第62話 3年生の進路について
「で、ぼちぼち、俺、解禁!になる訳だけど・・・」
2月、普通の高校3年生ならば、この後巻き起こる受験戦争の開始ではあるが、まあ、無縁ですわな、自分とアキラ。が・・・
「委員長と妹ズはどうすんの?」
道場の改築が終わり、朝のルーティンは道場通いに戻ったので昼食をこちらで取ってる時に聞く。自分達は探索者確定だが、この3人は通常の進路に戻るという手もあるのだ。
「それなのよねえ」
「「それなんですよねえ」」
この3人が何を悩むって、少し前までの探索者の道はこちらに専任か、何らかの職を兼任、もしくは今まで通りにどこかに進学か就職であった。じゃあ、今は?
「このまま探索者として生きるか、探索者学園に入るか?別の道か?なのよねえ」
『ですねえ』
そう、探索者の為の学園が出来てしまったのだ。こうなると選択肢の幅も広がる。普通はそうなるんだが・・・
「まあ、学ぶ事ある?と言われたらそれまでなんだけど」
「申し訳ございません」
我、高速土下座敢行す。いや、何がってさあ、探索者学園の教育マニュアルの元って、自分なんだよね。正確に言うと、自分が行ってる訓練とか気づいた事とか、はい。それを大体メンバー全員は聞いてるしやってるっていうね。ただ・・・
「入校してる間と卒業後にかなり有利になるのも確かなんだよね」
「そうなのよねえ」
まず、自分がやってる事とかには変わりはないのだが、前にやった自衛隊合宿の施設と変わらない施設がある、これがまず特典その1。さらに遠方の人達用に用意された寮は勿論自衛隊クラスの警備が付き、更に施設内は無料のトレーニングマシーンルームにスパ、血が付いた装備を洗う最新のランドリールームまである。勿論各部屋は防音という徹底ぶり。これが特典その2。で、一番でかいのが・・・
「卒業後に認められた者に限るが自衛隊専用ダンジョン入場券交付」
「それが大きいのよねえ。御祖父様も出来れば入って欲しいらしいのよ」
え?と思うが、今一度良く考えてみて欲しい。そう、自衛隊専用なのである。まず、救援が速い。当たり前である、現状最高峰探索者である自衛隊が複数潜ってるダンジョンである。救援要請から即救助だってあり得る。更に自衛隊専用ダンジョンは何故民間は入れないのかを考えたことあるだろうか?色々やべーもんが出るというダンジョンもあるが、入場する理由として一番大きいのは鍛錬の為のダンジョンであると言う事である。言い方変えると、安定した戦いが出来るダンジョンなのである。他のダンジョンだと事故もあるし、事件もある、そういう事である。
「まあ、委員長はコネあるし、楓達は1年近くあるから、もう少し考えてもいいんじゃない?」
「そうね。トオル君とアキラ君はどうするの?」
「ああ、一時は入校も考えたんだけどね・・・」
「と言うか、トオルに関しては講師としての雇用提案も来てたしな」
そうなの?って顔されるんだが、そうなんだよね。しかも。オファーに来たの佐々木さん自らなのは勿論、海外からもメールが来てるぐらいである。まあ、佐々木さんにはお断り入れて、メールも同様にお願いしてるんだよね。なんでかって?
「自分もアキラもお断り入れたんだよね。なんでって?フリーじゃないと絶対今後もなんか起こりそうだし、やるなら探索者引退考える年齢になってからかな?って・・・」
『ああ』
委員長と妹チーム納得の上で、改めて言った自分にアキラも納得。いや、納得せざるを得ない。だって、考えてみて?ダンジョンが一般認識されておおよそ2年、もうちょい正確に言えば1年半超そこそこであの事件の数よ?絶対、今後も何かある、確信レベルである。
「あれだ、ダンジョンのトラブルバスターズコンサルタントでも開こうかな?」
『それだ!!!』
え?あれ?冗談のつもりだったんだけど?と言おうと思ったんだけど、あれよあれよという間に佐々木さんや猛翁、果てはうちの両親にアキラの両親、巌さんまで巻き込み、かなり後々にマジで物件とか抑えて事務所を開く事になるとは現時点では見抜けなかったのは言うまでない。いや、だって、その場のノリの冗談と思うじゃん?じゃん?
迂闊な事はフラグの元だぞ、トオル君!と言うお話。実際、彼がコンサルタント開いたら人が殺到しそうですよね




