外伝3 その頃の世界
テイマーと言う職業を日本が獲得した。その速報は世界中に飛び、国際会議にまで発展する。世界は絶叫、あるいは情報に殺到する、日本からのその情報の公開は様々な悲喜こもごもが各国で発生した。その一端を少し見て行こう。
【アメリカ大統領の場合】
「クレイジーだ」
ビデオで見た内容はこの一言しかない。今、会議室に居る閣僚もビデオを見て、自分に同意している。眉間を揉みつつ、議会の進行役に手を振り、一旦休会の意を示す。許されるなら、匙を全て投げてしまいたいぐらいだ。
「ああ、理論的には可能だろうさ」
ああ、分かっている。日本の探索者協会の、そう、佐々木と言ったか?彼も首相も悪意があった訳ではない。それは分かっている。だが、彼等は忘れている物がある。ふーっと息を吐いた後で向かった喫煙所で普段は吸わない葉巻を取り出し、震える手で火を点け、居た閣僚達の方を向き・・・
「可能かね?」
この一言で、彼等が渋面を作る。それ程の欠点とは何か?
「かなり、いえ、アメリカの歴史でも類を見ない程の予算、人材、資源を消費する事になるでしょうな」
「おそらく、日本でしか出来ないでしょうな。いえ、日本でしか可能な国が 無い と言うべきですかね」
どういう事か?派閥である。どこにどのような派閥がどのように妨害してくるか、これに尽きる。日本の自衛隊と同じように統率されたアメリカ軍に任せれば良いように見える。しかし、派閥と言うモノがそれを妨害する。
「専属を作れるかね?」
「不可能ではありません。しかし、敵対派閥も同じ事をしてくる可能性に加え、妨害に反対の可能性も否めません。下手を打てば各州で謎のテロが頻発する可能性もあります」
「人材の育成も同様です。まだジョブが取れていない、戦闘をしていないという条件が厳しすぎます」
「その人材の為の支援部隊に地図作り、加えて、モンスターを倒さずかわしていく人材の育成。どれほどまでかかるか・・・」
日本にも派閥はある。しかし、早くから探索者協会と自衛隊が連携した事。また、テイマーの誕生を日本の国益で一致した時期が早い事が日本のテイマー誕生の土台となったのだ。アドバイザーが居るらしいが、一体どんな者なのやら。
「会議を続けよう」
今はそれしかない。我が国はどこかに簡単に頼る国ではないのだから。
【ロシア大統領の場合】
「ロシア国内においては情報の封鎖を行う」
『はっ!』
即座に意味を理解した閣僚達が出ていく。確認した後、情報が書かれた紙を握り潰す。クレイジーだ。実例が居なければ、誇大妄想だと、あの国際会議に出た各国の大統領に首相も思っただろう。だが、実例が複数居る。
「我々には必要ないジョブだ・・・と言えれば良かったのだがな」
モンスターは未知の存在ではあるが、味方に付ければこれほど頼もしい探索の助けは無い。各国の思惑はそこだけは一致していた。だが、条件が厳しすぎた。
「洗脳は無理だな。クソ、国家予算がどれほど溶けるか分からんぞ」
机の棚から胃薬を取り出す。クソ、コレもそろそろ、効いたとは思えなくなってきたな。そういえば、日本ではラッパのマークの胃薬がかなり効果あると聞いている。後で通販で頼んでみるか。
【中国主席の場合】
「どうだ?」
『無理です』
即座に閣僚から返ってくるのは、この言葉のみである。うん、私もそう思う。何がって?
「テイマー希望者は魔物を倒さず、攻撃せず、20階層まで駆け抜けろって何のジョークです?いや、ジョークであって欲しいのですが?」
発言した閣僚の言葉に私も含めて一斉に頭を抱える。当たり前だ、派閥もあるが、こう言ってはなんだが我が国の探索者、軍は利己的だ。いや、恥を晒す様だが、もっと言えば、我が強く、欲が深い。この国を考えるなら自分が行きたい所ではあるが、万が一がやばい。そうなると、自分の家系になるが、先も言った通り、我が国の者は利己的である。選択間違えればクーデターは確定であろう。じゃあ、どうするかって?何も対策無いんだな、コレが、あっはっはっはー!
「しばらく、休会とする、各々で対策及び対応をまとめてくれ」
一言だけ、恥も外聞も捨てて言わせて欲しい。日本のアホーーーーーーーー!!!!
【台湾&トルコ大統領の場合】
「「日本に支援・育成を頼もう」」
それからしばらくして、両国にテイマーが誕生し、各国の大統領、首相・閣僚はずっこけるのである。
大国の欠点とは!自国のみで考えてしまう事なのだぁー!と言うお話。そら、やり方指導や支援してくれるならそうなるなと言うお話でもあります。




