第22話 一難去ってまた一難の逆襲
僕の前に立っていた愛子をしばし黙って見つめていた。
「なんでこれをかけているのか?」
首をかしげて、彼女はわからないふりをした。
「なんで眼鏡をかけているのか?」
「ああ、これ!偽装ってこと。」と、彼女は満足そうに答えた。
「偽装って?そんなこと要るのか?」
「気づかれないようにするために決まってるでしょ。」
正直、この世界に送られたのは僕だけではない可能性に興味をそそられた。
「他の人もこの世界に送った?」
彼女は向こうの席に座って、頭を左右に振ってそうではないことを僕に分からせた。
「では、眼鏡をかける意味はない。だって、僕だけがお前のことを知ってるから。それに、一目で気づいたので、お前が言う偽装なんて全然役に立ってない。」
「全然わかってない。変装するのって楽しいんだもん。」
もう一口飲みながらなんでこの世界に来たのか尋ねた。
「この前、私がこの世界の外から見てるって文句言ってたでしょ。だから、来ちゃった。これで満足?」
目をキラキラさせながらテーブル越しに僕に身を乗り出した。
「僕の記憶が正しければ、お前に来てほしくないって言ったはずだったけど。」
「ちっ、つまんないー。」
彼女は手をテーブルの縁について、腕を伸ばしながら、テーブルから距離を取った。
席の奥に体を沈めたとき、この面倒くさい女神がため息をついた。
その後、僕を無視するふりをしても、それは長くは続かなかった。
「ところで、彼女ができたの?」
「僕を監視しているからできなかったのを知ってる。このストーカー。」
「ストーカーじゃない!!」
「見えないところで僕の一挙一動を見るのはストーカーの行為しか見えないけど。」
「しかし、この世界に送ったのは私だから、ノーカンだ。ノーカン。」
「ストーキングに加えて誘拐もやってしまった。」
「ストーカーって誘拐はしないでしょ。」
「確かに、それはヤンデレの行為の方に見える。」
「ってことは、ダーリンのことが好きだって言いてい…」」
「いいえ。」
この話の流れが全く気に入らなかったので。
「私と付き合いたかったなら、この世界で彼女なんて要らないってもっと早く言えばよかったのに。」 と、彼女は茶目っ気たっぷりに続けた。
「何を言っても無駄だ。」
「うん、無駄だね。」
この生意気な女神は満足な顔をしていた。
「同意するな!」
「電話した以来聞きたかったんだけど、なんでそんなしゃべり方?」
「しゃべり方って?」
「初めて会ったとき、古風な話し方をしていただろう。」
「あ!これはね、初対面のときにちょっと格好つけたかっただけなの。もっと神っぽく見せたくて。で、どう思った?悪くなかったでしょ?」
「…」
「向日葵ちゃんとの絶好のチャンスを逃したね。」
「それってどういう意味?」
僕はケーキをもう一口食べようとしたところで、スプーンを口の前で止めた。
もう存分味わえない。
「もし手伝わなかったら、彼女と付き合えるかもしれない。慰めて、もっと一緒に過ごして、そしたら彼女はダーリンに恋してたかもよ。」
「そうやったら弱ってるときに利用するだけ。それは酷すぎる。」
「それはただの些細なことよ。」
彼女は手で軽く払うようにして、まるで何でもないかのように僕の言葉を否定した。
「では、向日葵さんに直接言ってみる。」
「わかった、今直ぐやってみるよ。」
「えっ!?」
「ちょうどいい、彼女ここにいるし。」
「何言ってるのか?彼女はここにいない。」
返事する代わりに、愛子は窓の向こうを指さした。
そこには向日葵が目を大きく見開いて、口をぽかんと開けて立っていた。
ああ、もう…最悪の展開だ!
僕たちが見ているのに気づくと、彼女は一目散にテーブルに駆け寄った。
「しん……真一くん…彼女がいたの!!?なんで何も言わなかったの!?」
「彼女がいないから。」
「ダーリン、酷いよ…」
愛子は目をこすって、まるで涙をぬぐっているかのように悲しそうなふりをした。
「ほら、この子を見て!噓をつくなよ!!」
僕は本当に休む暇もない。




