表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

最終話~エピローグ~

「ん…………?」

 悠一が目を覚ますと、そこは病院だった。起きあがり、ウロウロしている看護師を呼びとめた。

「ここは?」

「あ、お目覚めになったのですね! 早く、ご家族にお知らせしないと!」

 そう言い、看護師はパタパタと行ってしまった。なんとも忙しい人だ。


 ……助かったのか。……ん?

 悠一は、何かを忘れているようなえ気がした。思いだしたい記憶の部分が、真っ白になっている。


 俺は、何に対して助かったんだ? そもそも、何でこんな所にいる? 確か、修学旅行に行ったんだよな――?


 頭の整理がつかないまま、悠一の父と母・が駆け込んできた。

「悠一! 大丈夫か!!」

「……あぁ、心配してくれて有難う。俺、どうなったんだ?」


 すると、父の瞳が一瞬暗く染まった。そして、何もなかったように話を続けた。

「修学旅行の最中、倒れたそうだ。良かったな。明日には退院できるそうだ」

「そうだったのか」

 口ではそう言っても、納得がいかなかった。


 ダメだ。記憶が曖昧になっている。もっと、大変なことが起きたような――

「お母さん、すごく心配で……悠一?」

「っ…………!」

 気づいたら、悠一の目から涙がこぼれていた。母とは毎日のように会っていた。だが、一生会えないような体験をした気がしてならない。


「どうしたの……?」

 母と父は、顔を見合わせてから笑った。

「悠一が起きて、本当に良かった。――だが、安心はしてられない。あと少しで受験だ。父さんたちも応援するから、ラストスパート頑張ろう」



 そうだ。俺は受験生なんだ。

 たくさん勉強して、いい高校に入れるように――どんなに罵声を浴びせられても、進まないと。


 悠一は力強く頷いた。


「母さんたち、退院の手続きしてくるから待っていてね」

「……分かった」


 悠一は一人になると、不意に窓から見える山を見た。病院から結構近いところにあるので、はっきりと見えるのだ。

「ん……?」


 一か所だけ、妙な光り方をしている所があった。

 目を凝らして見てみると、一体の地蔵だった。紫色のほっかむりをして、こちらを見ている――ように見えた。


『もう、二度と愚かな行いはするな』

 脳内に、直接響きわたってきた――ような気がした。全てが曖昧で、悠一には何のことか分からなかったが、すごく大切な言葉だと直感で感じだ。


 妙な光が、フッと消えた。


「何だったのかな……?」

 机に目をやると、一冊の本が置いてあった。古そうな本でだ。タイトル名は、




「――笠地蔵?」
















「『悠一は天狐や地蔵と過ごした時の記憶を消されたが、元通りの生活に戻ることが出来た。今まで殺めた人も、地蔵の力でかえってきた。天狐――空狐は、一体どうなったのか。それは……」

 一呼吸置いてから、輪廻は本を閉じた。


「全てを知ったら、楽しくないですよね?」

 持っていた本を、棚に戻す。


 すると、その本がガタガタと震えた。

――ダ……し……て…………

 そして、本は床に落ちた。



 あれ、ちゃんと封じ込んだと思ったのに……


 輪廻は小さくそう呟き、本を撫でた。そして、ゆっくりともう一度戻す。もう、異変は起きなかった。


「さて皆さん。今回のお話はどうだったでしょうか? 僕自身まだ未熟で、皆さんに満足してもらえる本を見つけられていませんが――僕はいつでもここにいます。是非、またこの図書館に遊びに来て下さい。場所? ……さぁ、どこでしょうね。皆さんが何かの『物語』に出会いたいと思えば、目の前にあるでしょう」


 輪廻は、華麗に一礼した。

「最後に一つ。絶対に人間が関わったらいけないものが、この世にはたくさんあります。それは、とても身近にあるかもしれません。例えばほら、あなたの目の前にある――」

最後まで読んで下さった皆様、有難うございました!


感想、意見等お待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ