第51話 ちょっとだけ未来的な話
「おぉ!」
「まだ、試作にして試運転の段階なんだけどね」
佐々木さんに案内されたのは宿舎の1階にあるパソコン室である。それを見ると、画面で孔明先生が手を振っていた。
「リアルタイム通信ですか、コレ?凄く滑らかに動きますね」
「ああ。だが、今あるパソコンではかなり無理があるのでね。これを利用した世界初のパソコンでもある」
取り出されたのは少し前に話に出たエネルギー硬貨。これを原料としたCPUを使ったノートタイプのパソコンの試作機らしい。それが2基。
「そして、対になるのがこのカメラアイになる。近い内、携帯出来るタイプの電話にも組み込まれる予定だ」
『いやあ、驚いたよ、こんなに小さいのにそちらの声が聞こえるのは不思議なもんだ』
取り出された先生の所にもあるであろうカメラアイは玩具か?と思うほど小さい。なんか知らんが、通信業界に革命起こしてない、自衛隊、大丈夫?ってなる。後、どこかから悲鳴が聞こえてきたような、気のせいかな?
「これを使ってお互いの報告をするといい。追跡装置もついてるから盗難の心配も無いよ」
やっぱ、地味に革命起こしてますよね?!いや、有難いけど。
「先生、そっちはどうですか?」
『ああ、見るか?カメラ移動させるぞ』
そう言って、先生が持ちあげたであろうカメラ画面が移動する事しばし、職員室の窓に近づいていく。そして、かかっていたカーテンの隙間からカメラアイを向けると、ああとなる光景が広がっている。
『うわっちゃー』
学生チーム全員で天を仰ぐ。そこから見えるのはまず校門に守衛さんの場所以外に警備に立っている人が居る。最初は警察?と思ったが、服の色などを見てみると自衛隊の隊員のようだ。流石に銃は持ってないけど。つまりは・・・
「警察では抑止になり得ませんか」
画面が戻っていくのを見つつ、言葉にする。マスコミ探索者は例の件でほぼ全滅しているが完全では無い。また、元々、この時代までは強行取材が多かったのもある。そして、家族と言う取材の絶好の対象は手が出ないホテル警備の敷地内へとなれば、学校以上の取材地は無い。そして、集まるマスコミ集団。そら、警察の見回りだけではってなる。そこも踏まえて、佐々木さんが派遣してくれたのだろう。
『まあな。ただ、そろそろ、取材チームは減ってきているのも確かだな。が、お前達が学校に復帰出来るか?と聞かれると難しくある』
だよねえ。要は学校を辞めれば雲散霧消する事態。しかしながら、すぐに転校と言うのも難しい、探索者カードを預けてあるからね。そっちのセキュリティも心配になる。そして、自分達が姿を現せば再び押し寄せるだろう。いざ、取材対象当事者になると面倒くさいなあ・・・
「そこで、このパソコンの出番と言う訳だ。今あるパソコンと同じようで同じではない。ファイルを高速で送れるようになっているし、対面による面談なども行う事が出来る」
後で知った事だが、コレ、後々のダンジョン探索Vチューバーの元になってしまったらしい。それを聞いて、後にすいません、課題を送るだけの為に使ってましたとは言えなくなるのだが、うん、閑話としよう。
「なるほど。あれ?という事は?」
『登校はもうしばらく待ってくれ。今、糸崎家と相談中でね、もう少しかかりそうなんだ』
つまり、合宿の延長か。猛翁と学校で何する気なんだろ?
「ちなみに、この相談に関して、政府も手を貸している。何、悪いようにはならないさ」
まあ、大人組が皆動いてるなら大丈夫かな?・・・・・・・・・と思ってた時期がありました、ハイ。
ちょっとだけ未来が違った2000年のお話。革新的ではありますが、しばらくしたらもっと上が出るのもお約束ですね。




