表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/16

怒りが爆発しました

「ルイーゼ!?」


 フィル様は、翡翠の瞳を大きく見開いた。私は怒りを隠せず、彼から顔を背ける。


「何故貴女がこんなところに来ているのだ! そんな、男に媚びるような服まで着て——」

「ちょ、隊長。余計なことを言わない方が……」


 ジョエル様が慌てたようにフィル様の言葉に口を挟んだが、既に遅かった。


(……ほんとに、フィル様がこんなに酷い人だと思っていませんでした)


 妻がこんな露出の多い服を着ていることが不満なのだろう。それは分かるけど、最初に言うことではないと思う。

 私の怒りに油を注いでいるようなものである。


「貴方が、こんなお店に来ていらっしゃるから! 私は、浮気の証拠を掴むために働いたのです!」

「働いた、だと? 誰かに体を売ったのか?」

「……貴方には関係がないでしょう」


 働いたのは今日一日だけで、料理を運ぶくらいしかしていないが、詳しく説明するのは面倒だった。わざとぼやかして言うと、フィル様は怒った獣のように瞳孔を引き絞って、強い力で私の肩を掴んだ。


「何するのですか、離してください!」

「貴女は俺の妻だ。俺以外がその体を知っていることは、許されざることだ」

「その妻を止めたいと言っているのです。貴方様は、そこのアグネスさんと仲良く暮らしたらいいじゃないですか。私は邪魔にならないよう、屋敷を出ていくので」


 フィル様の手から逃れようと体をねじるが、彼の手はびくとも動かない。それどころか、彼の瞳はどんどんと暗く沈んでいく。


「離婚はしない。この結婚は、俺達だけでどうこうできるものではない」

「……それなら、お金をください」

「金?」


 訝し気に顔を顰めた、私よりも高い位置にあるフィル様の目をまっすぐ見つめながら、私は大きく頷いた。


「そのお金で、私も好きなことをします。貴方様が好きなことをしていらっしゃるように、私も好きなことをするくらい、許していただきたいです」

「金ならいくらでもやるが……俺は、好きなことをしているわけではない」

「では、嫌いなことをしていらっしゃるのですか?」

「ああ、嫌いなことだ。仕事でなければ、こんな店に来ることはない」


(仕事、ですか? そんな言い訳を……)


 私はその言葉を信じられず、確かめるようにジョエル様を見た。彼は苦笑いを浮かべながら、頷く。次にアグネスさんを見た。壁に同化するように立っていた彼女も、苦笑いを浮かべながら、頷いた。


「…………」

「…………俺は浮気などしていないと、言っただろう」


 私は、体から力が抜けてその場に崩れ落ちそうになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ