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第6話 武器の選択と道場でのお願い

「と言う訳で、道場の庭を少し貸してほしいんです、巌さん」


「ふむ・・・」


あれから数日、今度は武器の選別だ。刃物が無いとは言え武器になりそうなものを午前中に公園でブンブン振るのもアレだし、学校の校庭の片隅でやるのもアレである。学校にも一応、体育館などがあるが、一般生徒も使うからね、自分達が都合の良い時に使うとかは無理だろうから、アキラの通ってる道場の道場主であるあかつき いわおさんにお願いしていると言う訳である。


「うちの道場に通うとかはダメなのかい?」


「駄目ではありませんけど、あくまで武器の様なモノを振り回す所を使いたいんです」


「ああ、なるほど、そう言う訳かな?」


「はい」


流石は実戦形式でないとはいえ、全国大会常連の道場の道場主さんだ。こちらがやりたい意図も分かってくれたらしい。そう、武器の扱いを教わりたいのでは無い。ダンジョンの為の武器を振り回して確認する場所が欲しいのだ。


「ふむ、朝から昼の間で、利用場所は庭だったね、構わないよ。アキラに門のサブキーを預けておこう。たまにうちの門下生が見学に来るかもだが、いいかい?」


「うす、お預かりします。見学は構いませんけど、変な癖付いちゃいません?」


え?門下生?と思ったが、この道場は広く開いてるから社会人とか居たわ。この辺、学校の部活動とは違うんだった。しかし、見学ねえ?あんまり参考にならん気がするがなあ。


「いやいや、私の予想通りの状況になるならば、こちらがお金を払っても良いぐらいなんだよ。多分、何人か、今後辞めていく事になるだろうし、その辞める理由を考える参考になるだろう」


ああ、そういう事か。社会人なら、会社からの辞令などがあるだろう。特に、正社員で下の方は逆らえないだろう。


「今から準備しますけど・・・」


「それじゃあ、何人か早速連れてきても?」


「どうぞ。色々探索者と言う職の何かを打ち砕く見世物になるかもですけど」


巌さんが頷くと、道場の方に人をやったので、自分達は靴を履いて中庭で準備する。まずはダンボールで作った小さな模型。大きさはニュースで解説された兎や狼のデータを基に合わせてある。そうしていると、道場の縁側に何人かの人が来る。見知った顔もあるのでお辞儀をしつつ、次は木刀や木の棒、ダンボールで作った斧型に玩具の弓矢、水鉄砲を用意する。


「オッケー。じゃあ、アキラ」


「おう」


アキラがちょうど、向かい側の模型が見える位置にビデオカメラと三脚を設置する。高さは自分達の視点より少し低い辺り。


「オッケー、じゃあ、まずはコレ。斧って言ってもダンボールだけどな」


「かなり難しいな。背後からならともかく、振り下ろししか有効打になりそうにない」


ちょいと、アキラと交代してみる。なるほど、こりゃ、敵の背後からなら縦に振れば倒せるかもしれない、が、しかし獣にそんな隙あるとは思えない。更に相手の背の低さの所為で縦に振り下ろし以外は有効な高さではない。しかも、物凄い近距離なので、兎にしろ、狼にしろ、別のにせよ近寄り過ぎである。肉を切らせて骨を断つと言うが、骨を断つ前にこちらが死にそうである。


「斧は無いな」


「だね」


縁側を見ると、巌さんがうんうんと頷き、何人かはメモを取っている。いいけど、参考になるのかな?


「じゃあ、次、木刀」


「オッケー。うん、先ず距離はある程度取れるね。斧よりマシ程度だけど、斧より攻撃面積が広いと考えると、刀やショートソードはありだと思う」


同じく交代してもらう。うん、これならある程度、距離を持って威嚇出来るし、いざ接近戦と言う時は一番攻撃が安定するだろう。が、う~ん?


「確かにある程度距離は置かれるけど、飛び掛かるという選択肢がある点は注意だね」


「って事は、可もなく不可もなくって所か?」


「回避さえしっかり出来るならメインウェポンとしてありだと思う。ただ、モンスターがどういう動きするか?が鍵だろうね」


次は棒、先の方に玩具の剣の刃の部分を接着したなんちゃって槍である。まあ、それでも上手い事、槍を再現出来ていると思う。しっかり接着がされてるのを確認。念の為、ビニールテープでの固定も行い、アキラに渡す。


「長さにもよるけど、一番狙いやすいな、横に動かれた場合も薙ぎ払えばいいし」


「だね、多分、距離を持って戦うなら一番かな、コレ?」


渡された槍で頭部を狙ってみる。確かに自分達の身長なら、一番飛び掛かられても対処できる距離を保てて、攻撃も出来る。薙ぎ払えば横への移動も攻撃と共に追跡できる。うん、良いな。


「メイン槍、サブに剣。あるいは僕達2人がどちらかをメインのみとすると言うのも手かな?」


「ふむ。ちょっといいかね、トオル君、アキラ君?」


ここで縁側で見守っていた巌さんに声を掛けられる。なんだろ?


「君達は防具について考えているかい?」


「いえ、まだですけど?」


「それなら籠手と足甲を優先すべきだろう」


「籠手と足甲ですか?」


勿論だが、防具についてもある程度考えていたが、巌さんがかなりマジな顔なので、先を問うてみる。


「おそらく、足甲は考えていただろうが、籠手のイメージは剣道で使うアレをイメージしてないかい?」


巌さんの言う通りだ。予めアキラと相談して、足甲はプロテクターではない鉄製を買うつもりではあった。だが、肝心の他の部分は検討中であったのだ。なんでって、18歳からやるとはいえ、他の部分にまで鉄を使うと、動きが鈍るだろうからね。そして、巌さんの言う通り、籠手はそういうイメージだった。


「ちょっと待っていたまえ」


巌さんはそう言うと道場の奥にある部屋に引っ込み、数分後、箱を持ってくる。その箱を開くと、こうなんて言うか、剣道のあの腕を保護する為の小手とは違う、戦国武将がしてるような籠手そのものが出てくる。


「あ、なるほど」


「これかあ」


自分もアキラも思わず頷く。確かにこういう籠手を探してたのも事実だが、う~ん?


「ああ、やっぱり、現代っ子は誤解するよね、コレ、籠手として装備してほしい訳じゃないんだよ」


「「へ?」」


え?どういう事って感じで見ると、先を答えてくれる。


「君達に分かりやすく言うと、盾かな?スモールシールド辺りだ」


あ~、そういう事、そういう事か?スモールシールドは盾ではあるが運用は盾であり、盾では無いと言われる、何故か?良く、ゲームなどでイメージされる盾はラージシールド、受けて止める盾である。スモールシールドはどっちかと言うと逸らしの技術、パリィって感じだ。


「ほら、よく見てくれ。本来はこことか丸み帯びてるのが角ばってると思わないか?」


言われてみると、武士の籠手はこうフィットする感じなのに、装甲部分が尖ってる感じだ。


「ホントだ、ここに合わせてパリィしたり、逸らす感じですか?」


「うん、そう言う方面も教えられるけどどうだい?」


アキラと顔を見合わせる。願ってもないけど・・・


「巌師匠、なんでこんなのが?」


「ああ、うちは今でこそ現代スポーツの剣道の道場だが、一子相伝で戦国時代の武術を伝えていた家系でもあるんだ」


ワオ、衝撃の事実。アキラにとってもそうだったようでビックリしているようだ。まあ、うん、今の平和な時代に戦国時代の武術を教えるとか、まずいよね、うん。目突き、急所狙いとか当たり前の技術って聞くし。


「まあ、武術と言っても、護身術程度だったがね。だが、一子相伝として特殊だったのが逸らしの技術なんだよ」


「「それ、教えても良いやつなんです?」」


思わずハモった。その言葉に巌さんは苦笑しながら、こう言う。


「ぶっちゃけ、本当に敵の攻撃を逸らすためだけの技術と言う事。そして、この籠手は2つしか無いんだ」


あ、ああ。そういう?そういう奴?どういう事かって・・・


「教える相手は少人数過ぎたって事で間違いない?」


どういう事かって、この籠手が伝えられてるのは巌さんの所のみ。技術が凄ければ他にも伝わっても良いはずなのに、籠手はこの2つしかない。つまり、伝承者と継承する者の分しかない。そういう事である。


「そ。もう、この技術は自分の代で終わりかなと思ってたけどね。このような事態ならご先祖様もお許し頂けるだろうと常々考えていたんだ」


アキラと共に頷き合う、時間が拘束されてしまうかもだが、安全な探索の為に足運びや回避方法が学べるのは大きい。


『よろしくお願いします!』


ちなみに、練習は朝から昼。隔日という事になった。土・日・祝は流石に休み。隔日にしたのはまだまだ準備する事やレポート書きとかがあるからだ。聞くと、教えるのは座学と足運びなので日を開けてもOKと言う事だったので隔日練習にすることにしたのだ。なお、何人かの門下生も参加する事になった。まあ、生存能力を上げたいだろうしね。


「あ、いけね。アキラ。続き、残りは遠距離射撃」


「おう、じゃあ、まずは弓」


巌さんにお礼を言いつつ、続きを始める。巌さんも縁側に戻る。


「う~ん?無理だな、コレ。割と定番の武器だけど・・・」


そう、アキラの言う通り、ホントにコレ、こう言っちゃなんだけど使えない。動いてない上に目視出来るのに玩具であるとはいえ、本当に距離が空くと当たらないのである。酷いのだと張りが無い為、矢が上に飛んだりする。


「ふむ、確か隠し芸大会に使ったショートボウが倉庫にあったな、持ってこい」


「はい!」


それを見ていた巌さんが門下生に命じて、倉庫から持ってきた弓をアキラに貸してくれる。


「うん、玩具よりは頼りになるね」


そう言って、撃つが短い距離ならともかく、長い距離だと外してしまう事が多くなった。自分が使っても同様である。勿論、これには原因がある。それは・・・


「風の有無に左右される、矢が山なりの射線で飛ぶ。一番肝心なのが、圧倒的に筋力と弓に関する知識が足りない・・・かな?」


まず、矢が圧倒的に風でブレたりする、コレのせいで当たらない。無風の状態で試したが、こうゲームみたいに真っ直ぐ飛ばない。その原因が筋力の足りなさだと巌さんからアドバイスを頂いた。んで・・・


「これ、移動しながら当てる自信は如何に?」


「無理無理」


アキラは勿論、縁側で見てる巌さんがうんうんと頷き、門下生の皆様も無理無理とジェスチャーしてくれる。いやあ、なんていうか、ゲームはやはりゲームという事だ。あんな風に移動しながら撃てば当たるなんてことは無い。歩きながらだと視線がブレるし、走りながらだと射線確保もままならないのに、無理やりにでも撃つと動いていない模型にすら当たらない。


「となると、スナイパーの如く動かずに撃つのが一番なんだろうけど・・・」


「「動かない相手ってモンスターには格好の餌食だよなあ」」


アキラと言葉がハモる。勿論だが、ここ数日の報道でダンジョンに居るのは角兎や狼だけではない。人型もいるし、魔法を使ってくる個体も居るらしい。そんな中、仲間に守ってもらうとしても、動かない奴なんてモンスターから見れば 的 以外の何者でもない。相手も動くから、どう考えても当たる要素が無い。偏差射撃を常に出来るならば、当てること自体は出来る・・・かもしれないが。


「後、これショートボウなのに携帯性が悪い」


「だよねえ」


何がってさ?弓に必要な物は?そうだね、矢だね。一発撃つと自動リロード!なんかある訳なく、使う分の矢を持っておく、もしくは近くに置かなくてはならず、もし数を持つなら矢筒が必要と。ついでに言うとショートボウですら結構な大きさなので、その携帯性にも問題ありと。


「弓持って、矢筒下げて、回収用のバッグを矢筒に干渉しないように背負って・・・・・・いやあ、無理だな」


持つ物が多すぎる。ボウガンとかもあるだろうけど・・・やはりボルトと言うか矢種を咄嗟に出せるとこに持たないと駄目だし、ボウガンも咄嗟に構えれる訳じゃないからなあ。むしろ、慌てて落としてしまう方が高いだろう。運が悪いと、落とした際にボウガンの機構が破損する。


「うん、弓は没で。人数増えたら検討はするかもだけど」


「だね」


レベルが上がれば、もしかすると体幹が良くなって何とかなるかもだが、もしもに任せる気はない。と言うか、本体のメンテナンス代に矢の代金で赤字続きそうだし、矢のせいで命を任せると言っても良い防具系や治療用の道具に金を掛けないは論外である。


「んじゃ、次は銃・・・はエアガンやモデルガンも購入無理なので水鉄砲」


プラスチックの奴だが、ほんの少しだけ良い水鉄砲を選んだ。さて?


「命中性は良いな。真っ直ぐ飛ぶ訳だし」


まあ、水だからやはり風に影響されるが、実銃なら問題無いだろう。実際、自衛隊のマシンガンとか問題ないみたいだからね。が、まあ、やはりモンスター相手は敏捷に動くし、効かないと言うか、あまり効いた様子が無いのも居るらしい。ちなみに現在最強のモンスターはスライムである。軟体にして酸の塊モンスター最凶である、うん。


「で、実銃は真っ直ぐ飛ぶけど使えるか?って言うと・・・」


「無理だな」


まあ、即答。銃刀法の特例とかもあるかもだが、未成年がどうやって手に入れるか?ってのもあるし、誤射すれば大怪我どころでは済まない。水鉄砲とはいえ、こうして撃ってみると、人間が前で動いてる状態だと、マジでタイミングが難しい。まあ、何より、国が銃を持った探索者をダンジョン外に出る事を許すかって言うと・・・・・・ねえ?


「使えるとしても自衛隊チームぐらいだと思うなあ」


まあ、そういう事である。安全に戦う為の武器としては最良に近いが、最悪にも近い武器だ。


「遠距離は全滅か」


「いや、そうでもないぞ」


自分の言葉にここで来たのは巌さん。お?またなんか良いのある?


「これだよ」


と巌さんが取ったのは庭先にあった小石・・・・・・ああ!


「そうか、攻撃力が無くても良いのか」


アキラも頷いている。学生というか未成年の面が大きい自分達にとっては、変に攻撃を当てて、相手に思わぬ攻撃をさせるより、ほんの少しの怯みや隙を見つければいい。


「すいません、巌さん月謝払いますんで、そう言う知識指導もお願いします」


「承った」


うん、実戦形式で無いとは言え。餅は餅屋、武道に関しては武道家だ、うん。


命懸けの探索ですからね、武器や心得は武道家に聞けが一番です。それでも、足りないのがチートなんぞない現代ダンジョン探索者の辛い所です

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