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第5話 妹との話、もしくは現代探索者に大切な心構え

「はぁ、さて、話をするか」


その日の夕食後、リビングで頬を膨らませる妹と落ち着かせる為に親父が妹の隣の椅子に座る。母さんは夫婦の部屋に居てもらう事にした。もう聞いてるからね。


「まず、お前が探索者免許を取るのは俺も父さん達も承認はしている」


「だったら!」


楓が思わず立ち上がって声を荒げた事を自覚したのか、俯きながら立った後に座る。


「探索者免許を取ったら、()()()()()()()()()()()()。そう思ったか?」


「っ?!」


自分が出した冷たい声にびくりと脅える妹。分かってはいたが、案の定か。さて、ここからもしばらくは厳しい口調で行く。父さんも頷いているので、フォローはお任せしよう。


()()()()()()。これ、何か分かるか?」


「え?」


「免許発行開始から、今日までに()()()()()()()()()()だ。重い人間だと、現在集中治療室入りだ。市内の集中医療室の大半はほぼ未成年で埋まってるらしいぞ」


ここでようやく気付いたのだろう、楓は顔を青くする。そう、あれから16歳になった探索者が制限ありとは言え、ダンジョンに潜り、怪我で登校が出来なくなった数である。そう、制限ありでこの数である。父さんも流石にそこまでとは思わなかったのか驚きの顔である。


「父さんにも見てもらいたいんだけど、これ、低階層に出てくるウルフね。名前と格好自体は何の捻りも無いけど・・・」


例の探索者マニュアルに載っているページを2人に見せる。一見はただの狼だ。しかし、それはダンジョン外での見かけだけという事、ここからが重要で・・・


「メートルクラスの()()()()()()()()()()膂力と引っ掻き、そして、咬みつきがある」


「なるほどな。俺が働いてる所では様子見だが、他社では怪我人が多い訳だ」


父さんが納得したと言う顔で頷き、楓はもう言葉も出ないようだ。ちゃんと話し合いの日に話したんだがなあ、モンスターは危険である事。我が妹、マジで浮かれていたと見える。


「で、次、ホーンラビット。まんま、角が付いたウサギだ」


「捻じり角か。ゲームなどでは良く聞くがどうなんだ?」


楓がもはや軽口も叩けないので、父が質問してくる。ちなみに、うちは最低限の成績さえあればゲームは容認する家だ。なので、父母共に結構なゲーマーである。


「情報を集めてる中でも未成年探索者や低階層探索者の一番の怪我の原因がこいつ。防刃チョッキも貫通するらしい。刺さると簡単に抜けないから、手足に刺さると、ポーション治療があっても刺さった部位は切断クラスらしいよ」


長さにして、ホント50センチそこそこで、1本しかないのだが、このゲームなどとは違う短さがこいつの厄介さに直結する。捻じれている為、傷が広がり皮膚や骨をズタズタにする。ゲームみたいに長くないからホーンラビットが暴れると更に広がっていく。しかも、暴れてる時に折れると刺さったままの状態で戦闘を終えた上で病院に運ばれるが神経を繋げる手術などは手遅れになる事が多いと来た。うん、エグすぎるな。


「そして、16歳は最も体が出来ていない時期でもある。確か、お前、陸上部だったな?」


「う、うん」


「体力の基礎はあるだろう。もしかすると、モンスターを倒せるかもしれない。で、仮にそうだとして()()()()?」


「え?」


「これが今回の問題の本質だ。免許を貰ったとしよう。すぐにダンジョン入ったとして、すぐに貰える代償が大怪我か?下手すると万にも届かないお金か?」


「・・・・・・」


妹が青い顔から思案顔になる。父さん辺りに甘いと言われるかもだが、まあ、実際、問題の本質はこっちだからな。今頃、アキラの家も同じような議論がされているだろう。向こうは親父さんが厳しめだが、そういう時のアドバイスも与えてあるから大丈夫だろう。妹がこっちを見てきた事で続ける。


「18歳までしっかりと鍛えれば、まず基本からして違うから他の探索者より長く入れるし、潜れる」


「うん」


「18歳以下は取り扱い出来ない刃物系の携帯許可も下りるから、より敵を倒す手段が増える」


「あっ!」


「な?下手な怪我するよりマシだろう?まあ、みっちりと鍛えてもらうがね、どうだ?自分の言いたい事は間違ってるか?」


「ううん」


「まあ、実際今日までの楓の調子がこのままなら、俺が許可出さなかったがね」


「え、お父さん、マジ・・・?」


うん、まあ、いつもの調子に戻って良かったよ。まあ、ここから更にアレな事も話すがね。


「あ~、希望持った所で悪いがな、楓」


「うん、何、お兄ちゃん?」


ま~、早い目に知った方が良いと言う事で、向こうでも今頃妹さんに話してるだろう。女の子にはきつい話だろうけど、まあ、話すしかないな。


「1年後、つまり、16歳になったら、訓練の一環として、問答無用で日常生活で紙おむつ履いてもらうからな。最低でも半日は尿意・便意は我慢せずにだ。実際、今日も俺は朝から昼の臭い消しの為のシャワーに入るまで履いてた」


「・・・・・・・・・・・・は?え?ええええええええええええええええ?!」


この後、妹がアキラの妹に電話してもう1回向こうの妹さんと共に絶叫するのは仕方ない事である。うん、まあ、親父が爆笑してたけど、心構えが必要だからね、仕方ないね。



探索者は一見ゲームのような憧れの職業ですが、現代に来るならゲームの世界ではありません。その辺、本当に大事ですよねと言う妹とのお話合いでした。

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