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第十七話 西東京都大会決勝戦1


大和第六高校第一野球グラウンドで決勝戦を翌日に控えてる為にレギュラー陣を中心に軽めの全体練習を行っている。


大和第六高校第一グラウンドには大勢のOB・後援会・保護者達が見学しており西東京大会も次勝てば甲子園出場という事もあって期待した目で見ていた。


「だいぶ参ってるわね佐久間君」


「まあな」


山本の言葉に俺は試合疲れではない別の意味で疲れていた。


それは次勝てば大和第六高校初の全国大会出場という事もあって初対面の大和第六高校OBや地元の議員やらに挨拶させられて沢山の名刺をもらい、挙げ句の果てには写真も撮られた。


「やあ佐久間君。私は〇〇市の議員だが私も昔は大和第六高校の野球部員だったんだよ。大和第六高校の期待の一年生である佐久間君には期待してるよ」


「俺は〇〇系列店の社長なんてやってるけど俺も昔は君と同じ様に白球を追いかけていた高校球児なんだ。母校の大和第六高校が甲子園出場が決まりそうと思って興奮してるんだ。だから頑張ってくれ」


「佐久間君。私は〇〇商店の部長で大和第六高校では〇○期生のOBなんだよ。甲子園出場まで後少しだね。頑張ってくれたまえ」


「娘が君の写真を撮ってきてくれと頼まれてね。一枚お願いできないかな佐久間君」


と、こんな感じで俺にやたらと声をかけてくるのだ。


部員の半分は他県から野球留学に来ている選手だが俺は地元の東京都出身。そんな俺が新聞に乗るくらいに活躍してる事もあって地元の星という事もあって大和第六高校野球部OBである社長、部長、市議会議員の肩書きを名乗るオッサン達が俺に声をかけまくってくるのだ。


この事に関しては田中監督も選手の練習の邪魔になるから追い出したいのだが学校側からはむしろ積極的に交流しなさいと言われてる為に田中監督も何も言えない。


何しろ大和第六高校は大正時代に創設された歴史が長い名門の私立高校であるためOB達の繋がりが強い為にスポンサーになってくれるOBも多い為に資金力はかなり高いのだが、それでも予算は出来る限りは抑えたい学校側としては更なる資金提供を得る為に俺に客寄せパンダになれと命令してきた。


本当はこんな客寄せパンダみたいな扱いは俺自身は嫌なのだが、甲子園に出場ともなれば高野連も全国出場した学校にはある程度は援助してくれるのだが、それでも雀の涙ほどしか資金援助はしてくれない。実際に甲子園に出場すれば宿泊費・食費・練習場のレンタル代に加えて応援に来る生徒達のホテル代や甲子園の入場料応援団の楽器の輸送費etc……。


とにかく甲子園出場となれば莫大な金が掛かる事は確実なのでこうして俺は大和第六高校OB達から資金提供を得る為にやりたくもない客寄せパンダの様に見知らぬオッサン達に練習を中断して挨拶して再開を繰り返しているのだった。


「そうそう佐久間君。少し笑顔でカッコいいポーズをお願い。出来ればピッチングのポーズで」


「お前もかよ」


「だってクラスの女子達や他のクラスの子達からも佐久間君の写真を欲しいて頼まれたのよ」


「どうして俺の写真なんか欲しいんだよ」


甲子園出場が現実味を帯びて読○新聞相手に喧嘩を打った様なコメントして世間の注目を集めたから一躍有名になったからか?


「知らないの?佐久間君って女子達から凄い人気なんだよ」


何でも山本が言うには同世代とは思えないくらいに落ち着いた大人びた雰囲気に加えて無駄なく鍛え抜いた筋肉質な身体とスポーツ万能で成績もクラス上位という事で同世代の男子にない魅力があるから人気があるとの事だ。


「私達のクラスを中心としたファンクラブも存在してるんだって、女子達から凄い人気で嬉しいでしょう」


「別に興味はないな」


「何でそんな淡白なの。本当に男子とは思えない程に女性に対して佐久間君って枯れてるよね。もしかして佐久間君って女性に興味なくてアッチのほうが趣味」


失礼な奴だな。


「違うわ。俺だって人並みに性欲はあるしエロ本だって興味ある」


「マジで?」


だから何で疑うんだよ。何故か全体練習を終えた先輩達も耳を立てて聞いてるし。


「だって学校の男子で私の胸を見ても何の反応しないの佐久間君くらいなんだもん。だから本当に女の子に興味ないと思って」


山本の問いに自覚があるのか野球部員達はサッと目を逸らした。


まあ、山本が言いたい事は理解できる。そりゃあ山本は普通に美人だと俺は思うよ。


山本は童顔で身長が150センチと比較的小柄でGカップはある巨乳にクビレもあるし男女で区別しないで親しみやすい人柄もあるため普通にモテると俺は思う。


しかし山本には悪いけど山本クラスの美人や巨乳は俺は勇者召喚された時に飛ばされた異世界で美人は見慣れてるんだよ。


実際に俺の初恋の500超えのハイエルフは長身でJカップは超えてたし、男まさりな姉御肌の女ドワーフも山本以上に低身長だったけどハイエルフのアイツと同じくらいの超巨乳だったからな山本の胸が富士山ならアイツらの胸はエベレストだった。


オマケにレジスタンスの仲間達以外にも異世界の連中は無駄に美形な奴らが多かった事もあったからか俺が美人と思うレベルのハードルが無駄に上がってるんだよな。


そのせいでこの世界のテレビで人気者のアイドルや女優も異世界では見慣れてるせいもあって俺には響かないし、クラスの男子がアイドルや女優の話題で盛り上がってるなかで俺はイマイチついていけなかった。


「俺は聖人君子じゃないんだ。普通に異性に興味はあるが今は野球にだけ集中したいだけなんだよ」


「なるほどね。でもそれだと息が詰まらない」


「オンオフの切り替えはしてるつもりだ」


実際に家に帰れば自主練や勉強ばかりの生活をしているが練習が休みの日は睡眠を大事にして家てのんびりして身体やメンタル回復に勤めてる。


こんな感じで山本からもう少し羽目を外してもバチは当たらないと言われるがこれが俺の今のルーティンだからな。


ーーー。


西東京都大会決勝戦当日。


明治神宮球場の客席は全ての席に人が埋まり満席となっていた。


大和第六高校の決勝戦の相手は南海大付属創世高校。野球を始めとしたあらゆるスポーツで全国出場している西東京の中でもTOPの強豪校としられている。


南海大付属創世高校は南海大学系列の学校で西東京を代表とする強豪校の中でも一大付属第四高校、稲山実業高校と並ぶ西東京TOP3と呼ばれて西東京で全国を目指すならこの3校に所属しろとまで言われている。


大和第六高校も西東京では強豪校に属するが、それでも高校としの格はTOP3と称される南海大付属創世高校に負けるし有望な中学生をスカウトするにもやはりTOP3の学校の方が優先順位が高い為にスカウトが不発に終わる事が多い。


父さん母さんの薦めで大和第六高校に進学したが、実際に一大付属第四、稲山実業、南海大創世のTOP3からも特待生枠としてスカウトすると言われた事もあったな。


「いつにも増して観客の数がスゲーな」


「ビビったか?」


「そんな訳あるか。むしろここで活躍したらスター街道まっしぐらだ」


ナハハと笑う和田に俺は普段通りだなと安心する。まあ、単純な性格してるコイツは緊張とは無縁と分かっていても何がキッカケで緊張するか分からないからな。


ついに西東京代表を決める決勝戦が始まった。


一回の表は南海大付属創世高校の攻撃から始まる。


とりあえず一球はいつもの様に審判のストライクゾーンの確認を込めて外角高めのギリギリにストレートを要求する。


この一球で審判のストライクゾーンの範囲がある程度は理解できるので、その日の審判の状況によってリードも変わるからな。


「うりぁぁあああ!」


ズドォォォオオン!!


さて判定は……。


「ボール」


ボールか。冷静に判断ができる所を見るとこの審判はアマチュアの中では良い審判の様だ。


実際に和田に俺が要求したコースはストライクゾーンから球一個分は外れた所に構えたコースだからな。


やはり神宮で試合する審判はある程度は信用が高い審判に任されるみたいだ。以前の様に和田の勢いがある豪速球でビビらして外れたコースでもストライクコールをさせる事は難しい様だな。


だけど問題はないな。俺が想像するストライクゾーンと比べて多少の誤差はあるが問題ないレベルだし、冷静に判断してくれるならギリギリを攻めても誤審される心配もないからな。


次は低めの内角をギリギリだ。


「ウリャぁぁあああ!!」


ズドォォォオオン!!


「ストライク!」


今度はストライクコール。


そして神宮球場には158キロと表示されて観客席から「おおぉぉお!」と驚きの声が上がる。


何しろプロ野球の日本記録である158キロが高校野球の試合で提示されたのだから新聞で和田がMAX160キロを投げられると知っても実際に見てみないと実感はできないだろうな。


その後はストレートで押してツーストライクまで追い込んだ後はトドメにSFFで空振りで仕留めて一番打者を三振に抑えて、残りの二番三番も同じ様に三者凡退で抑えて強豪南海大付属創世高校の攻撃を初回0点に抑えた。


そして南海大付属創世も強豪校の意地を見せて大和第六高校の一番から三番をキッチリと抑えて三者凡退とした。


両軍共に三者凡退に抑えて好調な立ち上がりを見せた。


さあ、試合は始まったばかりだ。勝負はここからだ。



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