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旦那様と対面します


「ほ、本当に大丈夫なのですか?」

「大丈夫ですよ。ま、俺は怒られるでしょうけど」


 ジョエル様に連れられ、私は二階の宿屋に来ていた。多分、傍から見たら私がジョエル様にお持ち帰りされていると思われているだろう。

 二階に行く前、アンナさんが心配そうに私に話しかけてくれたので、ちゃんと事情は説明しておいた。


「部屋を間違えてしまったら、大変なことになってしまいます」

「間違えませんよ。隊長はいつも同じ部屋を選んでいらっしゃいますから」


(いつも同じ部屋を……やっぱり、フィル様はいつもアグネスさんとそういうことを……)


 私は目を伏せて、ただただジョエル様の後をついていく。彼は時折私のことを気にしながら、迷いなく一つの部屋の前に立った。


「この部屋です」


 私は緊張しながらブローチを握りしめる。ジョエル様がちらりと私を見たので、ごくりと喉を鳴らして頷いた。

 ジョエル様が扉を三回ノックして、勢いよく開けた。どうして鍵はかけられていないのか、中から開けられるのを待った方がいいのではないか、と色んな思いが湧いてくるが、何の迷いもなくジョエル様は大きく扉を開けた。


 ソファーに座ったフィル様を、後ろから抱きしめているアグネスさんの姿が、真っ先に目に入った。

 フィル様は、翡翠の瞳を見開いて、こちらを見ている。



 カシャリ。



 私は無言でボタンを押した。


 空虚なシャッター音が、凍った部屋の中に響いた。




「……ジョエル。何故来た」


 フィル様は、人を射殺せそうな程鋭い瞳をしてジョエル様を睨む。アグネスさんは、彼から離れて壁に背を預けて立った。


「隊長~よりにもよって、最悪なタイミングで来てしまったようですね」

「お前が勝手に来たのだろう。それで……そちらの女性は?」


 フィル様に視線を向けられ、私はブローチを強く握りながら、にっこりと笑みを浮かべた。


「こんばんは、英雄様。私、貴方様にお願いしたいことがあります」

「願い?」


 フィル様は美しい金髪を揺らし、首を傾げた。彼は私がルイーゼ・イラーソだということに一切気が付いている気配がない。私はずんずんと彼に近づいて、今撮った写し絵がよく見えるように、彼に見せつける。


 ちらりと確認したが、この写し絵を見た者は皆、完全に恋仲の男女関係だと判断するだろう。私だって、そう思うから。

 フィル様は眉間にしわを寄せて、変わらず鋭い瞳で写し絵を見た。


「妻がいらっしゃるのに、他の女性と良いことをしていらっしゃるのですね」

「…………」


 フィル様は写し絵を見ているが、何も話さない。ふつふつと怒りが沸き上がり、私はその怒りを抑えるために笑みを深めた。恐らく、額には怒りマークのようなものが浮かんでいるだろう。


「浮気をするなんて……」

「俺は浮気などしていない」


 私は、無表情のまま言い切ったフィル様の言葉に耳を疑った。この期に及んで、浮気をしていない、とは?


「貴方様は最低な人ですね。私、貴方がそんな人だったって、知らなかったです」

「そもそも、貴女は誰だ? 俺と何か関係が?」


 フィル様は、悪気がないようにそう言う。その瞳は、憎らしいほどに冷たく、美しくて。


 ぷつり、と変な音が鳴った。



 ジョエル様が、まずいと小さく呟いたのが聞こえたが、私はもう怒りで目の前が真っ赤になっていた。


「私、これ以上貴方にとって都合のいい妻ではありたくないのです! 離婚してください!」


 私は衝動のまま声を荒げて髪を下ろし、髪と瞳にかけた魔法を解いた。

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