第10話 中編 デートの準備と世話が焼ける向日葵ちゃん ①
駅の出口の自転車置き場で自転車をロックしていると、周りの歩行者や車の絶え間ない騒音が耳に入ってきた。
この人ごみと行き交う人々でめまいがしそうで息苦しい。
早く静かな場所を見つけて座らないと。
ちょうどバス停のそばにベンチがあった。
もし愛子がここにいたら、「これが引きこもりってやつだから」とか言われるだろう。
確かに家でのんびりして本を読みたかったけど、今は極めて重要な任務を遂行しなければならない。
「お待たせ、真一くん!どうしてきょうくんとのデートの前に会いたかったのか分からない。それに、なんであんなに早く会いたがったの?」
向日葵の声を聞こえて、彼女の方へ振り向いた。
心配していた通りだったのだから、この戦略的なミーティングを予定しておいて正解の判断だった。
彼女を見た瞬間、思わず息を止めた。
向日葵は超美人で、素敵な服を着ているから息をのんだと思われるかもしらない。
だが、真実は全く違った。
オーバーオールに身を包んで、両手首にこれでもかというほどのブレスレット、さらに首には大量のネックレスをぶら下げていたのだ。
メイクはひどかったとしか言いようがない。
まるで顔面から絵の具パレットにダイブしたような有様だった。
流行の知識はほぼゼロだけど、僕でも何かがおかしいことはわかった。
いや、最新のファッションなのかもしれない。そうに違いない。でないと、こいつは本当にどうしようもないやつだな。
残念だけど、通りかかる人たちは、例外なくみんな目を見開いて振り返った。。
まるで動物園で珍しい種類と同じ目で向日葵をガン見していた。
どうしてこんな大惨事になったんだ!?
愛子がこの件に関係ないことを願った。
僕は眉をひそめながら目を閉じてこめかみをマッサージした。
「大丈夫、真一くん?頭痛いの?」と、クラウンのような格好の向日葵が心配そうに尋ねた。
「まだ痛くないけど、もうすぐ頭痛ができる気がする。」
「どうして?何かあったの?」
ため息をついた。
「本当にそんなこと聞くのか?自分の格好見たか?」
首をかしげて向日葵はこちらを見ていた。
君は可愛いと思うかもしれないけど僕には効かない。
特に今、とんでもなく滑稽にしか見えない。
「私の服装のどこがダメなの?」
今度は大きなため息をこぼした。
もういい、こいつは救いようがない。
この程度、 こいつはもうピエロではなくサーカス全体だ。
「こうなるって知った…」
そう呟きながら、ジーンズのポケットに手を突っ込み、スマホを探った。
向日葵はそう見ると、まるで金魚のように口をぽかんと開けて、言葉が出なかった。
電話の相手が出るのを待っていると、向日葵は我に返った。
「しん…真一くん…だ…誰を電話かけるの?」
奇跡を見たみたいに言わないでくれ。
相手に連絡しなければ、向日葵のデートは悲惨になる。
向日葵の質問に答える代わりに電話に出た相手に挨拶した。
「桐乃、暇か? 」
「へえ!なんできりちゃんに…」
「少し静かにしてくれ、電話中だから。」
そう言うと、向日葵はすぐにふくれっ面になった。
まあ、その方が電話はしやすい。
率直にいうと、周りの騒音だけでも集中するのが大変なのに、こいつまで騒ぎ出したら手に負えない。
これはお前のためにやってるんだから、少しは協力してくれよな。
「…ああ、もう完全に災害だ…。今は駅近くのバス停にいるから、すぐ来てくれ。
…もう向かってくる? 助かる。 君もこうなるって分かってたのか?…なるほど。じゃあ、後でな。」




