第52話 マスコミ騒動の一先ずの決着
『わーお・・・』
それから更に時間が経ち、本来ならば合宿が終了予定だった夏休み前の7月前、それは全国に衝撃をもたらした。いや、下手をすれば全世界からも注目された日になっただろう。
「なるほど、こう来たかあ」
例えばの話になるが、取材に対する対応だがいくつかある。父さん達のように手が出せない所に引っ越す。取材対象を手を出せない所に置く、これは僕等。手が出せない後ろ盾を持つ、この場合、大金持ち、権力者、政府がそれに当たる。だが、いずれの方法も一時的な処理である。解決では無い。では、猛翁と探索者協会と学校が打った手とは何か?
「表向きは全マスコミ関連の刷新・・・ね。今秋を目途に大々的に行うと」
「今頃、マスコミ各社大絶叫大会してんだろうな・・・裏で」
自分とアキラの言葉に女性陣もうんうんと頷く。テレビでは昨日の夜辺りからこのニュースになっている。このタイミングの良さに各探索者関係の電子掲示板や自衛隊員の間でも大変話題になっている。しかし・・・
「擁護の話がゼロな事に苦笑いしかない」
『残念でもなく当然』
自分の言葉に対するメンバー全員の迷い無き、いや、迷う事すらなかった満場一致である。
「んで、合宿延長」
「まあ、コレに関しては仕方ない。問題が解決するまで我慢するしかないだろうよ」
自分の言葉に対するアキラが言った問題とは何か?単純だ。この業界追放された者達の復讐である。と言うか、すでに前例として一応まだ手が出せる巌さんの道場が襲われかけた。かけたと言うのも、警察だけでなく自衛隊の見回りの厳重対象の中で、ナイフどころでは無い武器を携帯してたら、そりゃそうだよなってなる。
「中には、生き残ってた僅かなマスコミ元探索者も居て、大事件になったのよね」
まさに、マスコミ関連の刷新前の刷新を行う意義を問うセンセーショナルな事件となった訳である。復讐のつもりが追放された関係者が更に針の筵となる結果になった訳である。では、その矛先がどこに向かうかと言えば?
「まさに合宿を終えた直後の自分達狙いって短絡的すぎない?」
まあ、その、言っちゃあなんだが、アレだ・・・学校に危険を回避してもらう為に、刷新前のマスコミ関係者にも学校関係者から当初の合宿終了予定日を告知しておいたら、これである。
「それで自衛隊基地の周りうろうろしてるのバレて、捕まえた奴から襲撃計画がポロっと。アホかな?」
何がアホって、探索者としては最高レベル集団が居る基地の周りをウロウロしてれば怪しいとしか言いようがないのである。更に、ここ最近の自衛隊基地はダンジョンのドロップなどの関連もあって監視の為のカメラとか各所に大増設されたらしいからね。普通はマスコミ関係者なら知ってそうなもんだが、復讐心が計画の邪魔したって所かな?
「まあ、素人ならともかく、プロの尋問だもんなあ。警察より怖いだろうしね」
アキラの言葉にうんうん頷く自分達。まあ、そういう訳で合宿はもうしばらく続く感じになったのだ。多分、マスコミ関係者、忘れてるよなあ。探索者は確かに一般人とは違う。しかしながら、当然の弱点も存在するという事を。まあ、流石にそこまで短絡的な行動はしないでしょ、多分。
<とある場所にて 自衛隊制圧隊長>
「アルファ1、制圧完了」
『ベータ1、制圧完了』
『ガンマ1、制圧完了』
「全制圧完了を確認。各自、捕らえた者達を強化チューブで拘束、並びに犯罪探索者の対応で行うように」
各チームの進捗を確認した通信を終えて、改めて、彼等を襲撃しようとした者達のアジトとなった倉庫を見回す。目を押さえて呻く者、口を押さえて咳を激しくする者、その場に気絶して動かない者など様々だが、共通するのは生きて無力化を完了しているという事だ。
「本当に制圧成功してしまいましたね。あの少年、末恐ろしくもあります」
「だが、あって当然の視点だ。同時に、これは我々の弱点でもある。驕っていたまでは言わないが、制圧した者達を見ると他人事では無いな」
「しかし、驚きましたね」
「ああ。超人故に大きくなる弱点・・・・・・か」
近づいてきた部下に答えつつ、作戦の概要を思い出す。探索者としてダンジョンに潜っていた者も居るアジトの制圧作戦。最悪、銃のセーフティを解除し、大量の殺人も覚悟していた。しかし、そんな所に今回の作戦の情報がもたらされた。
「フラッシュバン、通常の人間なら視力を一瞬失うだけで済みますが」
「鍛えた探索者の視力はそうもいかない。攻撃や回避の為に鍛えられた目は光を大量に吸収し、一瞬の閃光でも眼窩が完全に焼ける。更に視力を失う原因はポーションでは治せない」
「では、回復はどうするか?と言うと・・・」
「魔法しかない。しかし、魔法はダンジョン外では使えない」
「そして、対象が見えないのに必死で魔法に縋ろうとする」
当然、ダンジョン外では使えないので無駄である。その結果、無力化に成功すると言う訳である。暴れはするが近づかなければいい。逃走の手段も目と言う感覚器官が効かなければ無謀だ。まして、建物内なら尚更だ。そうして、麻酔銃の中身を筋弛緩剤に変えた銃で探索者と思わしき者達を無力化する。一般人と見分けがつかないだろう?と思うかもしれない。が・・・
「一般人ならフラッシュバン食らった時点で気絶するんだよな」
ちらりとピクリとも動かない、多分、恐らく一般市民を見る。始末書は書かなくてもいいって言われたが、これはやり過ぎた・・・かな?と思ったのだが・・・
「まさか、こんなもんがあるとはなあ・・・」
連行されていく自称一般人と元探索者の恨み辛みが書かれた日誌、いや、計画書入り日誌と言うべきか。それを見て、ますますこいつ等を逃す訳にはいかなくなった。
「トオル君とアキラ君どちらかの拉致ってアホかな?」
「まあ、探索者の人数的にやれると思ってたんでしょうかね」
また、読み進めていくと最初の内は結構な人数居たらしいのだが・・・
「この日に日に何人かが行方不明になった・・・の下り、絶対米の国の人にパーン!されただろ、コレ?」
「もはや、重要人物っすからね、トオル君。我々も気を引き締めないと」
「だな」
さて、この後、色々と聞かなきゃだな。プロを舐めるなよ、マスコミ共。
前回の外伝からのある意味続き。これを見て、更に怖い人達を怒らせた結末ってやつですねと言うお話。え?上層部とかどうなったって?それは・・・ね?(笑顔




