天使特区
しいな ここみ様主催、朝起きたら企画参加作品です。朝起きたら学校は侵略を受けていた。さらにバトルはつづくw
朝起きたら今日も平凡な日が……とはならなかった。午前中サボるつもりだったオレのゴツい腕時計から【天滅】の呼び出し音が鳴った。【特区】が発生したらしい。場所は……よりにもよってうちの学校かよ。
制服に着替えて【特区】に転移すれば、学校では天使が降臨した八丈島先生が恍惚の表情で光の両刃剣を振るっていた。
「なんでオレなんだよ、先生ぇ!」
『汝、富を貪ることなかれ』
ブランドもので身を固めた社長の息子の金城が、胸を刺され血を吐きながら光となって消えていく。
「やめて! 二股していたことは謝ま……」『汝、姦淫することなかれ』
何人もの男に貢がせていると噂のある御堂先生も。
「く、来るな! ぼくは何も……」『汝、偶像を崇めることなかれ』
アキバ通いのオタクな三宅も。
いま人類は神を名乗る正体不明の何かに侵略を受けていた。日本でもすでに3割が神が支配する聖域と化している。それに対抗すべく政府は【特区】を作り出した。神の先兵である天使が降臨すると同時に、その地域を【特区】として空間を封鎖し隔離する。そこに派兵されるのがオレたち【天滅】というわけだ。
「た助けて、ああ神様!」『汝、神の名をみだりに唱えることなかれ』
清楚なメガネ委員長の小宮も光となって消滅した。……いや、こじつけにもほどがあるだろう、先生様よ。
『おや、遅刻ですか、戸河内卯金くん。後で生徒指導室に来なさい』
まだ半分人間かよ、やりづれえな。オレは大型のバトルナイフを両手に呼び出した。いくぞ、先手必勝だ。
光の剣を十字受けしたオレに八丈島先生が話しかける。
『さて、あなたもここで懺悔なさっては? 悔い改めるなら天国に送って差し上げますよ』
うるせえ。オレは密教暗黒大陸じゃがたら派だ!
『汝、他の神を崇めることなかれ。まだ罪を重ねるつもりですか?』
やかましい! オレは距離を取ってバトルナイフを【悪抹】に変形させる。天使を殺すならやはり悪魔だろう。バトルナイフは大鋏に変わった。ハンドルレバーを引くと鋭い音がして刃が開閉する。
『虚仮おどしですか? 少々がっかりです。では……死になさい!』
八丈島先生が再び攻勢に出る。オレはそれを凌ぎながら反撃のチャンスを待っ……早くしろよ、銀蝶!
オレたちは再び鐔競り合いの体制になる。大鋏から刃こぼれの嫌な音がする。
そのとき八丈島先生の頭を一発の弾丸が撃ち抜いた! 脳漿がオレに降りかかる。うげぇ!
ともあれこれで、オレたちの勝利……なんだけどな、お前いつも遅ぇんだよ! オレだけ汚れ仕事押しつけてよ!
「何よ。一発で仕留めなきゃアンタも死んじゃうのよ? 対戦車ライフルで連射なんてアタシ無理だし」
パートナーの富士ヶ嶺銀蝶が時計越しに応える。ボルトアクションの薬莢の排出音が後ろで聞こえる。
「そ、それにね? いつも悪いとは思ってんのよ? まあ、お昼はアタシのおごりってことで! そこはひとつヨロシク」
……まあ、いいけどよ。だったらドリンクバーもつけろよ。