表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

7.助けてくれ

「ファンス…終わったよ…」


俺はファンスの横に倒れこむ。


勇者スキルが切れたせいか、体に力が入らない。

全身の筋肉が、まるで何百本もの針で突き刺されているように痛む。

腕を少しでも動かすと、痛みがビリビリと走り、肩や背中、脚まで裂けるように痛む。

呼吸するだけでも胸の筋肉が張り裂けそうで、息を吸うのも一苦労だ。


「ブレイブ…俺の手、見てくれ…」


ファンスが小さな声で言う。


痛みで全身が重い中、俺はファンスの手を見る。

手の中には、青色のダイヤが三つあった。


「あいつらにさ、謝っといてくれないか…俺が独り占めしてごめんな、って」


涙が止めどなくこみ上げる。


嫌だ。死なないでくれ。だめだ、死んでいいはずがない。


「自分で渡せよ!なんで死にそうな雰囲気出してんだ!!おい、ファンス!」


「俺…もう死ぬのかな…。でも、話すのもしんどいんだ…頼むよブレイブ。

 二人のこと、頼むよ…良いやつらだから…」


「やだよ…生きて、自分で渡せよ…」


「俺、お前に憧れてたんだぜ…いつも頑張ってるお前を見て、俺も勇者になりてぇなぁとか思ったり、一緒に遊びてぇなって思ったりさ…だから今日、一緒に遊べて嬉しかったんだ…ゴホッ」


話しすぎたのか、ファンスがせき込む。


「もういいって、話すなよ…後で聞くから」


「俺もさ、一緒に旅に出たいなとか考えたりさ…あとさ…」


ファンスの声が止まる。


「ファンス?」


体が動かないから、なんとか首だけ向けてファンスを見る。


「死んだと思った?ハハハ…あぁ、しんどいなぁ…死ぬって思ったら母ちゃんの怒鳴り声も聞きたくなってきた…はは」


「冗談きついって…」


「ごめん、ごめん…お前は…勇者になれよ…俺の自慢の友達なんだから」


「もう話すなって…」


これ以上話したら、本当に……


「ファンス?」


「おい、ファンス?冗談やめろって」


返事がない。怖くなる。

力の入らない体を少し起こして、ファンスの顔を覗き込む。


息をしていない。「ファンス?おい、なんか言ってくれ…怒らねぇから」


カンカン、と音がして、ファンスの手からダイヤの石が床に落ちる。


「ああ…ファンス…やだよ…やだやだ。起きてくれ、起きてくれ…」


あんなに話していたファンスが、もう返事をしてくれない。

なんで…


森でいろんな死を見てきたはずなのに。

死には慣れているはずなのに。

胸が苦しい。息ができない。どうやって呼吸したらいいかわからない。


「ファンス、ファンス、ファンス…起きてくれ、お願いだ…返事してくれ…怒らねぇから…話そう。そうだ、お前と一緒に旅に出て冒険したいって思ってたんだ。俺は勇者に向いてないから、俺は相棒で、お前が勇者だ。元気になったら、俺の父さんに言って二人で修行しようぜ…なぁ、起きてくれよ…なんで返事してくれないんだ…ファンス…」


本当は分かっている。

もう、ファンスは死んだ。


でも、受け入れられない。



 

「おい!こっちだ!」


遠くから声がする。聞き慣れた声。父さんだ。


「あなた!!」


母さんの小さな叫びも聞こえる。


俺たち二人を、見つけたのだろう。


「なんだこれ…」


巨大な蜘蛛の背中に何本もの剣が刺さり、横には血だらけで倒れている子供二人。

そりゃ、父さんだって驚く。


「おい!!ブレイブ!!いったい何が…」


「父さん…ファンスを…母さんに…」


「ナタシア!!俺はブレイブを連れて外に出る!!ファンスを見てくれ!」


父さんが俺を抱え、母さんを呼ぶ。


今にも倒れそうな母さんはフラフラになりながら、俺たちの傍に来てファンスを見る。


「あなた…これじゃあもう…」


母さんは父さんを見て首を横に振る。目に涙が光る。


「母さん…ファンス助けて…」


俺は意識が消えそうな中、必死で頼んだ。


父さんに抱えられ揺られながら、遠くなるファンスと母さんの姿を見る。


母さん…なんで泣くんだよ…


父さんも…なんで泣くんだよ…


俺の意識はそこで途切れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ