第46話 前編 絶望①
「へっ!?」
「愛子って誰?」
「何言ってるの母さん。愛子は愛子だろう。」
「学校のお知り合い?」
やけにいやな予感がしたので椅子から勢いよく立ち上がった。
「どうしたのいきなり?」
急いで階段へと駆け寄って、一気に登ったせいで転んでした。
肘から少し血がにじんでいたのを気づかなく、廊下の奥の部屋へと突進して、ドアを開け放った。
恐れていたことが現実となった。
愛子の部屋だったはずなのに、元の状態に戻っていた。
ベッドはもうなく、代わりに古びた埃だらけの段ボール箱がいくつも積み重なっているだけだった。
呼吸がうまくできずに、氷のように冷たい水が血管を流れているような感覚に襲われた。
有り得ない!!愛子は一体どこに行ったんだ?
階段を駆け上がったときと同じ速さで駆け下り、息をつく間もなく靴を履いて、自転車に飛び乗り学校へ急いだ。
普段は歩いて通っていたが、今は一瞬たりとも無駄にできなかった。
学校に着くと、自転車をその場に置き去りにした。
息を切らし額に汗をにじませながら教室へと疾走した。
教室中の視線が一斉に僕に向けられたが、全く気に留めなかった。
左右へと何度も見回っても、愛子の姿がどこにも見えなかった。
「何があったの?」と、心配そうに桐乃が尋ねた。
だが、反応しなかった。
彼女が僕に話したことさえも気付かなかったから。
愛子を必死に探し続けていた。
桐乃は僕に近寄って、左手を僕の肩に置きながら、もう一度話しかけたので、やっと桐乃の存在に気づいた。
それであちこちを見回すのをやめて、彼女の両肩を力強くつかんで、目を見つめた。
僕の行動のせいで桐乃は驚いて、一歩後ずさりして小さな悲鳴を上げて、目を大きく見開いた。
「桐乃、愛子がどこにいるか知ってるのか!?」と、一気に質問した。
「えっ…真一くん…愛子って…誰?」
その言葉を聞いて、まだ握っていた肩の力をそっと緩めた。
まるで全ての力が抜けてしまったかのようだった。
ありえない! どうして誰も彼女のことを覚えていないんだ!?
まるで存在そのものが完全に消されてしまったかのようだった。
愛子、一体どこに行ったんだ?




