第73話 進路と言う名の難関
「そういえば、委員長?」
「何?」
「進路どうするの?」
道場でいつものルーティンを終え、佐々木さんに酒の神のダンジョン内における危険である酩酊の件を連絡し終えた後の休憩中に委員長に聞く。前にも話したが、自分とアキラは就職というか起業?が確定。季節は高校生活3年目の3月。そろそろ願書その他が迫ってくる季節だ。進学にせよ、就職にせよ、決断の時期でもある。
「ダンジョン専門の大学は確定ね。ただねえ?」
おん?何か悩む所がある感じ?
「戦闘系の場合、パーティ研修があるのよね」
『ああ・・・』
全員が納得する。なるほど、迷う理由も分かる。現在の委員長のパーティ構成は前線にアキラと委員長、後衛に妹チームである。連携もあるから、アキラは自分と共に進学ではなくある意味就職?であるし、妹チームは入学するまで2年ある。まあ、要するに知らん人と組む羽目になる上に連携自体が怪しくなるという訳だ。無論、それも授業の内ではあるだろうけどね。
「連携もあるんだけど・・・ねえ?」
『あぁ・・・』
こっちを見て溜息を吐く委員長とアキラと妹チーム。少し考える、考える・・・・・・あっ!そういう事ぉ?!
「有名になり過ぎたねえ、お兄ちゃん」
ぐぬ!楓にマウント取られる日が来るとは、不覚!だが、実際そうである。情報と言うのはどの世界でも重要だ。自分の情報に関しては佐々木さんもある程度隠蔽してくれてはいるが限界もある。マスコミ業界もある程度はなんとか出来てはいるがアンダーグラウンドな部分はどうにもならない。
「ああ、勿論、やれない事も無いわよ?トオル君に寄生してるとかの外野の無知を理解させるのは簡単なのよね」
今、なんか不審なルビが入った理解と言う言葉が見えたのは気のせいだろうか?アッ、ハイ、気のせいですね。
「ただねえ、私にとってあの学園、卒業後のダンジョン紹介しか利点が現在見えないのがね」
『あぁ』
まあ、確かにねえ。現時点ではカリキュラムこそ厳しいものの、やってる事は自分達より少し遅れたとはいえ、しっかり同じような内容の訓練をこなしている委員長だ。しかも、1か月に数回はダンジョンに潜っていると来た。それで進学費用を出して貰ってまで行くのか?を考えてしまっているのだろう。
「それなら安心してもいいんじゃないかな?ほい」
実はそういう事もあり、考えていたコースがあるのだ。つい少し前にFAXで来たのを委員長に渡す。
「コマンダーコース?」
「そ、コマンダー、つまり指揮官としてのコース」
委員長は困惑しているが、それも資料を読み込んでいくと晴れていく。字面で誤解されるが、コマンダー、すなわち指揮官は後ろに居るだけではない。しかも、ことダンジョンにおいては様々なタイプのコマンダーが居るのだ。それを学ぶ為のコースであり、ダンジョン通いしていて物足りない人の為の難関コースでもある。
「なるほど、私の場合もあるけど、このコースは三優ちゃんも向いてるんじゃないかしら?」
「うっ、カリキュラムが少しきついかもしれませんけど、このバックコマンダーは確かに興味あります」
ああ、確かに、三優ちゃんもこのコースが良いかもしれないな。と言うか、マイシスターの事もあるので是非、2人にはこのコースに行ってもらいたい。
「私は?」
ヘイ、マイシスターはまずは・・・
「まずは勉強ね」
「そうだね、カエデちゃん、行こうか?」
「え?え?」
そう、お勉強と言う時間を長く取れ。な?宿題形式の課題でも間違いが多いのは問題だぞ、マイシスター。
トオル君チームのちょっとした進学事情と言うお話




