でかいベットに魔王ダイブ(決まったぜ)をした俺は、玉座の間のことを思い出す。


 全員やる気だったな。白髪イケメン以外。


 しかし、あれだな。



 あの王様………怪しいな。


 俺は全ての悪魔達を束ねる王。故に、人の心を見抜くことだって出来る。

 あの王様は何か黒い、例えば邪な悪巧みをしているような目をしていた。


 少し“見て”みるか。



 俺は右目の魔眼を、開! 眼! する。



 まず見えたのは執務室みたいな部屋だ。

 続いて王様と何やら偉そうな黒い笑みを浮かべたこの国の重鎮らしい白髪が少し入った男性が視界に入る。



「本当によろしかったのですか? 陛下」

「魔王を滅ぼすためだ。仕方ない」



 何やらヤバそうな話だな。



「陛下のことです。魔王を滅ぼした“後”のこともお考えになられているのではないですかな?」



 ニタニタと黒い笑みを浮かべる男性は、不敵に笑う王様を見やる。



「あぁ……そのために5英雄の魂を彼らの“中”に入れる魔法陣を組み込んだのだ。彼らにはその時が来るまで5英雄の器になってもらう」



 5英雄? 器って何だおい?。



「英霊を彼らの中に入れて覚醒した時、彼らは自我を保てるのでしょうか?」

「無理だな。間違いなく英霊に体を乗っ取られ、彼らの精神は死ぬ」



 うぉい! 何だって!。


 俺は魔眼を閉じると自分の体に意識を向ける。

 特に体の中に集中して探る。


 ある!。


 俺の”中に何がいる“。


 めっちゃ怖いんですけどー!。


 あのイケメン三人トリオが急にあんな風になったのも、これが関係しているに違いない。白髪イケメンは知らねぇけど。


 とにかくやばいが。


 相手が悪かったな。


 俺は魔王だぜ。こんな得体の知れない霊魂に体を乗っ取られ、支配なんかはされないぜ。


 俺は今しがた見つけた“それ”に意識を集中すると、魔力で”それ”を閉じ込めるように包み込む。


 “それ”は反発しながらも、どうにか俺は“それ”を閉じ込めることに成功する。


 思っていたよりも結構てこずったな。

 どうやら相当の力を持った英雄だったに違いない。



「あー、だりー」



 ベットの上で大の字になると目を閉じる。


 自分の体から追い出すことも出来るが、感ずかれると後々面倒だ。

 それならしばらくこのままでいよう。封じ込めたし問題ないぜ!。


 問題なのは妹を含めたあのヤンデレ野郎達だ。

 俺のことを追ってくるに違いない。


 そんな事出来るのかと思う方、それが出来るんだよ。


 あいつらはっきり言って俺よりも強いんだよなー。チートだし。束になって来られたら俺なんかおもちゃにされる。色んな意味で。


 お前魔王だろう? と思ってくれた方、俺は頭脳派タイプの魔王です。


 たがら戦闘は脳筋の戦闘バカしかいない魔王軍の奴らに丸投げしているぜ。


 おかげで俺は弱いままだけどな!。



 さて、まだまだ問題が山ずみ、むしろ笑っちゃうぐらい増えたが、取りあえずは。



「メイド攻略だぜ!」



 考えてもみろ。


 この王宮には美人揃いのメイドさんが山ほどいる。

 邪魔する妹連中がいない今、ここはメイド国家、ハーレム王国と化したのだ!。


 こんな千載一遇のチャンスをみすみす見逃すような愚か者じゃないぜ俺は!。


 かっ! かっ! かっ! かっ!。


 魔王である俺を召還したのが貴様らの運のつきメイドのつき。


 戦いはすでに始まっている!。


 目指せ! 全員攻略!。

 弾けろ! 俺の魔剣!。

 目覚めろ! 俺のリビドー!。


 我が魔の道に敵なし!。


 俺はメイドハーレム王になる!。


 英霊だろうがこの世界の魔王だろうが関係ねぇ。


 俺はこの世界に召還された勇者まおう、俺は全力で目の前の獲物メイドを狩らせてもらうぜ!。



 ―――という時期も、妹達ヤンデレ野郎が来るまでありましたはい。



お読みいただきありがとうございました。

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