第59話 久々の登校とちょっとした事案
「あ~、やっぱり注目浴びてるね」
「まあ、仕方ないわよ」
久々の登校。校門前で送り迎え用のワゴンカーから降りた自分達は注目の的だ。まあね、うん、自宅が帝国ホテルの敷地内になっちゃったから、学校まで走るには学生には遠すぎるからね。
「父さん、ありがとう。そっちも仕事頑張ってね」
「おう」
自分の父親である桐谷 一夜はそう言うと、車を発進して職場に帰っていった。帰りは職員室のカメラで自衛隊にお願いする感じだ。まだまだ油断ならないらしいからね。ちなみに、着替えはいつもの家庭科室・家庭科準備室で男女分かれて、朝のルーティンであるマラソン訓練はグラウンドで、昼からの訓練は校庭の片隅で、課題は準備室でと言う感じになっている。自衛隊基地、マジで便利だったなあ、便利だったなあ。大事な事なので2度言いました。
「自衛隊基地って快適だったんだな」
「せやな」
アキラも同感のようだ。とっとと準備室で着替えて外に出る。って、うぉっ!
「うわ、そういえば、今、冬が近い秋だったな」
「マジで自衛隊基地が神に見えてきた」
「「「同感」」」
自分とアキラの言葉に対する言葉に女性陣が頷く。何が神って、暖房・冷房が効くランニング出来る施設あるし、終えたらクールダウン出来るシャワー施設に、直ぐに飯にかかれる食堂付き。学校への通信は例のカメラで出来る。荷物は随時点検が入るので安全。・・・・・・あれ?
「なんで、俺達、あそこを出て、また学校で訓練やってるの?」
『気持ちはわかる』
うん、まあ、学生だから仕方ないんだけどね。慣れてしまったなあってなる。ん?
「どうした?」
「いや、なんか、視線感じたけど、気のせいかな?」
「1年生の新人探索者の子とか、補習中の子の視線じゃない?」
かなあ?と思って、朝のルーティンを再開する。確かに好奇の視線に見られてる感じはするが、自分が感じたのはもっと、こう・・・別の視線な気がするのは気のせいかなあ?
「先生、準備室の鍵をお返しします」
「おう、お疲れ。ある程度聞いてはいたが、いざ見るとすげえもんだな」
ああ、そういえば、ランニング等の運動はともかく、本格的な稽古は学校でやるのは初めてか。道場は2つとも数日の工事があるらしいので、工事を終えるまでは学校での稽古になったんだよな。
「そんなにです?」
「補習中の奴らがポカーンと見てたからな。確か数人は結構な階層潜ってるらしいぞ」
ああ、それは、多分・・・
「多分、そいつ等、到達した最高階層より、かなり上の階層である日突然怪我したでしょ?」
「お?噂で聞いたのか?」
いやあ、聞いたというかなんというかと思いつつ、課題もついでに提出しながら続ける。
「いや、その辺は今日が久々の登校だから知りませんけど、多分、下駄履かされて、あるいは、履いてたんだと思いますよ」
「下駄?」
そういや、一応ダンジョン出現して長いが、この辺のダンジョン事情はまだまだ浸透してない頃だった。まあ、一般人に探索者の全てを知れ!は無理だわなあ。実際、結構な数の生徒がやってそうだし、一応は確認の意味でも報告しておいたほうがいいか?
「最近増えてきたらしいんですけど、学生探索者に下駄。つまり、お金払っての護衛業者が増えたんですよ」
「やばい話か?」
「いえ、そうでもないです。まあ、結論から話すと自業自得ですね」
「と言うと?」
「その護衛業者って、海外だと問題あるの多いですが、日本って法治国家な訳ですよ。なので、国が許可出した探索者達が行ってる訳です」
「ふむ?」
まあ、国が運営してるとは言ってもお金払ってるから、学生的にはある意味援助交際よりは健全だけどアウト寄りのセーフ・・・かなあ?金額については今は誤魔化すが、高いのだとオプション込々で2~3桁万円行くらしいからね。その辺は調べてもらおう。で・・・
「親御さんとか知ってるかは知りませんし、本人達が誤魔化したかは知りませんけど、下駄、すなわち傭兵が居ない時にここぐらいなら自分達だけでも行ける!って突撃したんじゃないですかね?んで、その結果が怪我・・・と」
「ああ・・・・・・今までは遠慮してたが、個人面談も必要そうだな、補習組」
ああ、孔明先生の顔が引きつってる。もしかして、マジでそういう報告入れてなかったって事か?例えば・・・・・・
「もしかして、補習連中。親御さんや先生にもこう言ってません?撤退中にこけた、あるいは、逃げ切り中に派手に転倒した辺り?」
「おう」
ああ、うん、実際に一般人からしたらダンジョン内でのことは探索者しか分からんし、監視カメラとかある訳じゃないからなあ。あ、そうだ。
「面談するなら、ちと時間貰っていいです?」
「うん?」
ああ、うん。この辺も一般人と探索者の違いというか解釈の齟齬っていうのかなあ?
「探索者は外ではスキルや魔法は使えませんが知識や体の使い方は持ち越せます。勿論、アイテム等もね。なので、自衛隊に面談の護衛と、もしかするとですが逃亡しようとした奴の確保を頼むんですよ」
「ああ、そうか。頼むわ」
なお、後日、自衛隊の隊員の監視の下で行われた各学年の個人面談にて、問題アリアリの学生が多数発生、親御さんの怒りと罵声、先生達からもお怒りを受けた者多数だったらしい。中でも酷かったのが、護衛業者が居ない時の怪我を理由に謝礼金を出し渋ったパーティがあると知った時は護衛の隊員達も先生達もドン引きしていたらしい。金の切れ目が縁の切れ目って知らんのか。
ちょっとしたフラグの回収とちょっとした事件のお話。




