第40話 前編 楽しいことさえも、いつかは終わりを迎える ④
人生にはたくさんの矛盾や理解できないことがある。
だが、今目にした光景はそれ以上に驚くべきもので、思わず言葉を失って、その場に立ち尽くしてしまった。
愛子が僕の目の前で手を振っても、まるで石のように動けなかった。
目の前に広がる光景に、完全に固まっていた。
高校の門をくぐろうとしたとき、昨日イジメていたオタクと女子のひとりが、手をつないで歩いているのが目に入った。
正確には、彼女が彼の腕にべったりとくっついていた。
もうツンデレのレベルを超えたどころの話!
いったい何があったんだ!?
誰か説明してくれ!
僕は桐乃の方に目を向けた。彼女も一緒に通学路の終わりを通って、この光景を目撃していた。
僕の驚きの視線を見た彼女は、昨日イジメしていた女子のひとりだと確認させてくれた。
翌朝も同じ光景だったが、昨日の女子に加えて、別の女子がもう片方の腕にべったりくっついていた。
えっ!?!?
「愛子、この前話したアイドル、あそこにいる子ではないのか?」
「うん、そうだよ。」
「男嫌いって言わなかったっけ?」
「うん、なんで?」
「男の腕にべったりくっついてるけど。それにオタクだぞ!ラブコメでは、超人気なアイドルがオタクとか社会階層の低い男と付き合うって話よくあるけど。それにしても…!」
「問題がどこにあるのか分からない。」
「こういうこと言える立場じゃないっしょ!」と、桐乃が言い加えた。
確かに、俺はちょっとオタクで、愛子が僕の腕にべったりくっついていた。
「愛子、これはお前がやったんだろ?」
他に説明のしようがない。まるで神の介入でもあったかのようだった。
「何もしてないのに、なんでいきなり私のせいにするのよ。」
「真一くん、どうやって愛子が何かした?あの子はキューピッドじゃないよ。」
もし桐乃はこの馬鹿女神の正体を知っていたら…
・・・
「二度あることは三度ある」って言葉、知ってる?
まさにその通りのものを目にした。新しい女子がハーレムに加わったのだ。
だが、今回本当に奇妙なのは、それが桐乃だったということ。
普通なら、ナンバー1とナンバー2は密かに恋愛関係にあるんではないかと思うところだが、桐乃は全く気にしていなかった。
いや、昨日の夜に何か驚くべき出来事があって、彼に惹かれたのかもしれないが、それもほとんどあり得ない。
少し安心したのは、今回驚いているのが僕だけではなかった。
向日葵も、完全にショック状態だった。




