第56話
2つのエンドのどちらかを選ぶことができなかったので、両方を書くことに決めたんだ。
巨大にしか見えない手が次第に近づいていた。
神々の王様の足音がカウントダウンのように響いていた。
僕の記憶の刑死のカウントダウンだった。
今やまるで血の川に見えたカーペットに向かって頭を下げた。
これから起こることを受け入れるかのように目を閉じた。
近づいてくる彼を見る荷が耐えられなかった。
すまない愛子。
弱くて無力の僕を許してくれ。
今すぐ君のことを忘れていてしまう。
さよなら......
神々の王様の手が僕に額に届いて僕の記憶を永遠に消す寸前、玉座の間の扉が耳をつんざくような音とともに勢いよく開いた。
廊下からさわやかで気持ちのいい冷たい風がふっと吹き込んできた。
それで、彼女が現れた。
死ぬほど会いたい愛子が僕の目の前にいた。
胸がいっぱいになって、一瞬息が詰まりそうになった。
愛子は息が切れて呼吸は荒くて途切れ途切れだった。額には汗まで流れているのも見えた。
これは主人公が結婚式に割って入り、ヒロインを救い出すという、ラブコメでよくあるシーンを思い起こさせた。
今は、その役割が逆だったけどな。
軽やかだが、決意に満ちた足取りで僕たちに歩いてきた。
「愛子⁉なん何でここに?部屋を出ずに休むように言っただろう!」と、神々の王様は驚いて叫んだ。
今まで厳しかった彼の声は、今や心配そうに変わっていた。
「もしシンの記憶を消したら、絶対に許さないから。」と、彼女はぴしゃりと言いながら、彼の前に立った。
それを聞いて王様の表情が固まった。
膝をついたまま、僕は愛子を見つめた。彼女はまるで女神のように威厳があり、称えられるにふさわしい存在に見えた。
ようやく僕の方を向いたが、無表情で僕の顔をじっと見つめた。
僕のせいで死にかけたことを恨んでいるのか!?
ちょっと落ちづいて真一。僕の記憶が消えさせたくなくて、この力を使うことを提案したのは愛子だったし。
でも、思い出すことで苦しむためだったのかも。
この脳内のネガティブなやり取りがこれ以上悪くなる前に愛子が微笑んで僕の前にうずくまった。
「久しぶりだね、ダーリン。」
何度もイライラさせられ、誤解を生んだその言葉が、今ではまるで解放の呪文のように感じられた。
泣き崩れて、愛子を抱きしめた。
また彼女がいなくなってしまうのではないかと不安になりながら、強く抱きしめた。
「す…すごく…会いたかった…」
「私も会いたかったわ」そう言うと、彼女は僕の抱擁に応えて、まるで子供を慰めるように左手で背中を撫でた。
「もう…もう二度と会えないと思っていた…」
「今、ここにいるからあんしんしてね。」




