第20話 後編 一難去ってまた一難 ①
翌日、目覚めるとまだこの世界にいたんだ。
転校生と幼馴染くんの恋愛を阻止しても、それだけで元の世界に戻るにはまだ足りなかった。
なので、僕の生活を普通に送り続けることにした。
教室に着くと、委員長は相変わらず香苗先生を手伝っていて、桐乃は自分の席で一人でスマホをいじっていた。
変わらない事があると思いながら自分の席に座った。
「お…おっは~……」
聞いた挨拶は想像の産物だったと思って、夢を見ているのかと思った。
思わず顔を上げて、聞こえたと思った声の方向へ視線を送った。
すると、桐乃が机の高さくらいに控えめに手を上げて、小さく振っていたのを見た。
「お…はよう?」
正直、彼女の行動に驚いた。
確かに一緒に向日葵を手伝ったり、先日ノートも貸してくれたりしたけど、僕に挨拶してくれるのはこれが初めてだった。
「えっと…向日葵ちゃんを手伝ってくれてありがとう。マジに恩に着るよ。」
「いや、そんなことないよ。僕はただ自己満足でやっただけ。」
二人の間に一瞬の沈黙が訪れたので無言のまま彼女の顔を見つめた。
僕の視線せいで、そして自分にとっては普段と違う行動に少し照れながら、桐乃は顔をそらした。
そっか、彼女は暴力的ではない時に結構可愛い。
普段通り巧みにメイクをしているにもかかわらず、彼女には隠しきれないクマがあるのが見えた。
「寝不足か?」
「うん、向日葵ちゃんは一晩中電話してきたんだ。マジで嬉しそうで、いつもより元気いっぱいだったよ。」
「お疲れ様…」
噂をすれば。
「おっはよー皆!!」
教室の入口に目を向けると、向日葵と京介を見た。
「朝から仲良しだね〜、このラブラブカップル。」
「俺の彼女をからかうのはやめろよ。」 と京介が即答した。
そのいつもと違う答えに、教室の全員が驚いた。
この平穏な生活も、悪くないかもしれない。
少なくともそう思った。




