第十九話 夏の全国大会出場。舞台の裏側
夏の甲子園大会出場が決まって大和第六高校はお祭り騒ぎだ。
野球に興味がない人間でも高校野球の聖地と言われる甲子園球場で高校野球の全国大会が毎試合テレビ中継されるくらいに人気があると理解はしてる為に夏の甲子園は夏の風物詩と認識してる人も多い。
実際に普段は仕事が忙しくて家に帰る時間が遅い父さんも興奮気味に「絶対に現地に応援に行くからな!」と俺に言ってたからな。
逆に母さんは冷静で「怪我だけしない様に」と言って怪我の心配だけしてくれて、悔いがない様に頑張りなさいと言ってくれた。
なお、甲子園出場という事もあって普段は父さん母さんの養子という事で一部を除いて親戚一同からはあまりよく思われてない俺だが夏の甲子園出場という事もあって親戚から「流石は筑波だ」「君も立派な佐久間家の人間」と、言っていたが俺はこの言葉を聞いて心の中で「うわ〜」と呟いた。
何しろ普段から「養子の分際で」「庶民の出のくせに」と、良家の血筋を鼻にかけて佐久間家の血を引いてない俺を馬鹿にしてきた奴らが俺が夏の甲子園に出場した途端にこれだから手のひらを返した対応に俺は呆れた。
これに関しては作り笑いで対応して基本的に可もなく不可もなくで対応してるんだけどね。
良家出身者が多い事を棚に上げて無駄にプライドだけは高い連中だから下手に敵対しても騒がれても面倒だからな。
父さんも母さんも古いしきたりに拘る一部を除いた親戚一同には子供が産まない、といより産まれない身体になった二人に対して産まれる身体に治るまで酷い対応をした事もあった為に一部を除いた佐久間家の親戚達にはいい感情を持っていないから父さん母さんも「親戚の対応は私達に任せなさい」と、言ってくれた。
まあ世間的に金も地位もプライドだけが高い連中と比べて父さん母さん達の方が高いからね。良家出身だけで態度がデカい連中は周りから「仕事ができない」「プライドが高すぎて扱い辛い」「血筋以外に誇るものがない」と、散々な評価を貰ってるので社会で高い地位や資金力を持っているのはほんの一部の連中だけだからな。
そんな連中は基本的に隠しもせずに一般市民を馬鹿にしてる態度を取る人間が多い為に世間の評価は散々の為に父さん母さんが本気で対応すれば味方になってくれてすぐに親戚連中は大人しくなって助かったよ。
それに良家出身で大手電気メーカーの佐久間家はマスコミに対しても父さん母さんに味方してくれる一部の親戚は圧力をかけて無茶な取材をしてくる事もないので助かっている。
また、中には大手新聞出身の記者を理由に大和第六高校の校舎に無断で侵入して取材をしようとしたり、俺を含めた家に無理矢理不法侵入して圧力をかけて取材した馬鹿もいた為に学校側も父さん母さんも激怒して大手新聞の会社に抗議して馬鹿な取材をしたマスコミはすぐに排除されたけどな。
さて、馬鹿な親族や常識を知らないマスコミは気にしないで田中監督の判断で今日は一日休みにして身体をゆっくりと休め、明日から本格的に全国大会に向けての練習と準備を始めると言っていたからな。
今日は田中監督の言葉に甘えて久しぶりに家族と一緒にのんびり過ごさせてもらいますか。
ーーー。
「これが西東京都大会を優勝した大和第六高校です編集長」
「他の高校球児と違い髪型が坊主でないため見た目が派手と批判されてますが実力は本物です」
「今までにない高校球児という事もあって若い世代を中心に人気が上昇してる事もあって我々としては大和第六高校を中心とした記事を書きたいのですが」
「許可も何も俺の目から見ても高校野球界のNEWHEROの誕生だ。大和第六高校は高校野球界の歴史に名を残す学校になるぞ。今週号は特別枠を作るから生半可な記事は絶対に書くなよ」
東京に本社を構えて野球を専門に扱ってる週刊誌『野球未来』の編集長である松形は野球未来の記者達が撮影した西東京大会大和第六高校の試合を見て高校野球に新たな旋風が巻き起こると確信した様に呟いた。
「何を馬鹿な事を言うんですか編集長。大和第六高校を題材とした記事なんて私は反対です。連中は伝統ある高校野球をメチャクチャにしてる破壊者だ。高校野球に携わっている昔から人間ならこれほど悔しい事はないでしょう」
逆に編集長の松形の言葉に反論したの野球記者として三十年の実績がある山岡であった。
伝統を重じ兵隊の様に規律正しくどんなキツイ練習に耐える事が出来る根性と強靭な常人では不可能な精神力を備えて努力をしてきたものだけが高校野球界の聖地である甲子園で試合する事が許されると信じてるだけに髪型を自由にし、日本野球の伝統であるスモールベースボールをやろうとしない大和第六高校をよく思っていなかった。
「馬鹿か山岡」
「なに?」
「お前は大和第六高校の球児達が最近日本でも人気になってきたサッカーやバスケ選手の様に髪型を自由にしてチャラチャラしてる様で気に入らん様だが肝心の野球を見てねえよ」
「何処を見てないと言うんですか、これでも野球記者として三十年はメシを食ってきてるんですよ。連中は高校野球の伝統であるチームプレイを蔑ろにした強打を連発する自分勝手な野球をやってるんですよ」
「だったらお前の目は節穴だ。いいか、大和第六高校はこれまで高校野球、いや日本野球の常識として浸透していたスモール野球とは違う本番アメリカの野球の様に圧倒的な力と技術で圧倒してんだよ。日本人でありながらメジャーの様な野球で成功してるから観客は盛り上がってんだ」
そもそもv10を達成した東京ラビッツが作り上げた長打力に依存しないでヒットを確実に打って盗塁・バントでランナーを進めて犠打で確実に一点を物にするスモールボールは確かにスター選手に依存しないチームを一丸になって戦うプレイスタイルと日本人好みの野球である事は松形も認めている。
しかし同時にスモールボールの限界にも彼は気がついていた。
そもそも長打やホームランを狙えるバッターが揃ってるなら小技に頼るより強振した方が良いに決まってるし、そもそもスモール野球はスケールが小さい選手しか集まらない弱小球団が強豪球団と渡り合う為に考案したスタイルである。
「日本には日本の野球があります。アメリカ被れの野球を認めたらそれこそ日本野球は終わりだ」
「お前が認めようが認めまいがファンは嘘をついてねえよ。これまで伝統伝統と凝り固まった老害連中が示す野球に世間は本音ではウンザリしてるんだよ。髪型にしろ一番から九番まで長打を狙って戦う大和第六高校の野球や新しい取り組みに期待してる現れだ。少しは客観的に物を見ろ」
それに呼応する様に大和第六高校特集を書きたい若い記者を中心に「そうだ!そうだ!」と、言った感じに編集長に賛同する様に騒ぎ出して山岡は最後に「記者は本質を見失っちゃいけないんだ!」と、怒鳴り部屋を後にした。
そして大和第六高校特集が書かれた『野球未来』の新刊は若い世代を中心に爆発的に売れて、これまで野球に興味が薄かった女性達からも大和第六高校の選手達がアイドル様に書いた事もあって女性達から大和第六高校に女性ファンが大量に獲得されるのであった。




