第44話 後編 やっと気づいた ①
「もう、私に話しかけないで!!」
いつも愛情を込めて話してくれる彼女が今カミソリのように冷たく、鋭い口調で言った。
普段は温かく接してくれる彼女とは対照的に、冷たい視線と嫌悪感に満ちた表情が、この言葉の衝撃をさらに強めていた。
「愛子、なんで!?もし何かやらかしたなら、言ってくれ!」
僕の顔は苦悩で歪んでいた。
心の奥では、理由がわかっていた。
ただ、それを認めたくなかった。
認めれば、自分が無力だということを意味するからだった。
「今、好きな人がいる。ちゃんと自分を大事にしてくれる人。拒絶しない人。」
たぶんそれが彼女の本当の気持ちだったのだろう。
ずっと一人で生きてきた彼女は、
他人の人生や幸せを与える彼女は、
本でしか垣間見ることしかできなかった彼女は、
僕に近づこうとするたびに、僕はただ拒んでいただけだった。
ただ、絶えず愛子を遠ざけていただけだった。
たとえ距離が大幅に縮まったとしても、彼女との間にある種の壁を保っていた。
彼女と繋がることを恐れていた。
拒絶されるのが怖かった。
再び傷つきたくなかった。
そのせいで、きっと彼女が苦しんだのだろう。
そう思うと、罪悪感と後悔の波に押し流された。
「お願いだ、どうか正気に戻ってくれ。」
懇願しても何も変わらないことを分かっていた。
「お願い……」
「私の好きな人を馬鹿にした奴と話す理由なんてないでしょ。オタクだからって見下して、楽しんでたんでしょ?」
彼女はもう、自分の支配下にあった。
僕が何を言おうと、結果は変わらない。
彼の復讐の計画は、完全に成功してい
たのだ。
何もできない無力感と、彼女たちの決断が理不尽だと分かっていることはたまらなっかった。
「だから、彼と一緒に暮らす。」
な、なに!?いや!いや!いやだああ!!!
行かないで!置いて行かないで!そばにいて!
頭の中では考えがぐちゃぐちゃに渦巻いていたが、口からは一言も出なかった。
愛子を行かせたくなかった。
しかし、僕ができるのは、無力感に苛まれながら地面を見ることだけだった。
一方的な会話に意味を見いだせなかった彼女は、廊下の出口へ向かって歩き出した。




