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第四話 東東京強豪 金山高校1


「皆さん集まってください」


ザザ!


田中監督の声に反応して練習を中断してグラウンドの中央に集まる。


「今週の日曜日ですが、金山高校との練習試合が決まりました」


田中監督の言葉に部員の殆ど(和田と俺以外)は驚いていた。


「監督。金山って東東京大会で毎年ベスト16に入る都立の強豪校ですよね?」


「そうですよ浜崎君。金山の野球部顧問に僕の後輩がいますので、そのツテで練習試合が組む事ができました」


その事にキャプテンである浜崎先輩は驚愕する。


金山高校は都立高校てありながら毎年ベスト16に勝ち進む都立の強豪という事もあって正式な野球部ではなく、同好会に近い第二野球部がいくらツテがあるとはいえ、練習試合が組める事に驚いた様子だ。


「皆さんが驚くのは無理ありませんが、僕達第二野球部は正式な野球部ではありませんので、なかなか強豪校との練習試合を組めません。この貴重な経験を無駄にしない様にお願いします。それでは試合に出場するスタメンを発表するので挙げられた人は声をあげて下さい」


そう言って田中監督はメンバー表が書かれたミニノートを取り出す。


「一番セカンド内山君」


「はい」


二年生の内山先輩。右投両打のスイッチヒッターで長打を打つ能力は低いがその代わり走塁・盗塁・守備共に高い水準を有している。


見た目は髪を金髪に染めたヤンキー風貌だが意外に面倒見が良いため、俺を含めた五人ほど在籍している第二野球部の一年の面倒をキャプテンの浜崎先輩と同じくらいに見てくれる。


第二野球部に所属しているが、元々は大和第六高校に所属しておりレギュラーも勤めた程の実力者だが石井監督と一悶着起こしてしまい、石井監督の逆鱗に触れて強制退部を言い渡された事でグレて学校もサボる様になり、髪も金髪に染めて荒んでいたが、田中監督と話すうちに野球の情熱が再燃して第二野球部に所属する様になった。


ちなみに染めた金髪を続けていたのは田中監督が部員達の野球の邪魔にならないなら自由な髪型にして良いという方針で許可されている。


そんな事もあって第二野球部の部員達の坊主の比率は和田を含めて三人と少ない。


実際に俺も髪型が自由という事もあってスポーツ狩りにしている。


「二番センター 藤島君」


「はい」


三年生の藤島先輩。右投げ右打ちのセンターで選球眼が高くて甘いボールには絶対に手を出さず、投手に球数を投げさせる為にカット打法でファールして四死球にさせる事が得意なくせ者である。


この人は俺と同様に入部試験に落ちた後に田中監督に誘われて第二野球部に参加している。


「三番ファースト 佐藤君」


「はい」


三年の佐藤先輩。左投げ左打ちの打率が若干低くて選球眼の見極めめ甘い為に三振率も高いが、それを帳消しにする位に長打する確率が非常に高いホームランバッタータイプである。


子供の頃に父親と一緒にテレビで昔の日本プロ野球特集で日本プロ野球の名門で日本一を10年連続で達成した事もあるリーグ優勝、日本一の数がダントツの一位である名門東京ラビッツに所属し、世界のホームラン王となった帝さんの活躍シーンを見て帝さんに憧れて、帝さんと同じ一本足打法を小学生の頃から続けている拘りが強い先輩だ。


因みに第二野球部に所属しているのは一本足打法を修正させようとした石井監督との衝突であり、その事がキッカケで野球部を退部して第二野球部に所属する時も「自分の一本足打法に文句を言わない」事が第二野球部に所属する条件だった程だ。


「四番ライト 浜崎君」


「はい」


三年生の浜崎先輩。右投げ左打ちで第二野球部の主将に抜擢された事もあって面倒見がすごくよく、チーム全体を引っ張っていくだけの能力と責任感が強い先輩だ。


足は若干遅く守備は少し頼りないが、その代わり佐藤先輩と比べて打率も高く、超打率もあるというバッティングに関しては佐藤先輩より優れて入る。


「五番キャッチー佐久間君」


「はい」


お、俺は五番の様だ。


でも一年の俺が練習試合とはいえスタメンに選ばれた事に対して誰も文句はない様で俺も第二野球部の面々に認められた感じだな。


「六番ピッチャー和田」


「はい!」


お、どうやら和田も選ばれた様だ。和田は嬉しそうに返事をした。


俺に続いて和田のスタメンも特に反対意見はなさそうだ。「和田が投げてくれるならな」「実際に和田のストレートは佐久間しか捕れないしな」と、言った感じで和田の豪速球が武器になる事は誰もが認めていた。


ただコイツは高校生……下手したらプロでも打つ事が難しいストレートを投げる事が出来るし、バッティングにしても持ち前の馬鹿力に加えて選球眼も良い為にミート力とパワーをその得て100mが10秒台と足も速い為に理想のスラッガータイプなのだが、その代わりといってはなんだがコイツには致命的な弱点が存在する。


手元が不器用な為に変化球を投げる事が苦手な事もそうだが、和田最大の弱点は守備が壊滅的に下手な事だ。


外野守備につけばバンザイするし、内野守備をすれば簡単にトンネルするという小学生の方がまだ守備が上手いのてばと思うほどに守備が下手なのだ。


コレには理由もあって和田は東京の生まれでなく東北の田舎村出身で、小中時代はマトモに野球が出来る環境ではない為に全て自己流で練習していた為に守備練習など一切やっていないのだ。


ただ、自己練習だけで高一年の時点で160キロの豪速球、100メートル10秒台の足、柵越えホームランを連発する様なスラッガーにまで成長した事には周りは驚く以上に呆れてはいた。


この事に対して監督は「野球理論を壊しかねないですね」と、苦笑いしていた。


まあ、自己流で鍛えただけで守備を除けばプロで通用する逸材なのは間違いないからな。


守備に関しては冬のオフ期間中に徹底的にやる事を田中監督は考えている様子で今は短所を埋めるより長所をより伸ばす方針の様だ。


ちなみに第二野球部にいる理由は上記の投球・打撃・走塁共に好成績を納めたが、守備が壊滅的に下手な事が理由で入部試験が失格となり俺同様に「貴様の様な自己中田舎選手はいらない」と、この発言にキレた和田は「こっちから願い下げた老害ヤロウ!」と、言って第二野球部に来たらしい。


あの野球部の監督。いったい何を基準に入部テストを合格にしてるんだ?


和田は確かに守備が壊滅的に下手だが、それを除けば巨大な戦力になる事は間違いなのに……本当に謎だ。


「七番サード梅田君」


「はい」


三年生の梅田先輩。右投げ右打ちで変化球を苦手としているがストレートには滅法強く、俺を除いて和田のストレートに何とかくらいついて打つ事が出来る選手だ。


あまり話が得意な方ではない様で必要以上に喋る事がない。


「八番レフト 羽間君」


「はい」


二年生の羽間先輩。左投げ左打ちの若干線が細い為に力不足もあってパワーもなくミート力も若干低いが守備範囲は藤島先輩の次に広い為にレフトを任されている。


「九番ショート 赤星君」


「はい」


俺と和田に続いて一年生が選ばれた様だ。


赤星右投げ左打ちのショートで中学時代はシニアで活躍したがやはり高校野球のレベルで考えると打撃が八番の羽間先輩より不安を覚えるレベルだが内野守備は一年の中ではかなり高い為に田中監督も将来の戦力となると見込んで赤星をショートのスタメンに抜擢した様だ。


「以上が金山高校との練習試合のスタメンです。スタメンに呼ばれなかった選手も状況によっては試合に出すつもりですのでいつでも出れる様に準備して下さいね」


『はい!』


こうして俺たち大和第六高校第二野球部は都立の強豪金山高校との練習試合が決まったのだった。


ーーー。


「ただいま」


『お帰りなさいませ筑波ぼっちゃま』


この無駄に広い屋敷とメイド達にはいまだに慣れないな。


元が庶民なだけにどうも身構えてしまうな。


「あらお帰り筑波」


「「おかえりつくばにいちゃん」」


「ああただいま。純、雪」


俺が帰宅すると母さんと四歳の子供二人も玄関まで迎えにきてくれた。


一人目は純で父さんと母さんの双子の息子で佐久間純さくまじゅんで、もう一人は娘の佐久間雪さくまゆきだ。


珍しい男女の双子で養子縁組で血の繋がってない俺と違い、正真正銘の佐久間守さくままもる佐久間真由美さくままゆみの子供である。


実は二人とも俺がこの世界にくる直前まで子供がいなかった。二人とも若い時に車による事故により大怪我をした。奇跡的に一命を取り留めたが、その時の大怪我の影響で二度と子供が産めなくなってしまったのだ。


そのため良家出身の二人は一部の心許ない一族の言葉に肩身が狭い思いをしたが、俺がこの世界に来た直後に勇者召喚による恩恵で手入れた時空の穴に認識したアイテムを入れる事が出来るスキル『アイテムボックス』が使えた事もあってレジスタンスに入る前にエルフとのツテで手に入れたフルポーションが2本とも残っていた為に、俺は地球世界でも通用するか分からないが試しにフルポーションの飲む様に進めた。


フルポーションは伝説クラスの薬剤師が制作できる貴重な回復アイテムでフルポーションに欠損した腕や足に少し塗れば腕が復活し、どんな重い病気や死ぬ寸前の大怪我でも完全に回復するという伝説クラスのアイテムだ。


本当なら転移前に飲もうとしたがあの愚王と相打ちになって身体が一ミリも動かせないくらいにダメージを受けたせいで残りのフルポーションは飲めずに異世界ではレジスタンスの仲間達に別れも言えずに死んでしまったけどな


まあ、話は戻して四年前にフルポーションを飲んだ二人は身体の欠陥は見事に治り、それだけでなく三十代半ばだった見た目から十代後半の見た目に復活して二人とも驚愕していた。


この事もあって再燃した二人は俺や雇っている使用人さんの目も気にしないでハッスルしまくって、その結果産まれたのが純と雪である。


因みに二人が十代後輩の見た目に変貌を遂げた時は父さんの会社では一族や会社の重役達は大騒ぎで、母さんもママ友の集まりに出席したマダム達も同じ様に騒ぎ「なんだその若い姿は、何があったんだ!!」と、秘密を知ろうと根掘り葉掘り聞きにきた。それはそうだろうな、年相応の姿から高校生の見た目に加えて肌や髪質も十代に復活したのだから。


特に母さんのママ友達は一人だけ若くなる許せない様で目から光を失い、凄まじい黒いオーラを発しながら「オシエナサイ……オシエナサイ……」と迫り何とか秘密を暴こうと母さんに迫っていたとのこと。


異世界の秘密を喋るのは色々と問題がある事は母さんも分かっていた為に何とか秘密を死守しようとしたが女性の美の追求は凄まじい事に変わりない為に、今でも母さんが三十代後半から十代後半に若返った秘密をしろうと必死らしい。


「今日は随分と早いわね」


「今度の日曜日に練習試合があるから今週は練習試合に差し支えない様に早めに切り上げるだと」


「あら練習試合。良かったわね。お父さんが大和第六を筑波の為にって進めたのに野球部に入部できないって聞いて責任を感じていたから」


「その事は父さんは関係ないよ。あんまり父さんには気にしないでほしいよ」


入部試験を落とされたのは自分のせいだしな。


「本当に筑波は優しいわね」


ウルウルと涙目になる母さん。なんかむず痒いな。


異世界から転移、転生なのかいまだに分からないが、そんな素性が怪しい俺の話を聞いた直後に養子縁組にした事を考えると父さんも母さんは本当に人が良すぎるな。


ハイポーションを提供してから余計に俺に甘くなった気がするよ俺は別に良いって言っているのに聞きやしないしな。


「それより父さんは今日も残業か」


「そうなのよ父さんも1時間前に家に電話をかけて『早く家に帰って真由美や子供達に会いたいよ、遊びたいよ!』って泣き叫んでいたわ」


子供を欲しがっていたが自分達の身体の欠損が原因で長年子供がいない状況が続いたせいで純と雪に対してかなりの親バカを披露している。


それは母さんも変わらない為に、そんな状況をこの屋敷のメイド長である揚羽さんが許すはずもなく「二人とも甘やかしすぎです」と、お叱りを何回か受けていた。


「お父さんが残業か多いのも、四年前に筑波がお父さんに渡した四角い奴があったでしょう。解析が進んでようやくその技術を応用した商品の開発が始まりそうななよ」


「ああ、あれか……」


俺が父さんに渡したのはスマホの事である。


父さんは電化製品を扱う大手メーカーの会社の一族であり、父さんも開発局の重鎮という話を聞いて俺は浴びない橋を渡って養子にしてくれるのだから何かできないかと思いフルポーション騒動でしばらくたった後に、異世界では使用する機会もなくアイテムボックスに入れっぱなしですっかり存在を忘れており、そして並行世界とはいえ技術速度は俺がいた地球と変わらない為に90年代ではまだ携帯すら普及しきってないので、このまま誇りを被ったままのも何とも言えないので、俺はスマホを提供して何かの足しになるだろうと思い渡した。


それがまさか社運をかけた一世一代の大プロジェクトの責任者になるとは父さんも予想していなかったらしく会長……つまり父さんの父親、俺にとっては血は繋がっていないが祖父にあたる人が「このスマホの技術を完全再現できれば我が社は三十年は世界をリードできる、いやそれ以上だ!!」と、凄まじい気合いが入っているとの事だ。


「お父さんは晩御飯に間に合わないけど今日は筑波も一緒にご飯が食べられるわね」


「「はやくたべようたべよう!」」


「わかったわかった。それより先ずは風呂に入らせてくれよ」


こんな感じで新たな世界で出来た家族仲は良好だ。


俺は双子の兄妹達の小さい手に引っ張られながら笑みを浮かべるのだった。



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