第31話 中編 男たちの地獄 ③
「はあ!戻ってきた、真一くん!トイレに行ったと思ったんだ。なんで店にまだいたの?何か買った?」
返事として、握りこぶしにした手を桐乃の方に差し出した。
「え?なに!?」
彼女は僕の行動に困惑し驚いていた。
でも、僕が動かなかったら、彼女は僕の手のすぐ下に自分のを差し伸べた。
持っていたものを放すと、ちょん、と音を立てて彼女の手のひらに落ちた。
「ブレスレット!?」
彼女は目を見開いた。
よく見えてる。眼科に行かなくても大丈夫だと皮肉を言ってやろうかとも思ったけど、今はそんな時ではないのを分かった。
生き残りのためにな。
「このブレスレットを見たとき、君に似合うと思った。向日葵さんを手伝ってくれたお礼と、さっきのことのお詫びに。」
桐乃の頬は少し赤らめた。
彼女は口をわずかに開けたが、声は出なかった。
「ほほう、やるじゃねえか、坊や!今度は桐乃に粉をかけるつもりか。でもね、彼女の心を落とすにはそれだけじゃ足りないよ。」
向日葵は愛子と目を合わせて、ニヤリと笑いながらそう言った。
その一言で、桐乃の頬はさらに赤く染まった。
これで黒歴史がまた増えた。
僕がキモいと思っているに決まってるだろう!
やっぱり、このブレスレットを買うのは間違いだった!!!
アクセサリーの選択には迷わなかったけど、買うかどうかでちょっと悩んでいた。
誰かに何か言われる前に、僕はあっさりと、欲しくないなら捨ててもいい、と彼女に言った。
平静な表情を浮かべていたが、心の中では叫んでいた。
「いや!!ちゃんと大事にする!」
彼女は思いがけない勢いで、僕をじっと見つめた。
「…ありがとう…マジ。」
目はあちこちを彷徨いて、アメシストみたいな紫色のビーズのブレスレットを、緊張しながら弄る音が静寂を破った。
「でも、次は本当に肩を外して、手も折ってやる!」
彼女は突然何かをもらって照れているのをごまかすように言った。
意図せずにツンデレを生み出してしまったんじゃないかとちょっと心配した。




