第56話 達人はやはりタツジン!
「そういえば、気になったんだけどさ?」
「「「「ん?」」」」
うちのメンバーと朝のランニングルーティンを終えて、休憩に食堂に入った時に気になったことを聞く事にする。
「楓達は多分レベルアップしてると思うんだが、アキラも日数的にレベルアップしてると思うんだよ」
「だな、それで?」
「この中で唯一レベルアップしてないけど、それなりに動ける自分の攻撃って、そちらの目にはどう映ってるのかな?と」
そう、レベルアップした人間の恩恵である。実際、数回ダンジョンに潜ったアキラとの手合わせで8割回避されてるからなあ。残り2割の勝因?奇襲って素敵やん?
「そうだな。まずうちの妹や委員長、楓ちゃんもそうだと思うんだが、世界が一瞬だけスローになる」
「所謂、集中力を極限に研ぎ澄ました世界であるゾーンってやつ?」
「ちょっと違う。なんて言うかこう、お前が動くだろ?攻撃の為に攻撃行動取るじゃん?そうしたら、動線みたいなんが見えるんよ」
ああ、なるほど。静止した世界とかではなく、動線が見えるからスローのように攻撃してくるように見えるのか。経験無いだろうか?剣道の面打ちとかの様子をじっと見てる内に段々スローモーションのように見えてくる経験が。アレである。
「とすると、割と先手取れる感じなのか?」
全員分のお茶をドリンクバーで取り、机に置いてから聞くと、全員が首を横に振る。
「ところがそうもいかないってのが現実だな」
「そうね。まず、動き自体は分かっても回避は別なの」
「って言うと?」
動きが見えるのに回避が出来ない、ホワイ?
「スローに見える世界と現実は一致しないって事だよ」
ああ、そういう事か。アキラの言葉で納得した。要するにだ、槍の達人相手でもこの機能は使える。来る方向も分かる、動きも分かる、槍の攻撃方法もどう飛んでくるか分かる。しかし、その槍が必ずしも回避出来るわけでは無いという訳だ。達人の槍の速度だからね。気づいたら貫かれてましたがオチという訳か、オーケー理解した。
「巌師匠なんか凄いぞ。来ると思った瞬間斬られてるし」
「一度私とアキラ君で挑んだけど、1分も保たなかったわね」
「oh・・・・・・」
あれからたまに訓練に来てくれるんだよね、巌さん。自分は瞬殺だけど、アキラ達探索参加がコンビ君でも1分か。・・・・・・あれ?
「猛翁の動きはどうなん?」
「「「「アレは無理」」」」
「アッ、ハイ」
曰く翁の動きを録画したビデオで今なら動きが読めると思った委員長だが、全く動きを見抜けなかったらしい。
「具体的に言えば突きの動きがいきなり切り上げに変化したりね。後、圧が凄くて、どうしても攻撃を誘導されちゃうわ」
『ああ』
全員、一通り、翁から訓練受けてるんで分かる。後の先というのがある。それがある相手には不利なのにどうしてもあの圧から逃れたくて攻撃してしまうんだよな。
「んじゃあさ?」
「うん?」
やべ、すっげえ怖い事考えついちゃったよ。それで、つい、声に出しちゃったよ。でも、ここまで来て言わないのもアレだし、怖い考えの犠牲者は多い方がいいよね?お前等も道連れになれ!
「猛翁や巌師匠がレベル上げたらどうなると思う?」
「「「「はい、この話やめ、やめ!」」」」
その日はこれで解散と相成ったが・・・とある時にある事実が判明するのはかなり先の話である。
まあ、武道の達人は称号が伊達では無いというお話と少し秘密のフラグのお話




