法則1条:仮想世界転送
まだ初心者なので下手な文章や読みにくい文章、また誤字脱字がありますがご容赦ください。
気がついたら三日目の朝日を浴びていた。
まだ眠気を帯びた目を擦りながら寝ていたベッドの傍に付いている窓を明ける。
窓から見える景色はこの三日間ずっと変わらない、しかしこの景色はまだ記憶に新しいのだ。
なぜならこの世界に来てから三日、訳も分からないままこの建物で生活していたが一向に奴らの計画の意図がわからないのだ。
思い返してみるが、この仮想空間転送プロジェクトは三日前に参加者を募り行われたのだが、覚えている限りでは主催者側の説明は仮想世界シュタインワールドでの生活デモを行い、記録を取りそれで終了と聞いたがここまで何も起こらないとなると逆に不信感だけが募っていた。
自分以外の人と言うと、大きく三つの人間に分かれているようだ。
一つは俺のようにこの世界での生活に妥協し静かに暮らす者、一つは必死に脱出方法を探そうと人を集めこの三日間騒いでいた者、最後に混乱し他人を傷つけた者、最後の準犯罪者たちはこの街の南方にある専用の施設に複数人で協力し収監したそうだ。
不思議な点は、いくらデータを採集するためとはいえ、他人を傷つける者が出てきても主催者側がなにも行動を起こさない点である。
さすがに死人が出るような事態なら主査者側も動くと思うが。
《朝食の配給の時間となりました。配給を貰う人は7時に中央広場に位置しているモールヒールまでお越し下さい》
すると突然、静かな朝に朝食配布のアナウンスが鳴り響く。
この世界では食事が配給制で、街の中央部に行きそこで食事を済ませる形となっている。
この配給は朝・昼・夕とそれぞれ決まっており、配給時間がズレることはまずない。
この世界は建物や設備などが機能しておらず、まるでライフラインが停止したような街になっており、そしてなぜか街のあちらこちらに銃や刃物などの凶器が転がっているのだ。
さすがにこれが本物だという証拠は無いが、今の段階でそれに手をつけた者はいない。
靴を履き、自宅ではないが現在の住居から徒歩で中央部のモールヒールまで向かう。
外へ出るとまるで元いた現実世界のような風が吹き、草が揺れる音が聞こえた。
しかし車や動物の音は聞こえず、あまりにもこの世界は静か過ぎるのだ。
「案外こっちの世界の方が楽なんじゃないのか?」
独り言でつまらないことをつぶやいてみたが辺りには誰もおらず、誰にも聞かれることはない。
元々この仮想空間転送プロジェクトなんてふざけた計画に参加するのは現実世界でロクな生き方をしてこない奴らばかりで、自分もその一人なのだがなぜか他の人間と自分を比べてしまう。
俺と比べられて困る人間はいないだろうが、俺のこの胸のうちの理不尽な俺が有利な比較を見たらだいたいの人は激怒するだろう。
そんなことを考えているとモールヒールが見え、そこには配給目当ての列が出来ていた。
この世界には大体50人程度の人が転送されその内40人くらいがそこに並んでいた。
列を見ていると収監された人間には食物が行き渡っているのか、そんなことを考えていたが、どうやら誰かが施設まで運んでいっているらしい。
そこまでするなんてなんてお人好しなのかと呆れているが、何故そんな社会に貢献的な素晴らしい人間がこんな世界に来てしまっているのか不思議でならなかった。
《食事の受け取りが完了しました。朝食お配給は終了致します》
俺はどうやら最後に来たらしく、配給も俺が受け取った瞬間に終了した。
今日の朝食はパンに野菜のスープだ。
少々物足りないが自分で作ることができないため文句は言えない。
今日も特に何もすることがないが、取りあえず目の前の食べ物を胃に収める。
「隣座っていいか?」
するとパンを頬張っている俺の座っているベンチに知らない男が座ってきた。
「俺の名前は白神って言うんだけど、あんたは?」
「俺は鋼って名前だよ・・・それより他に空いてる席なんていくらでもあるだろ?」
「・・・実はそのことなんだけどさ実は見てるだけで知り合いで参加した奴らが多くてさ、俺はずっと一人だったんだがあんたを見つけたときに声をかけようと思ってな」
「・・・ひょっとして、お前はホモか・・・?」
たった二文字に俺の白神に対する第一印象の全てを込めてぶつけてやった。
「ま、まさか!!違う、俺はそんな特殊な性癖を持ってないぞ」
「じゃあなんで俺なんだ?」
「だって鋼だってずっと一人だったじゃないか。せめて男友達ぐらいこっちで作りたくてな」
「・・・そういうことならいいけど」
「ありがとう、じゃあ俺たちこれから友達な」
そう言って白神が右手を差し出し、俺はそれに応えるように右手を握る。
ここで純粋に友人としての気持ちが芽生えたのだ。
そのあとは食事を済ませまた自宅へと白神を招き、この仮想世界シュタインワールドについての考察をいろいろと話し合った。
「俺が三日間過ごして気づいたことは、まず俺達以外の生き物がいないこと、あとは道具と言える物が銃などの凶器類、あとはこの街は見ての通り高い城壁に囲まれていて簡単に出ることができなさそうだ」
「俺も鋼と同じ感じだ。この三日間何も起きずに、ただ食事の配給を待ちながら、この待ちをすみずみまで探索しての繰り返しをしてきた」
お互いの意見を聞いたところで特に新しい発見はなかったが、街の探索に参加しなかった俺には高い城壁という情報は新しかった。
この街には別に名称はないが城壁が設けられていて、それが果たして俺達になんの影響を与えるのかが気になっている。
ただこの街での生活をしろという指示があったならこの城壁は、この街の最外地点でそれ以上での行動は無意味、ということになる。
つまり主催者はこの街での行動の行動のデータを取るだけなら城壁の奥なんかに何かをつくるはずがない。
「なあ白神、今回主催者から言われた指示を覚えているか?」
「ああ、たしか・・・シュタインワールドでの生活データを取るために転送されて、そしてこの世界で生活をするだけ・・・だったはず」
「だろ?じゃあなんで城壁なんて作ったんだ?俺たちにデータを取らせたいならもっと広範囲を移動させていろいろなデータを収集できるのに。絶対あの向こう側には何かある」
「何かあるって言ったってどうするんだよ、あんな高い壁超えられるわけがないだろ?」
「たしかに・・・だったらただの俺の考え過ぎかもしれない」
「まあ今はそんな難しいこと考えずに今までどおり暮らしましょうや」
白神の意見に妥協し、またいつもの生活に戻るのかと思った。
その瞬間である。
窓の向こう側、南の邦楽で静かに何か爆竹が連発ような音がなった後に突然街全体にサイレンが響き渡る。
《シュタインワールド在住の皆さんは直ちに北部の連絡センターに集まって下さい。これより緊急朱帆を開き新たな指示を出したいと思います》
「今の放送聞いたか?新たな指示・・・とにかく行ってみよう」
アナウンスを聞き、俺たちは急いで北部の連絡センターまで走った。
向かっている最中にさらっと聞いたのだが先ほどの爆竹が爆発する音はどうやら南部にいた準犯罪者たちが射殺された音らしい。
朝食事を運んだ女性が施設に入った際に見知らぬ装甲車が止まっており中には複数の人の気配を感じ、中に入ったところ、ちょうど囚人が射殺されているところを見たらしい。
本人は危害を加えられずに変えることができたが何が起きたのかわからなかったらしく軽いパニックだったと言う。
「どうやら俺たちが一番乗りだったらしいぜ」
「別に走らなくて良かったんじゃないか?他の人なんてどうせゆっくり歩いてきてんだろ」
連絡センターはなぜか周りのオブジェクトに対してすこし古っぽいデザインをしていて、軽い廃墟と言っても過言でもない。
すると連絡センターの中から複数人の部隊員が出てきて、その手にはなんと銃が握られている。
「おい・・・なんで銃なんか持った兵士みたいなやつらがここから出てきたんだ?もしかして俺たちはこいつらに殺されるのか?」
「そんな馬鹿な・・・別に俺たちは悪いことはしてないだろう・・・」
小声で話していると辺りには人が増え、いつの間にか集団が出来上がっていた。
「えー、我々は今回この仮想世界への転送プロジェクトを企画したネクスト社の実行グループ、通称ネイルと申します。この度はこの壮大なプロジェクトにご協力頂きまことにありがとうございます。さて今皆さんを呼び出したのはこれからの指示を出したいのとあともう一つはお渡ししたい物があるからです」
隊員の一人がそう言って部下に奥から何かを持ってこさせる。
それは大きく頑丈なアタッシュケースで、隊員が二人がかりで持ってくるほどの重量だった。
それを地面に置くとアタッシュケースが音を立てながら開くと中からは白い煙と共に腕時計のような小さな道具が姿を現す。
「これはある数値を記録するための記憶媒体でこれからの生活で重要な役割をいたします。くれぐれも取り忘れや盗難に気をつけてください」
そう言うと人々は自然と列を成し、一人一人その腕時計を取り出し各々腕に装着していく。
俺も利き腕とは逆の左腕に装着し、すると勝手に電源が付き何かの数値が表示される。
「今みなさんの腕につけてもらっているその装置は我が社が独自に開発した仮想数値記憶媒体メテオール。これはこれから私たちが指示する指令に関係して様々な数値を記憶します。」
「それよりこれからの指令ってなんですか?」
どこからか声が飛び、それに応えるように隊員が咳払いをして説明を始める。
「指令は簡単です。あなたたちにこの世界から出てもらうことです。この仮想世界から出られる方法は大きく二つ、一つはその装置に表示されている数値を100にすること、もう一つはすべてのモンスターを倒すこと」
隊員から発せられた言葉に周囲の人々が騒然となり、自分たちも相手の言葉を必死に理解しようとしたがわけがわからなかった。
モンスター・・・この世界からの脱出、これだけを聞くとまるでこのシュタインワールドに閉じ込められたような言い方だ。
「一体どういうことだ?それにモンスターなんてまるでおとぎ話のようなものが出てくるのか?」
俺が質問しようとしていたことを白神が全て言い切ってくれた。
「その質問には詳しく説明しましょう。皆さんがつけているメテオールに表示されている数値はこれから生活するためのいわばお金のような役割をします。これは他人に譲渡したりできますし、あなたがたの行動によって得ることもできます。その行動というのは先ほど言ったモンスターの討伐、それで得ることができます」
「つまりそのモンスターをさっさと倒してさっさと100ポイント貯めてこの世界からおさらばしろってことだろ?」
「つまりそういうことになります。しかし皆様には注意してもらうことがあります。それはそのメテオールに記憶された数値は毎日の食事や武器の使用につき毎回1ポイントを消費してしまいます。さらに一番注意するべきことはその数値を0にしないことです。その値が0になったとき・・・それは死よりも苦しいペナルティを受けることになります」
「・・・そのペナルティっていうのは?」
唾を飲みながら、そのペナルティの内容へと触れる。
「値が0になって24時間以内にポイントを得られなかった場合、新たなモンスターになり記憶を維持したまま友人やここにいる人々を襲う末路を辿ってしまいます」
その言葉を聞いて気が狂ったのか、一人の男性が隊員に飛びつき激昂する。
「ちょっとおかしくねぇか!?なんで俺たちがいきなり戦わなきゃいけないんだ、それにモンスターってなんだよ、俺たちをおちょくってのか?」
男性が隊員の上で胸ぐらをつかみながら叫んでいると横の隊員が動き腰に手を伸ばす。
そのとき俺は悟った。
その手の行き先はホルダーに収められた銃だったからだ。
「あぶなっ・・・・!!!」
パァンと銃声が鳴り響き一人の男性がこの仮想世界上で命を散らした。
静まり返った周囲に隊員がさらにもう一声付け加える。
「追加指令ですが、我々ネイルに歯向かうような真似は反逆行為と見なし即処刑です。皆さん注意してください」
そういうとその場にいたほとんどの人間は悲鳴を上げながら自分の今の住居に逃げ帰るようにして走り出した。
それも無理もない。
経った今目の前で人が殺され、それもいきなりわけもわからない指令を出され、普通の人間だったらパニックを起こしこの仮想世界で突きつけられた現実から逃げ出すだろう。
しかし俺と白神、そして数人はなぜかその場に残っていたのだ。
「なあ白神・・・なんかこういう展開最高に燃えないか?」
「おいお前何言って・・・」
「やってやろうじゃん、そのモンスター退治とやらを・・・」
その時の俺は狂っていた様に見えていただろう、しかし俺の中では現実では絶対にありえないこんな状況に最高に高揚していた。
仮想世界シュタインゲートで突然言い渡された謎のモンスター退治脱出ゲーム。
俺はこの時に悲惨な未来が待っていることなど思いもしなかった。
ご視聴ありがとうございました。
次の更新は一週間後ぐらいです。




