第54.5話 流石に、そんな馬鹿は・・・
「どうだった?」
「なんとかってとこだな。マジキツイわ」
ぐったりしているのはアキラ。まあ、ダンジョンの洗礼受けたって事である。
「三優に槍は突くより薙ぐ方が良いよと言われたんだが、こっちに来るの見るとつい、突いてしまって」
「ああ・・・」
分かる。師匠達や道場で槍はこうするのが良いよと教えてもらうのだが、咄嗟にやると突きの方が出てしまう素人槍使いの悲しき習性。そして、その際に肉を突く感触は事前の鶏の締め体験よりも感触がきついだろう。
「何とか、持ち直しはしたけど、お陰で薙ぐより肉の感触がなあ。今日は肉はいいや」
「中華粥辺りにしたら?」
「だな。で、トオルは何してんのさ?」
「これから表面化するであろう問題の洗い出しさ」
「ん?どれどれ?・・・・・・あぁ、そういう事か」
アキラが見て、頭を抱える。今までも十分にあり得た。だが、これからは更に横行するであろう事。それは・・・
【ドロップ品の強奪、もしくは争奪戦、それに対する対応と厳罰の執行】
これである。認可が付いてない武器が売れなくなった馬鹿は次に何を狙うか?そう、ダンジョンを出て、帰宅中の未成年探索者や初心者である。確かにダンジョンを出るとどんな高レベルもダンジョンで得たフィジカルも魔法も使えないがそれなりに戦えはする。しかし・・・
「詐欺に強盗は人間の悪意の十八番なんだよなあ」
「それな」
一番厄介なのはそういう類の人間である。なにせ、その手の知識に力があればやれてしまうし、何より、元手はタダである、横行は目に見えている。なにより・・・
「海外ではもう起きてるらしいんだよね」
「うっわぁ・・・」
参考資料に翻訳された海外サイトを見せる。うん、アキラがドン引きするのは分かる。自分も銃社会こっわ・・・になった。つまり、そういう事である。コレ、プリントアウトして学校と道場に参考資料として提出するかな。
「で、対応策は?」
「色々考えたけど、アレしかないね。一罰百戒。協会がまた徹夜記録更新するだろうけど、頑張ってくださいとしか・・・・・・」
では、どうするかと言うと、資料のタイトルにもなっている通り、厳罰化である。それも、未成年だの初犯だの関係無しの厳罰と言えば分かるだろうか?簡易裁判からの死刑直行である。流石にここまで過激なら、早々にそういう奴は出ない・・・・・・はず?
「まあ、流石に居る訳無いよな。死刑台直行だもんな!」
「そうだよな!」
なお、早速数日後にその死刑台に登る事になった奴がニュースに出たのは言うまで無く、まさか本当に直行とは思わなかった犯人が誰も居ない法廷で喚く映像が出回ったのも言うまで無い事である。なお、そんなお間抜けなニュースが流れるテレビに「なんでやねん」とうちのチーム全員と自衛隊員全員が同時刻にツッコミ入れたのも言うまで無い事である。
そして、バカは出現するというお話。人間の欲は止められない事が多いですからねえ




