第65話 テイマー取得の試練 前編
さて、いよいよ、自分の試練の時が来た。そう、テイマー取得の時間である3年生の3月・・・は来年だったのだが・・・ここんところ、嫌な予感がざわざわすると言うか、拭えない感じがするので、学校や佐々木さんと相談し、急遽行う事になったのだ。それで、まずは事前学校から探索者の証である探索者証を受け取る。次に装備品のチェック、特に靴は靴紐で無いタイプを選ぶ。小学生以来だな、マジックテープタイプの靴、更に、早々外れないようにと靴の固定用に接着剤も持って行く。更に手甲と足甲にヒビやほつれが無いかチェック。全逃げの為、武器は必要無いのでベルトに通せるように改造した収納タイプのマジックバッグ小に2リットルペットボトルに水を3本、コンビニのおにぎりにカロリーメイトなどの常備食、カロリー補給の為のチョコと飴。最後の切り札である消化薬。加えて、前に渡された脱出のスクロールをアキラの分の予定だった物も貰い2つ、予備の服にシャツと靴を2セットづつ、汗拭き用のタオルに水をスポーツドリンクに出来る粉末。必要かは分からないが長めのロープを1本。以上が入れてあるのを確認。
「んし、オッケー」
自衛隊基地の宿舎の一室から出ると他のメンバー、佐々木さん、猛翁に巌さんと門下生の人達、自衛隊員と合流する。
『それでは自衛隊所有、ナンバー10の攻略を開始する!全員地図は持ったな!目標は20層まで!トオル氏の護衛ではなく彼の行き先に現れる魔物をパーティ単位で排除!10層を攻略し終えてる隊員は転移クリスタルで11層に待機!とにかく敵の排除、罠の解除、進行ルートの確保を徹底的に行う、いいな!時計を合わせろ、この時間より開始する!全隊、乗車!』
拡声器で基地司令が号令を出すと次々と隊員達は車に乗っていく。うーん、やはり体の体幹とか走り方とかあっちが上だなあと思っていると佐々木さんと猛翁が近づいてくる。
「いよいよだね。万難は排したつもりだ、頑張ってくれ」
「慢心無きようにな」
「はい!」
そう言って、うちのメンバーが乗る車に乗って出発する。操縦者は巌さん、流石にここに父さんを呼ぶのは・・・ね?
「トオル、予感は?」
車で移動中アキラが聞いてくる。流石は古い付き合い、分かってらっしゃる。
「現在も継続中。ただ、ダンジョンで何かすれば収まる気がする」
幼い頃から、何かとお世話になって来たのがこの予感である。危険を回避したのは一度や二度ではないレベル。だからこそ、それに従う為に様々な勉強をし、その予感を口にする癖をつけたのだ。
「ホント、お兄ちゃんはその予感的なの外れないもんね」
その言葉にアキラと三優ちゃんはウンウンと頷くが委員長と車を操縦している巌さんは疑問を隠し切れないようだった。そういえば、この2人以外にも身内以外は知らんかったな。
「巌さんと委員長ってさ、危ないとこに近づくと警鐘みたいなの感じるタイプ?」
「そうだね。必ずしも当たる訳ではないけど。勘で危険を避けていくね」
「私はその辺は鈍い方かしらね?ただ、本当に危険なら本能的に避けるタイプかしら?」
まあ、2人は武術家だから、その辺は並の人より鋭い方なんだろう。
「自分の場合はちょっと特殊でね。危険を感知するのはもちろん、解決方法を模索すると、どれが正解か分かるんだ」
「「ふぁっ?!」」
どういう事かと言うと、例えばここを通ると危険を感じる。普通なら正解は遠回りである。当然だ、それが一番賢い回避方法だ。ところが、自分の場合はその危険を回避する方法は他には無いか?と手段を考えると、その手段が正解なら危険の予感がスッと消えるのだ。スキルか?と言われるとそうでもない、小さい頃からあった事だからね。少なくともダンジョン出現には関係ない・・・・・・と思う。最近の事件見てると自信が若干無いが。
「今回の場合、嫌な予感が落ち着かないと言う事は災害は即起きないが早めの解決が必要」
「そして、その解決方法はトオル君がダンジョンへ潜るのを早める必要があると言う事かい?」
自分の言葉に対する巌さんの言葉に頷く。なんか、こうしてみるとスキルじみてきたな。
「今回の場合は特殊なんですけどね」
「と言うと?」
「今までは嫌な予感が持続する事はなかったんですよ。しかし、今回は・・・」
「持続している。しかも、今もなのかい?」
巌さんの言葉に頷く。ただ、気になるのはここまで露骨に期間が長いと言う事である。が、同時に解決にはダンジョンに潜る事、それだけは確定なのである。そして・・・
「気になりはするけど、そうしないとまずいのも確かなんだよねえ」
質問の対象が楓やアキラに移るとぽつりと呟く。しかし、何だろうな、この感覚?見られてる、いや、視られてる?と感じつつ、目的地であるダンジョンに向けて一路車は向かうのであった。
トオル君の試練のお時間ですと言うお話。今回、結構傍点使ってますが、これもとあるフラグの1つと言う事です




