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『記憶喪失勇者』スピンオフ短編シリーズ

受付嬢ミア ~玉の輿のために字の練習をしていたら、ギルドの不正を暴いてしまいました~

作者: さいらす
掲載日:2026/08/21

「記憶喪失勇者」

https://ncode.syosetu.com/n1831mp/

「記憶喪失勇者」と同じ世界の普通の人たちを題材にした短編です。


※『記憶喪失勇者』のスピンオフ短編です。本編未読でもお読みいただけます。

 朝の開店と同時に、冒険者ギルドのカウンターには列ができる。


「こんにちは、センチュリオの冒険者ギルド、ラグーツ支部へようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 依頼書を貼り出し、報酬を数え、汗と血の臭いのする冒険者たちの愚痴を聞き流す。赤毛の受付嬢ミアは今日も、一番右端のカウンターで“営業スマイル”を浮かべていた。


 ミアは十七歳。このラグーツの街から徒歩で三日ほどの小さな村の出身で、実家は貧しい雑貨屋だ。父親は仕入れで街に来るたび、「早く嫁に行け」という手紙をわざわざギルドに置いていく。


 ――村に戻って誰かに嫁ぐくらいなら、一生ここで依頼書を貼ってるほうがましよっ!


 もっとも、ミアにも野望はある。


 狙いは裕福な商人の跡取り息子か、下級貴族の三男か四男との縁談だ。そういう家に嫁ぐなら、綺麗な字が書けて、計算が速いほうが絶対にいい。だからミアは、誰に褒められなくても帳簿を丁寧に書く。受付の仕事は、花嫁修業も兼ねているのだ。


「ミアちゃん、今日も倉庫の整理お願いね。わたしたち、手が離せないから」


 隣のカウンターの先輩たちが、そろって焼き菓子をつまみながら言う。


 ――それ、どこからどう見ても休憩ですよねっ!?


 もちろん、口には出さない。どうせやるなら、ぴかぴかにしてやるのだ。ミアは古い書類の山にくしゃみをしながら、一枚ずつ年ごと、月ごとに束ね直して棚に並べていく。きちんとそろった棚を眺めるのは、悪い気分ではなかった。


 ――ふふん。掃除と在庫の整理は、家でもやらされてたし、得意なんだから!


◇


 昼過ぎ、列の空気が変わった。


「おい」


 順番を無視してカウンターに割り込んできたのは、傷ひとつない高そうな大剣を背負った大男――ランク4の剣術士、“鉄牙”のドルガだった。


「高額の依頼が入ったらな、掲示板に貼る前にまず俺に見せろ。いいな」


「申し訳ありません。依頼は全員に公平に公開する決まりですので」


「あぁ?」


 太い腕がカウンターに乗り、酒くさい顔が近づいてくる。


 ――街に出てきたばかりのころは、高ランクの冒険者との縁談もありかも、なんて思ってたけど……。


 ――一年ここで働いて、その選択肢はきれいさっぱり消えました。理由は目の前のこれです。


 ミアが笑顔のまま引かずにいると、ドルガはふんと鼻を鳴らした。それからカウンターの端のインク瓶をつまみ上げ――開いたままの帳簿の上で、ゆっくりと傾けた。


「なっ……!」


「口の利き方に気をつけな、受付嬢」


 朝から書きつづけたページが、真っ黒に沈んでいく。


 騒ぎを聞きつけて、二階から支部長のバルタスが下りてきた。汚された帳簿をちらりと見ただけで、面倒くさそうに言った。


「新入り。おまえが我慢すれば、それで丸く収まる話だ」


「で、ですけど、せっかく書いた帳簿が」


「書き直せばいい。ドルガはうちでいちばん稼ぐ男だ。おまえの帳簿とどちらが大事かくらい、わかるだろうが。嫌ならいますぐ辞めてもいいんだぞ」


 バルタスは赤毛の受付嬢の顔も見ず、ドルガの肩を親しげに叩き、二階へ誘っていった。


 その夜、ミアは閉店後のギルドにひとり残り、一枚ずつ帳簿を書き直した。


 ――こんなことで辞めるもんですか。それに、どうせ書き直すなら……。


 前よりも丁寧に、綺麗な字で書いてやった。


◇


「ミア姉ちゃん、これ! この依頼、俺に回してくれよ!」


 翌日の朝、カウンターに身を乗り出してきたのは、同じ村出身の新米冒険者リトだ。十五歳。病気の親の借金を返すため、ミアよりすこし遅れてこの街に出てきた。


 差し出された依頼書には、こうある。


『旧ガヤルド王国領にて、猪型の中型魔獣二体の討伐。受注はランク3以上。報酬は金貨二十枚』


「ダメです」


「なんでだよ! 金貨二十枚だぞ!?」


「ダメに決まってるでしょ! リトはランク2なんだから。冒険者には必ずこなせる依頼を渡す、っていうのがギルドの決まりなの。中型なんてまだ早いよ」


「……ちぇっ、俺だって中型くらい……」


 リトはこの一年、兎型の小型魔獣をこつこつ狩りつづけて、ランク2まで上がってきた。一年でランク2なら、かなり早いほうなのだ。それでも親の借金には、まだまだ追いつかない。


 口を尖らせて掲示板へ戻っていく背中を眺めながら、ミアはちらりと酒場のほうを見た。


 このラグーツの街のギルドには、ある噂があった――。


 “鉄牙”のドルガは高額の魔獣討伐の依頼を受けても、自分では狩りに行かない。


 金に困っている低ランクの子たちに狩りをさせ、魔獣から取れた魔晶石を回収し、報酬はほんのわずかしか渡さない。たとえ怪我をしたとしても治療も受けさせない。


 ――そういう噂だ。


 だが、誰も口には出さない。ランク4――ギルドいちの高ランクににらまれて、この街で冒険者を続けられるはずがない。みんな、ドルガが怖いのだ。


 もうひとつ、ミアには気になっていることがあった。


 一年前、リーンから流れてきたドルガの登録を担当したのはミアだった。神聖術士のセラが判定し、ミアが記録した。あのときのドルガのランクは――2。


 それが半年もしないうちにランク4になり、高額の依頼を次々と受けるようになった。魔晶石の持ち込みが増え、ギルドで大きな顔をするようになったのも、そのころからだ。


 ――セラさんは判定してないって言ってた。神聖術士は他にもいるけど、誰が判定したんだろう……?


「ねぇ、リト。ランクって、半年で2から4に上げられるものだと思う?」


「はぁ!? 俺、ランク2になるのに一年かかったんだけど!?」


「そう……よね」


 喉の奥に引っかかった小骨のような疑問を、ミアはそっとしまい込んだ。


 証拠なんて、どこにもないのだから……。


◇


 五日後の夕方だった。店じまいの支度を始めたミアの前で、跳ね扉が乱暴に開いた。


「ミアさんっ! リトが、リトがっ!」


 血の気の引いた顔の少年が三人、ぐったりとしたリトを担ぎ込んでくる。太ももに巻いた布が、赤黒く染まっていた。


「ド、ドルガさんに、ついてこいって言われて……猪型の依頼で、牙で……」


 ――あの依頼……!


 その日の当番だったセラが駆けつけ、リトの脚に手を当てた。白い光があふれ、傷口に吸い込まれていく。長い、長い治癒だった。


 やがてセラが、額の汗をぬぐって振り返った。


「……生命は取り留めました。ですが、杖なしで歩けるようになるかまでは……この先は神殿の高位の術士でなければ……その……治療費がかなりかかります」


「ギルドが出します」


 ミアは即答した。


「ギルドの依頼で怪我をした冒険者の治療費は、ギルドが負担する。規約の第百三条です」


「ほう? 誰の依頼で、かね」


 いつの間にか、バルタスが階段の途中からこちらを見下ろしていた。


「その小僧は依頼など受けておらん。受けたのはドルガだ。治療費を請求する権利はドルガにあり、受け取るのもドルガだ。規約どおりだな」


「その治療費を! ドルガさんが自分のものにしてるんじゃないですかっ!」


 言ってから、ミアは自分で驚いた。ただの噂を、口に出してしまった。


 だが、バルタスは眉ひとつ動かさなかった。


「だとしても、だ。支払われた金がどう使われているか、ギルドの関知するところではない」


 ゆっくりと階段を下り、バルタスはミアの目の前に立った。


「いいか。おまえひとりが騒いだところで、なにも変わらん。受付嬢の代わりなんて、いくらでもいるんだ。……我慢しろ。それで丸く収まる」


 ミアは、なにも言い返さなかった。


 言い返す代わりに、その夜、一枚の書類を書いた。


 規約第二百十一条。支部の職員は、支部長の職務に疑義があるとき、本部に直接、監査を請求することができる。


 宛先は、リーンのギルド本部。


 その一枚の紙に、ミアは一縷の望みを託した。


◇


 七日後の朝、黒い外套の女が跳ね扉から入ってきた。


 年のころは三十すこし。背筋はまっすぐに伸び、灰色の目には感情の色がない。


「冒険者ギルド本部監査室から参りました。上級監査官のヴェルナと申します」


「これはこれは、わざわざこんな辺鄙なところまで。しかし本部もお暇と見える。どうせ、うちの受付嬢の思い込みですぞ」


 愛想笑いをするバルタスには答えず、ヴェルナは「書類を」とだけ言った。


 監査は丸一日かかった。帳簿、受注票、完了報告、買い取り伝票。ヴェルナは倉庫にこもり、口を閉じたまま紙をめくりつづけ、夕方、ようやく顔を上げた。


「――書類に、不備はありません」


 ミアの胸の奥が、すっと冷たくなった。


 翌日には、ドルガとその依頼に同行したことのある低ランクの少年たちが集められた。だが、誰もが床を見つめたまま口を開かない。


 ドルガが、少年たちを険しい目で見据える。


 魔晶石の買い取りは、冒険者ギルドだけに許されている。裏取引はご法度だ。


 たとえ魔獣を狩れるだけの実力があったとしても、ギルドににらまれれば依頼も受けられず、魔晶石も売れない。冒険者はこの街で生きていけないのだ。


 松葉杖を抱えて椅子に座ったリトさえ、目を伏せて小さく言った。


「……俺が、勝手についていっただけです。ドルガさんは悪くないです」


「でも、リトは神殿で治療を受けてないじゃないですか!」


「俺は忙しくてな。まだ、連れていってないだけだ。まだな」


 薄ら笑いを浮かべて、ドルガが言った。


「聞いたかね、監査官殿――」


 バルタスが椅子の背にもたれ、勝ち誇った顔でミアを見た。


「これだから村から出てきたばかりの新米は困る。空回りだけは一人前だな」


 ――落ち着け、わたし。まだ、終わってない。


 ミアはひとつ息を吸い、ヴェルナに顔を向けた。


「監査官さま。すこしだけ、お時間をいただけますか」


「どうぞ」


「先月の十二日、ドルガさんは旧ガヤルド王国領で狼型の中型一体を討伐した、と完了報告に書いています。ですが、旧ガヤルド王国領までは、街道を南に二日かかるんです。……十二日の昼、ドルガさんはこのカウンターで魔晶石を売っていました。買い取ったのは、わたしです」


「あぁ?」


 椅子にふんぞり返っていたドルガが口を開いた。


「討伐の日付なんざ、帰った日を適当に書いてるだけだ。狩ったのはその前で、魔晶石は溜めてたのをまとめて売った。それだけだろうが!」


 ヴェルナが手元の書類に目を落とし、静かに言った。


「……完了報告における討伐日の記載は、義務ではありません。不備には当たりません」


 ――くっ。


「なら、もうひとつあります」


 ミアはまっすぐにドルガを見た。


「一年前、あなたがこの支部に登録したときの判定を記録したのは、わたしです。あのときのあなたは――ランク2でした」


 周りにいた冒険者たちが、ざわついた。


「半年で、2から4。リトは一年魔獣を狩りつづけて、ようやく2です。……いくらなんでも、早すぎませんか?」


「早かったらなんだってんだよ!」


「いまここで、もう一度判定を受けてください」


「断る」


 即答だった。


「判定は本人が申し出なきゃできねぇ決まりだ。なあ、支部長よぉ?」


「そのとおり」


 バルタスが重々しくうなずいた。


「規約により、判定の強制はできん。だいたい、ドルガはこの支部一番の功労者だぞ。寄ってたかって疑うとは、いい加減にしたまえ」


 ――ここまで、なの……?


 ミアが唇をかんだ、そのときだった。


「そういえば」


 ヴェルナが、書類入れから一枚の紙を取り出した。


「昨日、倉庫の書類を調べさせていただきました。……こんなものが出てきましたが」


 机に置かれた紙を、ミアは覗き込んだ。


 見覚えのある字が、そこに並んでいた。ほかの誰の字でもない、ミアの字だ。


『冒険者ドルガ。判定、ランク2。判定者セラ、記録者ミア』


「そ、それがどうした!」


 ドルガが立ち上がった。


「一年前は2だったんだよ! それから俺は死にもの狂いで魔獣を狩って、4に上がったんだ! 文句あんのか!」


「なるほど。では、伺いますが――」


 ヴェルナの表情は変わらない。


「ランクが上がるには、判定を受け直す必要があります。そして判定を行えば、必ず記録が残ります。……ミアさん」


「は、はいっ」


「この支部の書類は、驚くほどよく整理されています。帳簿はどれも綺麗な字で記入され、倉庫の書類は年ごと、月ごとに束ねられていた。ここまで行き届いた支部を、わたくしはほかに知りません」


 ――押しつけられてただけなんですけどね……一生懸命やりましたけどっ!


「ですから、断言できます」


 灰色の目が、はじめてバルタスに向いた。


「この支部のどこにも、ドルガさんがランク4と判定された記録は存在しません。これだけ整理された倉庫で、紛失したという言い訳は通りませんよ。……支部長」


「……っ!?」


 ヴェルナが、カウンターの奥へ視線を向けた。


「ドルガさんがランク4であると、みなさんはどなたから聞きましたか?」


 先輩の受付嬢たちが、顔を見合わせた。


「し、支部長から……そう聞いていました……」


「じょ、冗談ではない! 私はなにも――」


「規約第二百十四条。上級監査官は、監査に必要な検査を命じることができます」


 ヴェルナは立ち上がった。


「ドルガさん。この場で、ランク判定を受けなさい。拒否すれば規約違反とみなし、あなたの冒険者登録を抹消します」


「ふ、ふざけんな……!」


 ドルガは周りを見まわした。だが、ギルド内の冒険者たちの視線は、氷のように冷たい。逃げ場はどこにもなかった。


 セラが判定用の魔道具を運んでくる。ドルガの太い手が、のろのろとその上に乗った。


 白い光が、ゆっくりとかたちを結んでいく――。


「……判定、ランク2です」


 その場が、静まり返った。


「け、怪我だ! 怪我が治りきってねぇんだ! だから数値が落ちてんだよ!」


「そ、そうだぞ! ドルガは万全ではないのだ!」


 わめくふたりの前で、ミアは静かに帳簿を開いた。


「ドルガさんの治療費は、この一年で二十三回、ギルドから全額支払われています。……全部、治っているはずですよね?」


「なっ……」


「それとも二十三回分の治療は、行われていなかったんでしょうか?」


 ドルガの口が、開いたまま動かなくなった。


「神殿に照会すれば、実際に治療を受けたかどうかはすぐにわかります。受けてもいない治療の費用を請求するのは規約違反です」


 ヴェルナが淡々と続け、それから、バルタスへ向き直った。


「バルタス支部長。あなたがリーンの本部にいたころにも、ギルドの資金を着服している疑いがありました。しかし証拠がそろわず、職員への度重なる横暴な行為だけが認められて、この街へ異動になった。……覚えていますね。あの処分を上申したのは、わたくしです」


「まさか! お……おまえは、あのときの……受付嬢!?」


「ええ。代わりなら、いくらでもいるはずの受付嬢です。……ですが、わたくしはもうあのときとは違います――」


 ヴェルナは、一通の書状を机に置いた。ミアが夜中に書いた、あの監査請求だった。


「過去の余罪も含め、徹底的に調べさせていただきます。千六百年前にエウリーさまが冒険者のために作られたギルドの規約を悪用するなど、恥を知りなさい!」


 ヴェルナが跳ね扉に向かって声を上げると、武装した街の衛兵たちが入ってきた。はじめから、表に待たせてあったらしい。


「虚偽のランク認定、ならびに治療費詐取の疑いです。ふたりを連行してください」


 ドルガが暴れようとした。その瞬間、周りにいた冒険者たちがいっせいに武器に手をかけた。


 誰ひとり、ランク2の男など恐れてはいなかった。


 引き立てられていくドルガが、バルタスに向かって吠えた。


「お、おいバルタスっ! てめぇが持ちかけたんだろうが、『分け前をよこせばランク4ってことにしてやる』って! 俺ひとりに罪をかぶせる気かよ!」


「ま、待ってくれ! 私はそんなこと言ってない!」


 衛兵に腕をつかまれたバルタスが、必死に振り返る。


「ミア! いや、ミアくん、ミアさんっ! き、君からもなんとか言ってくれ! なあ!」


 ミアは、営業スマイルを浮かべた。


「まあまあ、支部長――」


 そして、言った。


「あなたが我慢すれば、それで丸く収まる話でしょう?」


◇


「ミアちゃん、倉庫の片付けでもなんでも言ってね」


「そうそう。わたしたちに任せて」


 先輩の受付嬢たちは、あれから急に愛想がいい。


 ――現金なんだから、もうっ。


 本部へ戻る朝、ヴェルナはカウンターに立ち寄って、ミアに声をかけた。


「ミアさん。勇気を出して監査請求を送ってくれて、本当にありがとう。バルタスはリーンでの横領についても自白したわ。重たい刑が言い渡されるでしょう……それから」


「は、はい」


「あなたには本部も期待しているわ。これからも冒険者のために頑張ってね」


 にっこり微笑むと、上級監査官は小さく手を振って去っていった。


 ――ヴェルナさん。できる女って感じで、かっこいい。わたしも頑張れば、あんなふうになれるかな?


◇


 数日後、神殿での治療を終えたリトがギルドに顔を出した。脚の傷は、跡も残らず綺麗に治り、もう杖なしでも歩けるそうだ。


 治療費はギルドが全額負担した。受注資格のない者に依頼を渡していた以上、責任はギルドにある――それがヴェルナの裁定だった。


 ドルガから取り戻した金は、代わりに討伐をさせられていた少年たちに分けられるという。


「ミア姉ちゃん!」


 カウンターの前で、リトが頭を下げた。


「こないだは、ごめん! 俺、勇気がなくて。……ドルガが怖かったんだ……」


「そんなこと、もういいよ。それより、リト。ランク判定を受けてみない? セラさーん!」


「えっ!? なんで?」


「いいから、いいから」


 運ばれてきた魔道具に、リトの手が恐る恐る触れた。白い光が、ふわりとあふれる。


「――判定、ランク3です」


「え」


 リトが固まった。


「お、俺が、ランク3……?」


「あなた、ドルガの代わりに仲間と何体も中型を狩ってたんでしょ? ……それと、これ」


 ミアは掲示板から一枚の依頼書を剥がしてきて、カウンターに置いた。


『旧ガヤルド王国領にて、猪型の中型魔獣二体の討伐。受注はランク3以上。報酬は金貨二十枚』


 前回の討伐は失敗扱いとなり、ふたたび貼り出されていた、あの依頼だ。


「今度は、あなたの名前で受けられるよ」


「お、俺……や……やるっ! やります!」


 リトの目のふちが、じわりと赤くなった。依頼書を胸に抱え、何度もうなずく。


「親父の借金、俺が返すんだ!」


「その意気だよ。……あ、でも無理はダメだからねっ!? 今度担ぎ込まれてきたら、怒るからね!」


「あはは、なんだよそれ!」


 夕暮れの光が、跳ね扉の隙間からカウンターまで伸びている。


 ミアは新しい帳簿を開き、今日の分の記録を書きはじめた。一文字ずつ、丁寧に。誰に褒められなくても、読みやすく綺麗な字で。


 ――ヴェルナさんみたいに、仕事に生きる女ってのも悪くないかも。でも……。


 ――玉の輿だって、まだあきらめてないけどねっ!


「こんにちは、センチュリオの冒険者ギルド、ラグーツ支部へようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 赤毛の受付嬢は、今日もカウンターに立ち、荒くれ者たちを相手に“営業スマイル”を振りまいている。


「受付嬢ミア」を読んでいただき、本当にありがとうございます!

さいらすと申します。


このお話を少しでも面白いと思っていただけましたら、【☆☆☆☆☆】をタップして、★をいただけると嬉しいです!


「記憶喪失勇者」というお話を書いていて、ふと同じ世界の普通の人たちを題材にした短編を書いてみたいと思い、挑戦してみました。


短編と言いつつ、少し長くなってしまいましたが、もし興味を持っていただけましたら、「記憶喪失勇者」もよろしくお願いします。


「記憶喪失勇者」

https://ncode.syosetu.com/n1831mp/

※ミアは2章まで出てきません。その上、本編では名前も出ません。


「近衛騎士キーラ」

https://ncode.syosetu.com/n9724mq/

※近衛騎士であるキーラとその主の幼い辺境伯ソフィアのお話です。


ChatGPTで「ミア」のイメージ画像を作ってみました。


挿絵(By みてみん)




※この小説は執筆に一部、AIを使用しています。

・自身で執筆した文章をAIに改変させているが、再度全て自分で編集・改稿

・自身で執筆した文章の誤字・脱字チェック

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