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第5話 ~王女~

どうも、湯豆腐です。

拙い文章ですが、最後までお付き合いしてくださるとうれしいです。

でわ、どうぞ。

「ほらね、なにも起きないでしょ? 動くわけがないのよ、動力源であるマナがないんだから。はー、家に帰ったら、マナに替わる物を取りつけないとね。後、不安定になっていた原因も取り除かないとね。異世界に行くのはそれからね」

 静瑠は天井を見上げながら呟いた。

「さぁユウ、帰るわよ。どうしたのよ、そんな(ほう)けた顔しちゃって、だらしないわよ!」

「ちょっとほんとにどうしたのよ。ねぇ、ユウ?」

 静瑠は自分の後ろを指差したまま、反応がない少年に対して(いぶか)しげに問いかけた。

「し・静瑠ちゃん、ね・ねぇ・・・異世界の扉ってどんな感じなの?」

「? なによ突然、でもそうねぇ、おそらくだけど世界と世界を繋ぐ扉ということから推測すると、ちょうど空間に穴が開く感じになるんじゃないかしらね」

「それってさぁ・・・、黒い穴みたいな感じで奥のほうに違う場所の風景が映ってる感じかな?」

「いやに具体的ね。でも、そうね。おそらくその違う場所っていうのが異世界ね。でもどうしたの?急にそんな事を・・・」

 静瑠はいまだに自分の後ろから目を離さない少年に言った。

「じゃ・じゃあさ、今静瑠ちゃんの後ろにその穴が出来てて、徐々に吸い込まれてるって言ったらどうする?」

 僅かに後ずさりしながら、悠輝は少女の後ろに指を向けながら答えた。

「はぁ? あるわけないでしょ。大体マナがないって言ってるんだから、動かないの! わかった?」

「後ろ!後ろに出来てるって!いいから見てよ!だんだん吸い込む力も強くなってるよ!」

 もう限界のように悠輝は叫びだしてしまった。

「だから。あるわけない・・で・・しょ・・」

 うんざりといった感じで静瑠が後ろを振り向くとそこには直径30cmほどの黒い穴がぽっかりと開いており、悠輝の言った通り自分も少しづつ穴に吸い込まれていた。

「ちょっと、え?どうして?マナがないと動かないはずなのに。いやいやいや、それよりも逃げないと吸い込まれちゃう!? なにも準備もしてないのに!? まだ冷蔵庫のプリン食べてないのに!?」

 静瑠は予想外の自体に色々と喚いて、その場でぐるぐる回っていた。

 そうしている間にも吸い込む力はどんどん強くなっていき、次第にさっきまで読んでいた本が吸い込まれるまでになっていった。


「うわっ、まずいよこれ。静瑠ちゃん、早く部屋を出ないと!ぼくらもほんとにこの世界とサヨナラだよ。早くってば!」

「ああああぁ、まだ夏休み始まったばっかりなのに、急に異世界なんて~。 ユウとまだ海にも行ってないし、買い物にも付き合わせてもないのに~。それからそれから・・・とにかくい~や~」

 静瑠はまだうだうだとその場で悶えていた。

「あぁ~もう! 静瑠ちゃん、お買い物でもなんでも付き合ってあげるから、早くこっちに来て!」

「い~や~、え?ほんと!? しょ・しょうがないわね。ユウがそこまで言うなら、行ってあげるわよ」

 静瑠はそう言うやいなや、さきほどとは似ても似つかないほどの素早い動作で悠輝に向かい歩を進めだした。

 その間にも穴からの吸い込む力はどんどん強くなっていく。

「早く、静瑠ちゃん。僕の手に掴まって!」

 悠輝は片手で部屋の扉に捕まりつつ、静瑠に手を差し出した。

「わ・わかってるけど・・・な・なかなか進まなくて・・・ちょっとうごけな・・い」

 静瑠は匍匐(ほふく)前進で進みながら、悠輝に手を出していた。

「も・もう少し・・・手を・・・」

「ユウ~、あ!」

 もう少しで届く所ということで安心してしまったのか、静瑠の体が一瞬だけ脱力した瞬間、彼女の体は宙に浮いてしまっていた。

「きゃっ」

「静瑠ちゃん!」

 考える間もなく、悠輝は扉から手を離すと静瑠の手を掴み、引き寄せるとそのまま自身の胸に抱え込んだ。

 そして、そのまま二人は吸い込まれるまま、異世界の扉という黒い穴に飲み込まれていった。






 召喚の魔法を唱え終えて、姫はなにが出てくるのかをいまかいまかと待ちわびていた。

「呪文は完璧だったし、マナの量も文句なし。これでなにも出てこないってわけはないでしょ」

「はぁ~、なにが出てくるのかしら。 古に滅んだといわれる精霊? はたまた現代でも生き続けているという龍種? もしかしてもしかして・・・」

 姫はとんでもない想像をしつつ部屋の中心で待っていた。

 その時、姫のちょうど真上にさきほど悠輝達の前に現れたのと同じ黒い穴がぽっかりと開くと、中から大量の本が次々と姫の上に落ちてきたのだった。

「いたっいたたた、なになに? 本? え、召喚ってこれのこと?」

 姫は慌てて穴の真上から避難すると、落ちてきた本を手にとった。

「なになに、ふんふん、へぇ~、結構興味深い本ね。あながち大ハズレってわけでもないかな~」

 姫はうんうんと(うなず)くと落ちてきた本を回収し始めた。

「こんなものかな。 よし、後はエルを呼んで部屋に運んでもらいましょう。 しばらくは退屈しないですみそうね」

「あら? まだ穴は閉じてないわね。まだなにか落ちてくるのかしら?」

 と姫はいまだに現れている黒い穴をまじまじと観察していた。

「ふーん。別になにもなし・・・か。まぁ時間がたてば消えるでしょ。それより本ね」

 姫は集めた本を持ち上げると、その場から立ち去ろうとした。


 次の瞬間、とても大きな音がした。


 びっくりして、姫が振りかえるとそこには少年を下敷きにした少女と少女に下敷きにされた少年がいた。

「わぁ~・・・人を召喚しちゃったよ。 これはまたおもしろそうな事になりそうね」

「えーと、とりあえずそこの子、だいじょ「ユウ!」ぶ?」

 姫はとりあえず二人に安否(あんぴ)を聞こうとしたが、静瑠の大きな声に(はば)まれた。

「ユウ! ユウ! ちょっとしっかりしなさいよ!」

 静瑠は姫の声が聞こえないのか、目に涙を溜めながら悠輝の体を揺さぶっていた。

「うぅぅう」

「ユウ、大丈夫?」

「し・しず・・るちゃん? あ・・れ・・・ここは・・?」

「ユウ! よかったぁ、無事でよかったよぅ」

 静瑠は上体を起こした悠輝に抱きつくと、震える声で答えた。

「大丈夫だよ。もう大丈夫。 静瑠ちゃんも怪我はない?」

「えぇ、ユウがかばってくれたから大丈夫よ。 それとここはおそらく異世界ね」

 静瑠の頭に手をおいて撫で始めた悠輝に静瑠はさきほどの質問に答えた。

「ここが異世界なんだ。 確かにどことなくお城のような感じだもんね。 もしかしてとんでもない場所に出ちゃったのかな?」

「どうなんでしょうね。ちょっとそこのアンタ、ここはどこ?」

 静瑠は声をかけるタイミングを見失い二人の空間をみることしかできなかった少女に話しかけた。

「さっきも声かけたんだけどなぁ・・・。まぁ、いいか。うん」

 姫は気持ちを切り替えると、二人の前に立ちその鮮やかな赤い髪を揺らしながら宣言した。

「ここは、魔法の国ルヴェル王国の首都イルスにある王宮よ。そして私はそのルヴェル王国の第一王女

リシェッタ・ルヴェルよ。 リシェって呼んでね。 それであなた達は?」

「僕は不堂悠輝、こっちの世界ではユウキ・フドウかな? えぇっと、よろしくお願いします、おう・・リシェ」

 悠輝は王女と言おうとしたのだがリシェが睨んできたので慌てて、言い直した。

「私は工藤静瑠、こっちではシズル・クドウね。 よろしくねリシェ」

 静瑠は平然といつもと変わらぬ感じで喋っていた。

「うんうん、ユウキとシズルね。ようこそルヴェルへ、異世界の人を迎えるなんて初めてよ。歓迎するわ」

 リシェッタは満足そうに頷くと、二人をうながし部屋を後にした。


「まずはお父さん、ここの王様にあって事情を説明しないとね。あぁ、大丈夫よ。悪いようにはしないし、言ったでしょ? 私は歓迎するって、少なくとも第一王女はあなた達の味方よ」

 警戒する二人にリシェッタは安心させるように優しい声で答えた。

「この国で一番偉い人にいきなり面会なんて・・・どうしよう・・・緊張してきた」

「何言ってんのよ。 しっかりしなさいよね」

 悠輝はビクビクと震える声で、静瑠はいつもどうりの声でそれぞれ会話していた。

 そんな二人の会話を笑顔で聞きながら、リシェッタは長い廊下を進んでいた。


 しばらく歩くと、前方からメイドが走ってくるのが見えた。メイドはだいぶ走っているのか息を荒げながら、まっすぐにこちらに向かってきた。

「はぁはぁ・・・よ・ようやくみつ・・ゲホゲホ・けましたよ」

「あははは、見つかっちゃった。 てへ」

 ボケるようにリシェッタは片手で自分の肩あたりで揃えた髪の毛をさわりながら、いまだに呼吸が乱れているメイドにむかって話しかけた。

「てへ、じゃありません! まったく王宮で魔法を使うなんてはしたない! そんなマナー違反なことはしてはいけないと・・・アラ? 姫様、こちらの方々は?」

 とようやくリシェッタの後ろにいる二人に気付いたようで、そちらに視線を送りながら彼女に問いかけた。

「あぁ、そうそう。この二人はユウキとシズルって言ってね、私の友達なの。で、王宮に来たのは初めてだから、お父さんにも会わせてあげたいんだけどその前に部屋で休ませてあげたいから案内してあげて、私はお父さんにほうこ・・伝えてくるから」

「そういうことですか。まぁいつもの事なので、もう諦めましたが。御二方、(わたくし)は第一王女リシェッタ様の専属侍従をしております。エルフィリアと申します。どうぞ、エルとお呼びください」

 すらすらとでっち上げの説明をしたリシェッタに客人の前なのか。いつものことなのかはわからないが、エルは納得した表情をすると、二人に対してお辞儀をしつつ自己紹介をした。

「えぇと・・はい、僕はユウキ・フドウです。よろしくお願いします、エルさん」

「私はシズル・クドウよ。よろしくね、エルさん」

 二人はそれぞれの口調で返事した。

「はい、こちらこそよろしくお願いします。でわ、ユウキ様、シズル様、客間にご案内しますのでどうぞこちらに」

 エルは二人を促すと背を向けて、歩き出した。

「あ、はい」

「えぇ」

「じゃあ、私はお父さんの所に行くね。後で呼びにいくからね」

 悠輝と静瑠がエルに付いていこうと歩き出したとき、リシェッタは手を振りながら違う方向に走っていった。


 客間に通された二人は、そこに設けられていたテーブルに付くと今後の事について話し合うことにした。

「ようやく、一息だね。それで静瑠ちゃん、これからどうする? もうその装置は使えないの?」

「えぇ、あのとき作動したっきりうんともすんとも言わないわね。 そもそもなんで動いていたのかもわからないし」

 二人はさきほど一度いなくなったエルが持ってきた、カームという紅茶に良く似た物を飲みながら話していた。

「とにかく私たちは現在無一文だし、リシェのお父さんにあってここにおいてもらえるように頼んでみましょ。 リシェも味方してくれるみたいだし、なんとかなるでしょ」

「そうだね。 ここなら色々情報も聞けるし、心強いよね」

 二人はそう結論付けると、後は取りとめのない話をして過ごしていた。



 しばらく雑談していると、扉をノックする音が聞こえそこからリシェが入ってきた。

「入るよー。お父さんに報告してきたよ。かなーりびっくりしてたみたいだけど、これから会うってさ。

準備はいい?」

 リシェはそう言うと二人を見た。

「わかった」

「いいわよ」

 二人が頷くと、リシェは満足そうなもとい楽しそうな顔になり客間を出た。

「さぁ、私が案内するよ。行こう」

 その言葉に悠輝と静瑠は客間から出て、はしゃいでいるリシェッタの後お互いに苦笑しながら付いて行った。 


 玉座の間はさすがということだろうか、二人がこれまで見てきた中で一番豪華なように見えた。その場所にはいまは人避けがされているのか、玉座に座っている王様とその隣にいるおそらく王妃であろう人以外に人影は見えなかった。二人はリシェッタに誘導されて玉座の前まで来ると、その場で止まるように言われた。悠輝と静瑠が王様の方を見ると、彼は待ちきれないといった様子で口を開いた。

「おぉ、君たちが娘の言っていた異世界から来たという者たちか! 私の名はリチャード・ルヴェル、この娘の父親であり、ルヴェル王国の現国王だ。そしてこっちは妻の・・・」

「ルヴェル王国王妃リュシーム・ルヴェルよ。二人ともよろしくね」

 リチャードは魔法の国の王様とは思えぬほどの容姿であった。短くしている黒髪に口元を覆う髭さらに豪奢(ごうしゃ)な服の上からでも筋肉の発達具合がよくわかるほどの体格であった。一方のリュシームは落ち着いた雰囲気の女性であった。長い真っ赤な髪にプロポーションはとても母親とは思えぬほどの若々しさを見せていた。二人は笑顔で悠輝と静瑠を見ていた。

「所で二人はどうやってこの世界に来れたのだ? 娘の話では黒い穴からでてきたというが、娘の行った召喚の魔法で偶々来てしまったのか? それとも向こうの世界ではそういうなにかがあるのか?」

 リチャードは興奮しているのか早口にそう聞いてきた。

「あらあら、あなたすこし落ち付きなさいな。二人が困ってしまっているわよ」

 リュシームが注意するがリチャードは止まらなかった。

「向こうの世界とはどんなところなのだ? なにかこうすごい強い獣とかいるのか? はたまたモンスターなどいるのか?」

「あなた」

「うーん、やはり見てみないことにはわからんな。だが異世界とはほんとにあったものなのだな。話していたら血が騒いできたぞ。」

「あ・な・た」

「こうなれば私自ら異世界にのりこむしかなぶふぉーーー!!」

 リチャードは突然奇声を上げると玉座から一瞬でいなくなると端のほうで泡を吹いて倒れていた。

「まったく、お客様に対してなんて失礼な事を、すこしは自制してくださいな」

「お母さん・・・魔法はやりすぎなんじゃ。お父さん起きてこないし、それにお母さんも二人の前で・・・」

 リシェッタは母に対して突っ込んでいた。

「え? あらあら、ごめんなさいね。 この人は興奮するとこんなになっちゃって、私の言う事を聞いてくれなくなっちゃうから、つい・・・ね」

 ほほほほとリュシームは口に手をあて微笑んだ。

「そうね・・・あなた達の名前を教えてくれるかしら、この人のせいで聞けなかったものね」

 リュシームはリシェッタに父親を起こすように言うと、二人に自己紹介を促した。

「は、はぁ、僕はユウキ・フドウと言います。よろしくお願いします」

「私はシズル・クドウと言います。よろしくお願いしますね」

 悠輝と静瑠は自己紹介をすると、リュシームに向かって軽くお辞儀をした。

「えぇ、よろしくね。ユウキ君とシズルちゃん、私たちの事は名前で呼んでいいわよ。今日は疲れたでしょう。お部屋を用意させるから、ゆっくり休んでね。それとあとで一緒に夕食を取りましょうね。それじゃリシェッタ案内してあげてね。私はこの人とお話があるから・・・」

「うん、わかった。後、手加減してあげてね~」

「さぁ、今回はちょっときつめにいくからわからないわね」

 それだけ言うとリュシームはどこにそんな力があるのか、リチャードの服の襟を片手で引きずりながら自室であろう場所に消えて言った。

「まっいっか、じゃあ案内するよ。こっちこっち」

 リシェッタは二人をぐいぐい押しつつ、部屋から出ようとした。

「ね、ねぇリシェ、あれ、いいの?」

 悠輝が指をさした自室のほうからはなにやら叫び声のようなものが聞こえだしてきていた。

「ん?あぁ~、いつものことだもん。大丈夫大丈夫。なんだかんだでお母さんも手加減するよ、夫婦だもん。」

「う、うん。そうなんだ」

 深く考える事をやめた悠輝はそのままリシェに促されるまま、自身に与えられた部屋に向かうことにした。















「なぁ、愛する我が妻リュシームよ。許してはくれないか? あれはちょっと我を忘れてしまったというか、好奇心が先走ってしまったというか・・・」

「えぇえぇ、わかってますよ。愛するあなた、でもねそこを抑えるのが王たるあなたの役目ではなくって? それが出来ないということはあなたを一番愛してる私が正してあげないといけないと思うのよ」

「いや、まて、リュシーム、いくらなんでも火はまずいだろ火は! ここが大火事になってしまう!」

「大丈夫よ。辺りには水の結界を張ってあるから・・・安心して」

「安心できないぞ。リュシーム! 私が死ぬ!死んでしまう!」

「その鍛えぬいた体は伊達ではないでしょう。」

炎よすべてを灰燼に(レッド・ゴースト)

「ちょ・・・まって・・ぎゃあああああー」

 その悲鳴は悠輝と静瑠が夕食に呼ばれるまで続いていたという。

このくらいの長さがいいのかな?

最後まで根気よく読んでくださって、ありがとうございました。

次話もよろしくお付き合いくだされば幸いです。

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