第39話 前編 楽しいことさえも、いつかは終わりを迎える ③
外に出た瞬間、蒸し暑さの波に襲われた。
「なんで自販機は隣の建物にあるのか!?教室の窓を閉めておいてよかった。開けてたら蒸し死んでたかもしれない。涼しい風さえもすらない!」
右を見やると、桐乃はいつも通り、汗ひとつかかずに涼しい顔で歩いていた。
「どうやってこんな暑さで生き残れるの?」
「じいちゃんの道場はここよりマジ灼熱なんだから平気、平気。」
時間が経つにつれて、彼女はもう人間を超えているんではないかと思い始めた。
まるで僕の考えを見抜いたかのように、彼女は拳を振り上げて威嚇した。
「暴力は僕ではなくて、あいつらに向けるべきだろう。」
約二十メートル先、自販機の近くを指した。
そこでは、典型的なイジメの光景が見えた。
スポーツ系の男子数人と、ちょっと人気のある女子たちが、眼鏡をかけた男子の周りに集まっていた。
その眼鏡男は膝をつき、虚ろな目で地面を見つめていた。
「おい、オタク! 親に礼儀を教わらなかったのか!? 話しかけられたら人の目を見ろって言われたことないのか!?」
男子のひとりが、優越感たっぷりに言って、後ろの女子たちはくすくす笑っていた。
「こんな日に、唯一の涼しい場所のそばで誰かをイジメるなんて、賢くないぞ。」
「えっ!? お前、文句あるのか!?」
彼は、誰かが現れたことに驚いていた。
「…今日は本当に暑い。」
予想外の落ち着いた口調で答えた。
別に、こいつらに立ち向かえる自信があるわけなかった。
全くなかった。
でも、たとえ一撃をくらったとしても、僕には大量破壊兵器がついていることを知っていた。
彼は僕に近づいても、目をそらさなかった。
彼の威嚇が効かないを理解して、彼は小さなグループに軽くうなずき、立ち去るよう合図した。
まったく、チワワみたいな連中だ。よく吠えるくせに、こっちがちょっと唸るとすぐに引き下がる。
大体のこいつみたいな連中はそんなもんだ。
もしかしたら、僕は有名になって、先生と委員長の件以来、ラビコメの展開を次々と打ち破ってきたおかげでカリスマ性も上がったのかもしれない。
だが、その幻想は一瞬で打ち砕かれた。
なぜなら、視界の端に目をやると、桐乃が近づいてきていて、すぐに殴ろうとしているのが見えたからだ。
彼女を見た瞬間、あいつらは怖気づいた。
僕は膝をついた男子に手を差し伸べた。
しかし、彼は強く僕の手を払いのけた。
「お前の哀れみも助けもいらない。なめるなよ、このリュウジュ!」
その声は怒りに満ち、毒々しい口調だった。
僕たちが何もしないって分かってるから、ああやって振る舞うんだろうか?
「好きにしろよ。」
肩をすくめてそう答えた。
彼は何事もなかったかのように立ち上がり、ゆっくりとした足取りで歩き去った。視線は地面に向けたまま。
「手伝ったのに、これで感謝のつもり!?」
「落ち着け、桐乃。で、何を飲む?」
自販機に向かいながら、殺人を犯す前に、気を逸らすためだった。彼女の注意をそらした。




