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5.スキル使用

目の前に浮かんでいた文字が、こちらに向かって動き出す。


「うわっ!」


さっきまで怒鳴り散らしていたのに、

思わず弱々しい声が漏れた。


迫ってきた文字は、俺の体に触れると――

溶けるように、消えていく。


文字が体の中に入るたび、

今度は別の文字が、頭の中を洪水のように流れ込んできた。


〈肉体強化〉

身体能力を向上させる能力。


〈視覚強化〉

遠距離・近距離を問わず、対象を鮮明に捉える。


一気に流れ込んだ情報に、頭が悲鳴を上げる。

視界が揺れ、頭痛でくらくらする。


〈自動回復〉

損傷した部位を自動で修復する。


その文字が頭に入った瞬間――

体が、軽くなった。


……いや、気のせいじゃない。


さっきまで血だらけだった両手が、

淡い緑色の光に包まれ、次の瞬間、綺麗に消えていた。


痛みもない。

頭痛も、嘘みたいに消えている。


「……これが……勇者の、スキル……」


最後の文字が消え、頭の中が静かになる。


代わりに、

体の奥から、力が溢れ出してくるのがはっきり分かった。


初めて使うはずなのに。

どう使えばいいか、何をすればいいか――

なぜか、全部わかる。


「……勇者スキル、使用」


〈勇者〉

敵に対する恐怖心を無効化。

身体能力を大幅に向上。

攻撃力が通常時の100%増加。

覚醒状態に入りやすくなる。


※注意:使用後、意識消失の可能性あり。

※敵からのヘイトが集中します。


恐怖が、消えた。


いや――

恐怖を「感じなくなった」。


「〈想像〉……〈錬成〉、使用」


〈想像〉

あらゆる場面において、極めて高い想像力を発揮する。


〈錬成〉

想像したものを、現実の物質・存在として具現化する。


頭に浮かんだのは、

いつも家で見ていた――父さんの剣。


父さんは、剣を磨きながら、よく昔話をしていた。

ドラゴンを斬った話。

“本物”の勇者と剣を交えた話。


そのたびに、俺は思っていた。

――勇者になんて、なりたくない。


ドラゴンと戦う。

村を守る。

魔王を倒すと誓う。


そんな人生、羨ましくもなかったし、

むしろ、避けたい未来だった。


……それでも。


剣をすぐに思い浮かべられたことだけは、

皮肉にも、父さんに感謝しないとな。


右手に、確かな重みがあった。


見慣れた父さんの剣。

ドラゴンの形をした鍔は金色に輝き、

赤い宝石の瞳が、不気味に光っている。


剣身には一本の金色の線。

岩でも、ドラゴンでも――

一撃で断ち切れそうな、異様な鋭さ。


どう見ても、勇者の剣だ。


今まで触れたどんな剣よりも、手に馴染む。


……俺の体が、戦えと言っている。


恐怖心は、ない。


「……覚醒」


スキルのせいか。

言葉が、勝手に口から零れた。


目が、熱い。

体も、内側から焼けるように熱い。


目の前の魔物を見た瞬間、

頭の中で、声が響いた。


――殺せ。


「殺せ」


――魔物を、殺せ。

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