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おまけ(1) アドバイス

「ルイーゼ……貴女のせいだぞ。俺を煽った、貴女が悪い」


 私は呆然と、翡翠の瞳を見上げた。フィル様の瞳は今までに見たことがないほど熱を帯びており、同時に鋭さも孕んでいた。


(フィル様の変なスイッチを入れてしまいました……)


 ソファーに押し倒された私は、先程の自分の行いをとても悔やんだ。後先考えずに、下手なことをするのは本当によくないと、改めて実感した。

 フィル様は私の髪をすくって、口付けながら私を見る。


「散々俺を誘っておきながら逃げるなど、貴女は自分の行いを理解していない。ルイーゼ、貴女が何をしたのか、じっくりと、教えてあげよう」


(まずいです。フィル様は相当怒っています……!)


 フィル様は笑みを浮かべているが、彼の目は、全く笑っていなかった。




 ——数時間前。

 私はカフェで女子会に参加していた。参加しているのは、アンナさん、マスターさん、アグネスさんと私の四人である。


「ルイーゼちゃん。あれから英雄様と、どうなったの?」

「……フィル様が、あんなに愛が重い方だとは思ってもいなかったです」


 私は冷たいココアを飲みながら、苦笑いを浮かべた。あの件からフィル様は私に対する愛を全開にして、ぐいぐいと迫ってくるようになった。私の心臓は、いつまでもつのだろう。


「最近の隊長は、機嫌が良くて同僚達が喜んでいましたよ。訓練メニューが大分楽になったので」


 アグネスさんは、ブラックコーヒーを頼んでいる。彼女はクラブヘルダードで踊り子を続けながら、騎士の仕事も行っているらしい。もう騎士だと隠す必要がないので、公言してるそう。そのことで、もっとファンが増えたとか。


「愛の重い旦那さんか~。色々大変なことも多いんじゃない?」


 アンナさんは抹茶パフェを頬張りながら、私に問いかけた。私服の彼女は、大人っぽさよりも可愛らしさが前面に出ている。変わらずスタイルが良いので、周りの男性の目を引き付けている。


「……はい。ちょっと一人で外に出ようとすると必ずついて来ようとしますし、私が料理中にちょっと指を切っただけで、お医者様を呼ばれます。フィル様は過保護すぎるのです」

「ああいう男は、一度本性を見せたらとことん尽くしてきそうだからねぇ。獣みたいに欲を出すもんだ」


 マスターさんは、水を飲みながらそう言った。マスターさん——本名はマリーさんというらしいが、本人からの要望でマスターさんと呼んでいる——の言葉に、私の頬は熱を帯びる。


 フィル様の夜の姿を思い出して、全身が火照る。確かに、彼女が言うように、彼は獣の様に私を貪っている。

 でも、最近体を繋げることは少なくなっていた。


(私の体が貧弱なせいで、フィル様が満足できていないのかもしれません)


 フィル様は以前自分で仰っていたように、相手をしていたら実感したけど、性欲が強い。私の様子を見て手加減をしてくれているようだが、私は彼の全力に耐えきることができないのだ。

 気分が沈んでしまった私に気が付いたのか、マスターさんはにやりと笑みを浮かべた。


「男を誘ういい方法を教えてやろうか?」


 私はその提案に驚いて、目を丸くした。


(フィル様を、誘う?)


 以前であれば絶対に拒否しただろうが、今の私はフィル様の疲れを癒してあげたかったので、彼が喜ぶようなことなら何でもしたかった。


「わ、私は、疲れたフィル様を癒してあげたいのです」

「ちょうどいいじゃないか。ほら、ここにはヘルダードの看板娘が二人もいる」


 マスターさんに顔を向けられ、アンナさんとアグネスさんはにこりと微笑んだ。大人の余裕を感じる笑みだ。私には到底真似はできない。


「ルイーゼちゃんに、男を堕とすいい方法、教えてあげる」


(これ以上、フィル様を堕とす必要はないのですけど……)


 それでも、彼女達の親切を無下にしたくなかったし、少しだけ、ほんの少しだけ、フィル様の意表を突いてみたくなった。


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