第16話 前編 悟ったことと計画変更 ③
先生はすぐ前の机の椅子を回して座って、僕に向き直った。
「何があったのを教えてくれたら、もしかしたら手伝ってあげるかも。」と、優しく穏やかな声で微笑みながら先生が言い続けた。
もう案が浮かばないから、試してみても損はなかった。
「知り合いの女子のことなんだけど、彼女は好きな人がいる、そして僕のせいでその人は彼女が僕のことを好きだと思ってしまった。何をやっても誤解は解けないようだ」
「小西くん、あなたの友達の片思いのことならどうしてそんな表情しているの?どうしてそんなに辛そうなの?」
なんで?
関係ないはずなのに、なんで僕はこんなに苦しいんだ?
罪悪感があるから?
僕のしたことが十分ではなかったから?
いや、僕の痛みは別のところから来ていた。
今になって気づいたけど、僕はどこかで自分の過去の失恋を向日葵に重ねていたんだ。
もう忘れたつもりでいたのに、まだ心の奥では苦しんでいる。
ふさわしくない人間なんじゃないかってまた思ってしまった。
向日葵を助けられないのは、まるで二度目に振られたみたいだった。
それに気づいた瞬間、思わず苦笑してしまった。
本当に情けないなあ、僕は。
「何か分かったの?」
「はい。ありがとうございます。先生のおかげで、僕が過去にとらわれて生きていたことに気づけました。気づいても今からどうすればいいのか全然わかりません。」
「かなり本を読むと聞いた。恋愛小説とかは読むの?」
予想外の質問に、僕は思わず眉を上げた。
それがどう役に立つのか、全く見当がつかなかった。
「えっと…はい、読みますけど。」
「それを参考にして、問題を解決してみたら?」
「でも、現実ってそんなふうにいかないです!ラブコメなんて現実的ではありません。」
「そうね。物語は現実じゃない。でも、学べる教訓がある。現実を参考にしているから、良い行動や悪い行動の結果を少なからず示してくれる。だから、故に自分の行動をの指針になれるはずよ。」
これまで、僕はラブコメをただの恋愛の誤った描写だと思っていた。
でも、視点を変えれば、ラブコメは「こうしたら失敗する」という例も示してくれる。
つまり、避けるべきモデルを教えてくれているんだ。
「では、ラブコメの他の面に注目して、状況を解決するヒントを見つけろということですか?」
「そう解釈してもいい。きっと答えは見つかる。でも、阿瀬川さんがうまくいくかどうかは、あなたのせいじゃないから、あまり自分を責めないでね。」
向日葵の名前を言った記憶はないが、先生は察していた。
すごく観察力がある。
話が終わってから先生は立ち上がって、ドアの方へ向かった。
「先生、ラブコメは好きですか?」
「意外ですか?恋愛漫画を読むのは似合わないと思いました?」と彼女は立ち止まりながら聞いた。
漫画という言葉を言わなかったけど。
彼女もオタクか!?
「ちょっと驚いたけど、先生には似合わないとは思わなかった。口出しする立場ではない。逆に僕みたいな男がラブコメを読むのはおかしいですか?」
「おかしくないよ。」
これは、先生と交わした最後の言葉で僕たちは黙ったまま学校を出た。
今夜、やっと一つのことがわかった。
もし幼馴染を支えるキャラになれないのなら、悪役を買う。
最低のクズになる。
これが「幼馴染をNTR大作戦」の始まりだった。




