第85話 スカアハと言う女傑
「・・・・・・」
「・・・・・・」
現在地、猛翁の方の道場内。自分と相対するはスカアハさん。審判であるアキラの合図からすでに動けないまま、5分を経過する。いや、今5分か?と言う感覚すらある。模擬戦とは言え、相手はケルト神話最強の相手。ハンデに相手は短剣の上に集中のアレも使っているのだが・・・
(隙が無い・・・)
いや、こちらの武器は槍なのでリーチ差である程度の空白、つまりは安全地帯は見える。が、動こうとするとその方向への空白が消える。つまり、完全に読み切られているのだ。
(では、突進して薙ぎ払うか?・・・・・・ダメだな)
以前アキラが使った手である。しかし、それすらも読まれている。っうか、半歩後退られたわ。薙ぎ払いは遠心力に腕力がプラスされるから確かに強いんだが、かわされる、もしくは技術でいなされると凄い弱いんだよなあ・・・となると・・・
「参りました」
「お疲れさまでした」
ぷはっ!今の今まで張っていた集中が切れたから、ぺたりと座り込む。時計を見ると試合時間は10分も経過していない。しかし、自分には1時間いや、もっと長く感じられた。
「お疲れ、ほい、ポカリ」
「あんがと。いや、マジでダメだったわ」
「そんなに?」
「どう動いても、死神の鎌が常にこっち向いた上に首にかけられた状態って言ったら分かりやすい?」
『そりゃ、無理だわ』
飲み物を持ってきてくれたアキラに委員長と妹チームも頷く。何が凄いってどういうルート行っても負けしかない未来っていうね。これで伝説に聞くゲイ・ボルグを持った状態で相対したら死神どころじゃねえわ。
「降参が出来ると言うのもまた強みではありますよ?」
巴さんがタオルを持ってきてくれたので汗を拭く。と言うか、手で触ってようやく大量に汗掻いてる事に気づくって言うか汗掻いてる感覚も無かったわ。お?次は巌さんが挑んだ。獲物はお互いに竹刀。巌さんは2刀流、スカアハさんは1本。巌さんの達人級の力は知ってはいるが、巌さんが開始から自分同様に動かない。それどころか、流れる汗が増していく。同様に見ている自分達も訓練やダンジョンに潜った成果なのか、その空気が凄く分かる。
「・・・・・・」
漫画のような表現だが、それぞれに円のような範囲がある。それが何度も見えない形で接触している。巌さんの方はスカアハさんの方に接触した時に綻びが出るのに対し、スカアハさんの方はまるでいなすかのように綺麗な円で侵攻しようとすると巌さんの円が範囲から逃れるように後退する。
「一進一退だな」
「だね」
おそらく竹刀であるから、武器破壊と言う事は無いだろう・・・・・・無いよね?まあ、無い事を前提にして、巌さんの勝機があるとすれば片方で相手の武器を抑え、もう片方で薙ぐ事。勿論、そう考えての2刀流なのだろう。
『は?』
すると、誰が最初に発したか、いや、おそらくこの場に居たスカアハさん以外の全員が同じ言葉を発したかもしれない。スカアハさんの構えは正眼だったのだが、それが・・・
「上段の構え・・・」
所謂、上から剣を振り下ろす構えである。おそらく剣道の中で最も威力があり、最も大きな隙を晒し易い構えとも言える。隙だらけの胴は横薙ぎに弱いし、一刀避けられれば、持ち直す為の隙が大きすぎる。
「決着を促してるわね」
委員長の言葉に頷く。巌さんもそれが分かっているから。息を吐き、そして・・・
「チェストォオオオオオオオオ!」
まさに神速と評価してもいい、後に審判だった猛翁も評した踏み込み!更に2刀はそれぞれ縦と横に薙ぎ払う妙技、誰もが巌さんの剣が決まった!そう思った・・・
「マジか・・・」
「一本、それまで!」
制したのはスカアハさんだった。ちなみに自分も全て理解出来た訳ではないので猛翁からの解説も付けてようやく理解したのだが、2刀流の性質と言うモノがある。いざやってみると分かるんだが、タイミングをずらして攻撃するのは達人でも難しい。意識してやろうとしても難しいのだ。まして今回の試合は格上の相手。するとどうなるか?答えは一瞬だけでも同じ線を交差するのである。巌さんの進行方向と同じ方向にバックステップ、そうする事で更にずれたタイミングを同じタイミングにするとその線が重なる場所に上段一閃。武器が重なるように下へ叩きつけられた巌さんの前に跳ねた竹刀が突きつけられ一本と言う事らしい。
「で、対応策考え付いたか?」
「 無 理 」
『デスヨネー』
いやね、もう達人同士過ぎて、何をする?じゃなくて何からすればいいのかサッパリだよ!
まだまだ、達人の皆さんの域では無いと言う事、要修行!なお話




