第3話 ~遺跡~
どうも、湯豆腐です。
相変わらずの拙い文章ですが、よろしくお願いします。
でわ、どうぞ
洞窟の中を悠輝は静瑠を背負ったまま進んでいく。洞窟の中はすでに調査チームによって整備された後のようで、緩やかな斜面になっており、障害物もないようである。
「うわぁ、ほんとに真っ暗だね。ライトの光だけが頼りだなぁ」
「そうね。でもすぐ開けた場所にでるはずよ。資料では遺跡の場所にはなぜか光源があり、明るかったと報告されていたわ」
静瑠は周りをライトで照らしてながら答えた。
「ふーん、もしかして魔法の道具かな。うわぁ、どんなのだろう楽しみだなぁ」
若干興奮気味に悠輝は言うと、歩く速度を速めた。
「あっ、ちょっと、もうっ、さっきまでは文句ばっかり言ってたのに、まったく子供なんだから」
静瑠は優しく微笑んでつぶやいた。
「ちょっとユウ!下り坂なんだから、もうちょっとゆっくり歩きなさいよ!私が危ないでしょ」
しかし文句も忘れないのが静瑠という少女であった。
「わわっ、ごめんね静瑠ちゃん。僕魔法の道具見るの初めてだから・・・。つい」
悠輝は謝りつつ、速度を落とした。
それから、しばらく無言で辺りを見回しつつなだらかな坂道を下って行くと、光がみえてきた。
「ん、あそこかな静瑠ちゃん」
「そうね、あの先がおそらく旧文明の遺跡ね」
「さ、いきましょ」
「うん」
二人は光が漏れている場所に向かって歩いて行った。そこは暗い場所にいたせいか、目が慣れるまでに時間がかかったが、慣れてくるとそこには無数の建物がそびえ立っていた。二人はその景色にしばらく呆然としていた。
「これが遺跡・・・。こんな地下にこんなにもすごいね・・・」
「えぇ、これほどとは思わなかったわ・・・。あぁー!うずうずしてきた」
「さぁ、手当たり次第に行くわよ。ユウ! 行きなさい!」
静瑠は悠輝の肩をバンバン叩きながら答えた。
「いたっ、痛いよ静瑠ちゃん。というか僕らだけでこんな広大な所はむりだよ・・・」
悠輝はげんなりしつつ背中でまだ肩を叩き続けている少女に語る。
「とにかく!進まなくちゃ埒があかないわ。全部とはいかなくても魔法関連の場所だけは調べるわよ」
「ん、わかったよ。でもどこが魔法関連かわかるの?」
「大丈夫よ、ちゃんとその場所もデータに乗ってたから。まずはそこをまっすぐ行って、曲がり角を右ね」
静瑠は背中から指示を出した。
「ふぅ~、はいはい、隊長、じゃあいきますよっと」
悠輝はため息をつきつつ、少女を背負いなおして歩きだした。
捜索を始めることにして、およそ5時間ほどがたったであろうか、悠輝と静瑠は魔法関連の場所を順番道理に探索していた。だがその成果は芳しくなく、調査チームが持ち出したのか何も残されていなかった。
「あー、ここも書物や機械は持ち出されてるみたいだね。棚も全部からっぽだよ」
「なによなによ、なんにもないじゃないのよ。まったく泥棒みたいに根こそぎ持って行っちゃって、いいと思ってるのかしら。」
静瑠は憤慨して言い放った。
(ぼくらもあわよくば持ち出そうしてたんだけどね・・・)
悠輝は心の中で思うだけに留めた。
「なによ、なにか言いたそうね」
「いやいや、ナンデモナイデスヨ」
少年はカタコトになりつつもごまかした。
「ふーん、まぁいいわ。次の場所で最後にして、今日の所は戻りましょう。時間も時間だからね」
「そうだね、いくら静瑠ちゃんが軽いっていっても、ぼくも疲れてきたよ。
と少年は探索の間中、休憩はなんどか入れたとはいえずっと静瑠を背負って移動していたのである。
「う・・うるさいわね!遺跡の中を探すときは下りてあげたんだからいいでしょっ。とにかく次の場所に行くわよ!」
静瑠は真っ赤になりながら反論していた。
二人は騒がしくしながら目的の場所に向かった。
そこはいままで探索した場所とは違い、すこしひっそりとした場所にあった。大きさもいままでのと比べると小さくどうやら個人が所有していた屋敷のようである。
「ここかぁ、いままでのより小さいし、すぐにおわりそうだね」
と悠輝は気楽そうに答えた。
「・・・」
悠輝とはうって変わって少女は黙り込んでいた。
「どうしたの静瑠ちゃん?」
「ここはね、報告書のデータでも一番おかしい場所だったのよ。」
「え?」
「なんでもね、地下に続く扉を発見したんだけど、開かなかったらしいのよ。それで色々ためしてみたんだけど、結局なにもわからないまま打ち切りにしたんだって。後日また調査がくるらしいから、ここだけはどうしても行ってみたかったのよ」
静瑠は真剣に答えた。
「とりあえず行ってみようよ。おそらく僕はわからないだろうけど、静瑠ちゃんならできる気がするよ」
悠輝は静瑠に絶対の信頼を置いているのか、確信を持って言った。
「う・・・、あーっ、わかってるわよ!この静瑠さまにできないことなんて、運動以外にはないという事をわからせてやるわ!」
静瑠は茹でダコのようになりながら悠輝に答えた。
「うん、そうだね。行こう」
悠輝はゆっくりと屋敷の中に入っていった。
屋敷の中は結構広く長い廊下の先には大きな扉がみえ、その廊下の左右にはいくつかの扉が見えた。
入口の左右には階段があり、どうやら2階もありけっこうなお屋敷だったようだ。
「で、その開かない地下への扉ってどこにあるの?」
悠輝は背中の少女に聞いた。
「確か、廊下の扉のここから見て右側の3番目だったはずよ。一応用心してね。
「わかった。それじゃあ、行くよ」
悠輝は静瑠を背負いなおすと、ゆっくり扉に近づき開け放った。
中は案外広いようで本棚などが置いてあり、左側をみてみれば机もあった。もちろん本棚はからっぽだったが移動させた形跡があった。どうやら問題の扉は本当に隠し扉だったようである。
「これがその扉かぁ、たしかに見たところカードキータイプでもないみたいだし、昔のだからカギ穴?だっけそういうのでもないし、一体どうやって開けるのかなぁ、ねぇ静瑠ちゃん」
「そうねぇ、とりあえず辺りを調べましょ、なにかスイッチとかヒントとかあるかもしれないし」
「うん、わかった。じゃあ降りてね静瑠ちゃん」
「わかってるわよ!」
と静瑠はふんと鼻を鳴らすと、悠輝の背中から降りて辺りを探し始めた。
「さぁ、僕もさがそうっと」
と気合を入れると、悠輝も辺りの壁を調べ始めるのだった。
それからしばらく二人は壁や床などを念入りに調べたがそれらしいものはなにもなく、途方にくれてしまった。
「はぁ、なんにもないなぁ。静瑠ちゃん、そっちはどう?」
「だめね、それらしいものはなんにもないわ。でもどこかにあるはずなのよねぇ・・・」
静瑠は顎に手をあてつつ、ぶつぶつ呟いてた。
「後は、空っぽの本棚はだけだけど特になんにもなさそうじゃない?」
悠輝はそう言うと、本棚に近づいて行った。
本棚は3段になっておりどこもほこりにまみれていた。悠輝は棚を一つ一つ念入りに探してみることにした。
「ん~、普通の本棚かなぁ。特に変わったところは・・・ん?」
「ユウ、どうしたの?」
静瑠は悠輝の反応に小首を傾げた。
「なんか、本棚の一番下の枠の所にほこりまみれだけど、なにか接続できそうな穴があるよ?」
「でかしたわ!ユウ、見せてみなさい」
静瑠は悠輝に駆け寄った。
「これだよ、静瑠ちゃん」
と悠輝が指を刺した場所には確かによく目を凝らさなければ、わからないような感じに丸い穴が開いていた。
「なるほどねぇ。こんなところにあったわけね。どうやら、この先にあるものはよっぽど見られたくないのかやばいものがあるのね。」
「くっくっくっ、楽しくなってきたわ。シル!」
静瑠は端末に向かって勢いよく声をかけた。
「はい、マスター」
「いまから、接続してみるから解析してみてくれる」
「了解しました」
そう言うと、静瑠は腕の端末からコードを取り出すとそれを本棚の穴に繋げた。すると静瑠の腕の端末の画面から高速で文字が駆け巡った。
「シル、どう?」
「この本棚は扉を開くための場所を開ける物のようです。条件はこの穴を見つけ、接続すること」
と端末は答えた。
「どういうこと?おかしいとは思ってたけど、ここは魔法時代の遺跡のはず、こんなハイテクな物があるわけないんだけど・・・」
静瑠はかなり警戒をあらわに呟いた。
「とりあえず扉を開いてみればわかるよ。うん、わくわくしてきた」
悠輝は気楽そうに答えた。
「まったく、あんたは。でもそうね、開いてみればわかる・・・か」
「シル、場所をあけて」
「了解。マスター」
端末のシルが答えたと同時にガコっと扉の脇にある壁が外れ、中からパスワード入力のキーボードと画面が現れた。
「ま、見つけるのだけが困難ってところだったかな」
言うと静瑠は端末から何かを取り出すと、キーボードの上に振り掛けた。
「ふむふむ、なるほどね。パスワードは・・・・っとこれでよし」
すらすらと静瑠は入力していき、やがてゆっくりと扉が横に開いていった。中は下に続く階段があり、真っ暗であった。
「私にかかればこんなもんよ。さ、ユウ行きましょ」
と颯爽と階段を下りて行った。
「あ、まってよ静瑠ちゃん」
悠輝はあわてて静瑠の後を追って行った。
階段は思ったほど深くはなく、すぐに扉が現れた。二人はその扉をあけ、中に入って行った。中はそこそこな広さを持っていた。左右に中身の入った本棚があり、正面には机と椅子のセットがあった。おそらく持ち主のプライベートルームだったのだろう。明かりも付いており、これがおそらく魔法の力を込めた魔法時代のライトなのだろう、持ち主が生きていた時代から変らない光を放っていた。
「うわぁ、大発見だよ。静瑠ちゃん!未発見の本もあるし、わ!これが魔法時代の明かりなのかぁ。すごいすごい!」
悠輝は辺りをキョロキョロ見渡しながら、はしゃいでいた。
「そうね。すごいわ、こんなに本が残ってるなんて・・・どれどれ、ん?湯豆腐、ついに宇宙へ?はずれね」
静瑠は今見ていた本をほうり投げると、別の本を次から次へと読みふけっていった。
「僕も本を読みたいけど、翻訳機能はついてないしなぁ。こんなことなら付けとけばよかったな~」
悠輝は本を手にとってはパラパラとめくっては戻す行為を繰り返しながらぼやいていた。
そうしてしばらく、部屋の本を調べていると、悠輝は一冊の本に興味を惹かれた。それは人形の絵が書いてあり、本の中身も挿絵から察するに、魔法時代の機械人形の説明書のようであった。
「ねぇねぇ、静瑠ちゃん、静瑠ちゃん」
悠輝は熱心に本を読んでいた静瑠の服を引っ張りながら彼女を呼んだ。
「へぇー、この時代ではこんな考え方だったのね~、興味深いわ。ってなによ、ユウなんかあったの?」
静瑠は邪魔されたのを怒ったのか、すこし不機嫌そうに答えた。
「うん、ごめんね静瑠ちゃん。あのね、この本はなんて書いてあるの?」
悠輝は手に持っていた本を静瑠に差し出した。
「なになに、「魔動力炉人形の作り方」? あぁ、あんたこういうの好きそうだったわね。持って帰るの?」
「うん、やっぱりそういう本だったんだ。家に帰ったら、翻訳機能入れて、読んでみよう~。たのしみだなぁ」
悠輝は弾んだ口調で言うと、腕の端末に本を掲げると本は光に包まれながら少年の手元から消えた。
「そんなの家に帰らなくても今入れてあげるわよ、端末だしなさい。シル、お願いね」
「はい、マスター」
というと静瑠は悠輝の腕を取って、自身の端末を悠輝の端末にくっ付けた。
「接続を確認。これからこちらの翻訳機能をコピーします」
端末から女性の声が響くと、二人の端末の画面を文字が高速で飛び交い始めた。
「3、2、1、同期完了しました」
「ありがとうシルさん」
悠輝はうれしそうに礼をいった。
「いえいえ、これぐらいはお安いご用ですよ、悠輝様。でわ、私はこれで、マスター」
「えぇ、ありがとう」
静瑠の端末は再び沈黙した。
「さぁ、あんたもこれで読めるようになったでしょ。そこでおとなしく読んでなさい。こっちももうすぐ終わるから」
静瑠は悠輝に手を振ると、ふたたび手元の本に視線を移した。
「うん、ありがとう静瑠ちゃん」
悠輝はその場に座り込むと、端末の画面を熱心に読み始めた。
悠輝が時間を忘れ、画面を呼んでいると突然静瑠の笑い声が聞こえてきた。
「え?え?なになに、どうしたの静瑠ちゃん?」
悠輝はびくびくしながら、静瑠に聞いた。
「あーっはっはっはっ、おもしろい!おもしろいわよ!ここにいた人物は当たりのようね」
静瑠はなにが可笑しいのか、まだ笑っていた。
「くっくっくっ、ユウ、喜びなさい。今から私たちは世界からさよならするわよ」
「え?」
いよいよ、次話あたりで飛べるかな?
最後まで読んでいただきありがとうございました。