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第十二話 紅白戦


西東京大会の抽選会まで残り数週間という事もあって大和第六高校は大会メンバーに参加する20名を極めるための紅白戦が決定した。


既にレギュラーが決定しているのは俺と和田、そしてサブ捕手の五反田先輩、サイドスローの佐々木先輩、そして旧第二野球部キャプテンの浜崎先輩であった。


後の選手達は特に突出した能力もない為にレギュラーが確定してる訳ではないため田中監督は紅白戦で可能性を見出した選手をレギュラーにする事を決定した。


そこでレギュラーが確定していると俺と和田はチームを別れて投手として参加する様になった。


「和田君はストレート以外は禁止で佐久間君は変化球を投げる事は許しますがカーブ、チェンジアップ以外は投げるのは禁止にしてください」


この様な制約をある中で投げる事を田中監督に言われた。


今回の紅白戦はレギュラーが確定していない選手を選抜する為に行われるので、選手達の可能性を見る為にも全力を出しては意味がないと言われて投球に制約を俺達に出したのだ。



なお、和田の捕手問題だが最近は五反田先輩以外の捕手もストレートなら和田の豪速球は何とか捕球出来る様になったがSFF、ツーシーム、カットボールのムービング系の変化球はまだ捕球できないため和田が全力で投げる場合は俺が捕手をするしかない。


「佐久間。今日はお前がリードを気にしないで好きに投げろ」


「自由に投げろって事ですか?」


紅白戦が始まり前に五反田先輩が自由に投げる様に俺に提案してきた。


「悔しい話だがお前の球を捕る事に集中してる俺にリードする余裕がない。」


「だから自由に投げろって事ですか?」


「ああ、お前が好きな様に投げろ。今は投手をしてるがお前の本来のポジションはキャッチーだからリードのイロハはわかるだろ。だからお前が投げたいコースに構えたら首を縦に触れ」


「分かりました」


悔しい表情をしながら答える五反田先輩。


本来捕手とは第二の監督と言われる程に現場の頭脳と言われるポジションである。


そのため相手打者の情報を分析しながら投手に出来るだけ完璧に抑える為にリードをする重要なポジションだ。


その重要なリードを投手に託すという行為は捕手にとって仕事の放棄に等しい好意でもあるため五反田先輩の様な生粋な捕手は悔しくてたまらないだろう。


中には捕手は何も考えないで投手が気持ちよく投げさせるプレイをすれば良いという意見もあるが、投手が独りよがりに暴走しない様に手綱を握るのも捕手の役目だ。


だから捕手にとって投手の球を完璧に捕球するという仕事の次に重要なリードを放棄するという行為がどの様な事かは俺が一番理解してる。


だから俺は五反田先輩の思いを無下にしない様に俺は全力で投げる事を誓う。


ーーー。


「ストライク!」


紅白戦四回の裏。


現在佐久間は無安打 無死球 六奪三振という記録を出していた。


白組バッターは旧第二野球部キャプテン浜崎である。


MAX152キロというノビのあるストレートに変化量とキレが凄まじいカーブと急速にブレーキがかかって落ちるチェンジアップという緩急を生かしたコンビネーションに白組のバッターは悪戦苦闘していた。


(佐久間の球は練習で何度か確認したけど、試合となるとこんなに違うのかよ)


ヒューン……クク


「うお!」


ズバーン!


「ストライクバッターアウト!」


(何てキレと変化量だよ……一年が投げれるカーブのレベルじゃねえ)


あまりの変化量とキレに球が身体に当たりそうと思ってしまい退けてしまったが球はしっかりとゾーンに入ってる。


何も出来ずに終わった事に悔しそうな表情を隠さないでバッターボックスを後にする浜崎。


これで佐久間は無安打 無死球 七奪三振となった。


「しゃあ!(いくら速い球を投げれるからって一年で捕手上がりの投手に負けてたまるか!)


次のバッターは旧野球部レギュラーに属していた斎藤がバッターボックスに立つ。


佐久間は首を頷いてセットアップの状態から球を投げる。


ヒューン……スバン!


「ストライク!」


(やっぱり速いな。コイツ、和田より遅いとはいえ平均で140後半のストレートが常に投げられる上にコントロールも抜群で変化球も一級品だ)


全く才能の違いに嫌になると斉藤は心の中で悪態をつく。


これで本来のポジションが捕手というのだから田中監督がどうしても佐久間をどうしても投手として使いたがって訳がよく分かり、和田がいなければ佐久間がエースナンバーを背負ってチームを引っ張っていただろうと認めたくはないが斉藤は納得した。


佐久間は今度はインコースにストレートを投げる。ストレートに山を張った斎藤は何とかバットにボールを当てる。


「ファール」


佐久間は150近いストレートを当てられたにも関わらず表情は変わらない。


(くそ、少しは悔しがれよ可愛げねえ。和田の野郎は少なくとも馬鹿騒ぎはしてるぞ!)


自慢のストレートにバットが当たっても冷静な佐久間に可愛くない一年と斉藤は心の中で呟く。


ノーボール、ツーストライクのカウントで佐久間は様子を見る為にアウトローギリギリのコースにカーブを投げる。


「ボール」


コースギリギリに投げた球を斎藤は見極めていた。


(カウントがノーボールツーストライクだから一球を様子できる段階とはいえ、球一個分外して投げたのによく見極めたな斎藤先輩)


関心した様に心の中で呟いた佐久間は次はストレートをインコース高めに投げる。


ヒューン……ズバン!


「ストライクバッターアウト!」


緩急が聞いたカーブがあるからこそストレートも生きる。


速度差が20キロ以上ある球にインハイギリギリの140後半のストレートのコンビネーションは分かっていても打つ事はなかなか難しい。


佐久間は変化球を制約されていながらもストレートとカーブ、チェンジアップの緩急を生かしながら白組のバッター達を相手に交代されるまで無失点で切り抜けた。


紅白戦は佐久間と和田は共に無失点で終わり、交代した後は白組が奮起して0ー2で白組が勝利して佐久間が所属している紅組が負けた。


この試合の後日、夏大会を戦い抜く20人の選手が正式に決定した。


そして公式戦のメンバーに選ばれなかった三年生はこの時点で正式に引退という形となり、選ばれなかった三年生達は泣き崩れ、佐久間は選ばれなかった三年生達の分まで戦い続ける事を誓った。


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