外伝5 龍堂 明
面白い奴、最初、確か小学3年生ぐらいの頃にクラスが一緒になった桐谷 透という人物と会って最初に思った事がそれだ。慎重に慎重を期す、そんな奴だった。例えば、こんな話がある。雪合戦がある。子供なら何も考えずに突貫。それが最も小学生ぐらいの子供がやる事だ。が・・・
「アキラ、アキラ。こっちに道を掘り進めて行こう」
と言われ、持ってきた玩具のシャベルで雪と土を掘り、敵陣近くまで道を作り、2人の奇襲でフラッグを取り勝利した事はその雪合戦での伝説となった。この事もあり、とにかく安全、そして、安心を異常なぐらい求める奴、それが評価だった。そして、その評価にして信頼は今もなお続いている。そして、あいつが言うアドバイスは今も常に守り続けている。
「アキラ君!」
思考に耽り過ぎた事で油断した。思わぬスピードで迫るラビット。妹や委員長が横に薙ぎ払って!という声が聞こえる。だが、俺がその時に閃いたのはアイツの言葉だった。
『突くしかない状況の場合、トオルならどうする?』
『感触が嫌になるだろうけど、引き抜きやすいように捩じりながら突くかな?』
それを思い出し、体が咄嗟に回避と同時に手首を槍が回転するようにスナップさせ、ラビットの頭部から捩じりが何度も発生する突きを入れる。肉を裂く音、頭部を潰す感触が来る。うぇえええ、これは確かにきつい。
「ふぅ・・・・」
「あら?思ったより平気そうね?」
いや、まあ、槍を手放さなかったのは意地もあるし、委員長に言われるほど余裕なくて、咄嗟に三優が手を握ってくれたおかげもあるんだけどね。
「事前、色々隊員さんの話を聞いたり、一番はゾンビビデオが・・・な?」
「ああ、アレね。佐々木さんによると、アレのお陰で初討伐の思考停止する人少なくなったらしいわよ」
『分かる。分かりすぎる』
妹チームと共に頷く。アレ見たらなあ、ぐちゃって人間に近い何かが頭部潰れるシーンって、ゲームならともかく現実にあるって知ると、敵が居る内に思考止めたら、こうなるのはお前だ!って迫られてるようなもんだからな。ホント、トオルは安全・安心の為なら色々無茶も言うからなあ。
「まあ、何はともあれ、陣形組み直し。次が来る」
「みたいね、いけるかしら?」
聞こえて来た足音に委員長も反応、妹達を手で後ろに行くようにジェスチャーし、自分は槍を構える。
「さて、あいつを安心させる為にも、怪我が無い姿で帰るとしようぜ」
『勿論!』
なお、この後、このラビット素材で更に安全安心を邁進する幼馴染に流石の俺も呆れ返り、後に新設されたというニンジャ部隊創設者も当然という黒歴史を作り上げた幼馴染に苦笑する事になるとはねえ。ホント、あいつの周りは飽きないな、マジで。




