第36話 ダンジョンがもたらす良い事、悪い事
「ほ~」
「へえ~」
冬休みに入り、初の休養日に家族でちょっとした話題のスーパーに来ていた。どう話題かと言うと・・・
「ここがダンジョン食材を扱うテストケーススーパーか。かなり大きめに作ってあるんだな」
そう、父の言う通り、ついにに政府、いや、各国はダンジョンの特に食材を扱う事を決めたのだ。勿論と言えば、勿論なのだが、モンスターが落とす素材の中には肉がある。しかし、迂闊に食べて体に異常があればという事もあり、治験やテストが長い間行われ、更に、ダンジョン原産という事で変なパワーアップになったりしないか?な事もあり、長らく身内で消費していたが、ついに消費しきれなくなったらしい。かと言って、腐らせるのも勿体ない。何度も厳重に行われた治験では変な反応やパワーアップは無かったという事で、一般流通に踏み切ったらしい。
「ま、入ってみようよ、結構混雑してるけどさ」
カートに籠を載せて、入ってみる。なんか、入場する時に困惑した人を見かける事が多いのが気になるけどね。
『あ~、なるほど』
家族全員、食品コーナーを1周して出た感想がコレである。うん、まあ、入場した人達が困惑していたのは言葉にすると単純で簡単だ。
「 高 い 」
『 そ れ な 』
自分の言葉に両親、楓が同意する。例えば、ファンタジーではとてもポピュラーなオーク肉。要は豚肉なのだが、コマ切れ肉100グラムが3000円。うぉ、たっか・・・しかないであろう。コマ切れでコレだから、ちゃんとした肉は、うん、もう言うまでもない。
「うわ、見て、お兄ちゃん。ミノタウロスステーキのランプ肉、このサイズで5000円だってさ」
楓に言われて見てみる。よくある安いファミレスで提供される薄めの通常サイズのステーキ肉でコレか、高い。しかも、部分的にランプ肉でコレだ。サーロインは・・・・・・見なかった事にしよう。
「スープの出汁取り用のモンスターの骨とかもあるんだな、これは高いなあ。でも、参考になるな」
ああ、そう言えば、父さんとこは食品関係で探索者採用も始めたんだっけか。そら、参考になるわな。ふ~む?
「へ、お兄ちゃん、それ、ミノタウロスのサーロイン?!」
ええい、声がでかいぞ、妹よ。周りにも注目されてるじゃないか。まあ、そのステーキ4枚も載せたら、そらビックリはするだろうが。だって、味とか気になるじゃん?買えるなら買うよね?
「ちゃんと自分が払うから大丈夫、食いたいだろ?」
「まあ、そうだけど・・・」
「あ、父さん、母さんも気になるのあったら入れてくれ。自分が全部払うから」
『お、おう・・・・・・』
家族全員からドン引きされたが、ここいらで佐々木さんからの報酬、ある程度使ってしまいたいからなあ。と言う訳で、お買い物タイムは学生が使うような金額じゃない為、両親も焦っていたとだけ言っておこう。後、この時代、2000年初期ではかなり珍しい配送サービスも併用したが、すごい慎重に運ぶ作業員さんには申し訳なかったかな?と思う。
『う~ん、この・・・』
買い物を終えて、併設されているフードコートでラーメンを食べる家族の言葉がコレである。解せぬ。ちなみに、ミノ骨と、ミノタウルスチャーシューを使ったラーメンで一杯3500円也。うん、使い過ぎたがその旨味に抗えませんでした。美味過ぎる!
「しかし、コレ、ある意味まずくない、父さん?」
「だなあ、一般的な現行食材に急に取って代わる事は無いだろうが、問題は外食産業だ」
「だよねえ」
現行、まだお高いダンジョン食材を使ったレストランは数少ないだろうが、供給が安定し始めたら、見える形で外食産業の在り方が変わっていくだろう。そうなると、ダンジョン食材を使う店と使わない店があるとする。最初の内は互角だろう、しかし、味を知った客が徐々に食材ある店に通い始め、最後は使わない店の連続閉店とかになりかねない。
「外食を食べる先の決め手は高級店ばかりではないだろうけどね。けど、この味知っちゃったらなあ」
「だよねえ」
「そうねえ」
自分の言葉に楓も母さんも頷く。それほどにまで美味いのだ。価格は目玉が飛び出るが、そこはダンジョン食材の仕入れの手数料と考えれる。探索者協会の検疫などもあるから、まあ、値段としては妥当だし、お高いお高いというが、良く考えると、普通の良い食材使ったラーメンとかでも2000円超行くのだ、そこから少し贅沢と手間賃と考えるとマジで妥当だし、少し仕事頑張ればご褒美的な贅沢とも見れる。
「ダンジョン食材自体も年数経たら安くなるだろうけどね」
「当面はこの価格と言う事か」
まあ、そういう事である。雇用探索者を雇うなら仕入れはロハに見えるが、ドロップ品は基本的に一度協会を通して持ち出されるものだし、雇用した探索者をお安い給料とか許されざるである。と言うか、そんな企業はブラックだし、協会の監査も入るだろうからね。金額は自ずと安定するまでお高いまま維持される可能性も高い。う~ん、やはり高級食材。まあ、検疫代や雇用以外にもお高いのにもそれなりの理由がある。それが・・・
「それもあるけど、鮮度があるんだよね、食材」
『あ~』
ちゅるんとラーメンを食い終えてしみじみと呟く。マジックバッグがあるから鮮度は簡単だと思うじゃん?ドロップは相手を倒せば落ちる。そういう事である。ズバリ言えば、ドロップと同時に運ぶなら倒すのに調整しないといけないし、そんな事を毎回やれと言われたら無理と言うだろう。というか、もし命令したなら、そのパーティ全滅覚悟は確実である。んで、思わぬ事で倒しちゃったパターンなんか、そこで調子が狂う要素しかない。それは避けなければいけない。連携は勿論の事、怪我にも関わるからね。安全と堅実、何度も言うけど大事。
「戦闘中に拾うのも危険度が増すしかないんだよね。父さんとこの探索者にも注意しておいてよ?」
「ああ」
とは言え、こうなると、まずいのは外食産業だけではないなあ。これから世界どうなるかねえ。計画も一度見直さないとな。何故か?この先、探索者は様々な所からお声がかかるだろう。それは必ず良い者ばかりとは限らない。特に楓には注意しておかないとな。うん。あ、ミノタウロスのサーロインはメチャクチャ美味しかったです、はい。後日、アキラや委員長に色々言われたのも言うまでない。経費でまた買いに行くかあ。
悪い事とも良い事とも言える様々なモノをもたらすダンジョンが目に見える形になって来たというお話。




