第49話 特化型ダンジョン
「特化型ダンジョン・・・ですか?」
「そう、実はね・・・」
事件から更に2週間ほどの夜。食堂で皆とご飯を食べていると佐々木さんが同席して、この話は始まった。曰く、例のテレビ局探索者騒動。救助の際にパニック症になった女性探索者からの治療の際のヒアリングでテレビ局が隠していた未探索ダンジョンがいくつか証言されたらしい。その中に、ドロップや見つかる物が特化しているダンジョンがあったそうだ。
「そらまた、国際会議が紛糾しそうなダンジョンですね」
「実際、まだ確認中と言う体で調査中だが、そうなるだろうね」
曰く、食糧ドロップモンスターに特化したダンジョン、鉱物のドロップや収穫に特化したダンジョンが見つかったらしい。うわ、国際会議、マジで紛糾しそう。
「特に食糧特化ダンジョンはヤバそうですね」
「そうなんだよねえ」
食は世界を制す。まさにこれを地で行くダンジョンと言えるだろう。オーク肉等、ダンジョン食材の需要は言うまでなし、美味しさに満足度は以前行ったスーパーの通り。それが無限に落ちると言えば分かりやすいだろう。
「が、非公開は無理と?」
「遺憾な事にね」
アキラの言葉に苦笑する佐々木さん。まあ、うん、今でさえ、マンパワーギリギリなのにこれ以上抱えるのは、どこかの管理を放棄せねばならない。簡単に権利放棄できないのが国営ダンジョンの辛い所である。
「ええと、それで助言が欲しい・・・・・・と?」
オイラァ!は助言与える神では無いんですけどねえ。まあ、ただ、佐々木さんの話を聞いて、確信している事がある。
「一般公開で良いと思いますよ。どこかの国の探索者集団やお金持ちが占拠しようとしても無理だと思いますしね。と言うか、絶対無理だと断言します」
「その心は?」
佐々木さんの言葉に地道に食べてた今日の夕食、ハンバーグを食べて一息ついてから言う。まあ、いつもの事ながら、予想ではあるんだがって、いつの間にか人に囲まれとる!メモ取る準備早いっすね・・・
「特化型ダンジョンはそのダンジョンで特化したモンスターが大量に出る。それが答えです。むしろ、救助部隊への人員と予算の編成を気にした方が良いと思いますよ」
「と言うと?」
佐々木さんは得心いったようだが、そこが分からないメンバーの代表として質問するアキラに頷いてこう答える。
「食糧特化ダンジョンを想定して言うけど、アキラ、仮に軍隊率いたとしてもミノタウロスの集団相手出来る?」
「死ぬ。死んでしまうわ、そんなの!」
『ああ・・・・・・』
小さい獣型のモンスターやオークなどなら、まあ、こちらもパーティをいくつか組めば、何とかなるだろう。が、しかしだ。どんな国の軍隊やお抱えの探索者が動いてたとしても、自分の予想が正しければ、その階層のみに留まるだろう。何故か?簡単だ。
「ゲームじゃないんだよね、現実は」
『 そ れ な 』
自分の言葉に、佐々木さん、メンバー、周りで聞いてた人が頷く。まあ、一応警告出しておいてもらう事を佐々木さんと話し、それを無視したら?自己責任ですよって事だね。
<<自衛隊救助部隊 特化型目録 仮名:食糧ダンジョン>>
1~2階層
出現モンスター:オーク、スモールカウ。主にそれぞれ豚肉と牛肉をドロップ。部位に関してはランダム。両方とも、少なくても5体出るので注意が必要。また、オークは角笛持ちが居る場合は最優先で排除、増援呼びアリ
採集物:小麦、人参、ジャガイモ。品質に関しては問題なし。念入りな検査を行い、ダンジョン外に持ち出しても問題無し。現在、国家研究所にて保管中、結果待ち。
3階層
出現モンスター:ミドルカウ。このモンスターのみであるが、侮りがたし。巨躯の牛が平均10体以上で集団で現れる他、簡単な魔法も使用、侮った探索者が怪我を負う事案多数、注意されたし
採集物:1階層とほぼ同じ他、ホウレン草など葉野菜を確認。ただし、ミドルカウが食い尽くしている事多し
4階層 調査中
出現モンスター:ミノタウロス、ビッグカウ、ビッグゴート。いずれも巨大モンスター。ただし、集団で出るので現在3階層以降は自己責任階層として登録。各探索者に告知済み
採集物:不明。しかし、少し先に行った救助隊員から米らしきものが見えたと報告。今後の進捗が待たれる
食料特化と言うありがちなダンジョンですが、ここはゲームではありませんよというお話。この為にかなり前にミノタウロス肉出したのも伏線でしたと言うお話。こんなん独占しても犠牲が出るだけなんですよね、ホントに




