第29話 探索の前の心構えの1つ
『うわ・・・ウップ・・・・・・』
今日は少し前から週1で取ってる休養日に巌さんに紹介してもらったある所に来ている。そして、そこで自分含めて顔真っ青の全員が発した第一声がコレである。現在地、個人経営の精肉店。そこで行われる・・・
「とまあ、これが解体手順だ。ああ、ここでは吐かずにそっちの水場で吐いてくれよ」
『うっす・・・』
店長の有馬 彦道さんに言われ、自分も女性陣も一斉に水場で吐く。しばらく酸っぱい臭いがしたが水で流し、改めて向き直る。
「想像以上に血の臭いってきついんだな。後、悲鳴なあ・・・」
そう、鶏の解体を見せてもらっていたのである。自分もアキラも妹達も委員長もそれなりに訓練はやって来た。しかし、ただ一つ、どのような訓練でも中々得られない事がある。それは、生物を 殺す と言う覚悟である。未成年探索者にありがちな怪我の原因として大きいのが血が噴き出し、生物を殺した事によるパニック症が原因と言われている。要は呆然としている所に、モンスターが攻撃を仕掛けて・・・という事だ。
「まあ、初めてだろうからね。今日から2~3日は御両親に頼んで肉以外を食べた方が良いよ。多分、コロッケレベルでも食えないだろうし。実際、僕もしばらくは肉食えなかったからね」
オウフ、経験者は語るってやつですねえ。巌さんが朝こっちに来る前に各々の家に今日からしばらくはご飯に肉以外をお願いするよう言っておけというはずだわ、納得。
「それじゃあ・・・・・・やろうか」
『アッ、ハイ』
さて、鳥の締め方は定番ではあるが首をキュッと絞め、動きが止まった内に首を一気に切る。これであるのだが、これがまた難しい、老鶏でも結構力が強いし、逃げ足も速い。捕まえて、そこからたまに失敗してはを繰り返し、全員が終わる頃の感想。
『血に慣れるとかより、捕獲から解体まで出来る有馬さんが凄い』
いや、まあ、血や悲鳴に慣れるのが目的だったけど、その行程に至るまでの疲労の方が勝ってしまった。いやね、捕らえる、コンビ組んだ人に抑えてもらう。刃見えた鶏が暴れる、逃げる、もう一回捕獲出来るドン!が多くてさあ。最終的に全員がとっとと終わらせる!という感じで解体したから、血とか悲鳴が気にならなくなってました。
「とは言え、この匂い、きついなあ」
「吐きそうにはならなくなったけど、ダンジョン内だともっと派手に血を浴びる事になるでしょうね」
アキラと委員長の言葉に頷く。きっと比べ物にはならないだろうけど、心構えは出来たと思う。それに・・・
「意外と生物ってタフだなってのも勉強になったわ」
『 そ れ な 』
有馬さんから聞いた時は驚いたのだが、首を落とした鳥の体がしばらく元気に動いていた。これはある意味重要で、相手を完全に仕留めるまでは油断出来ないと言う事を改めて知ったと思う。まあ、そのアレだ・・・・・・
「ホントにしばらく、鶏肉と牛肉食えそうないわ」
『 う ん 』
楓が首が切れた鳥が動き出したのにびっくりして手を離した瞬間、鳥が走る光景はしばらくトラウマになりそうである、はい。なお、そんな光景を見ても有馬さんは一切動揺しなかった。しかも、冷静に鶏を押さえてた、強すぎる。勿論だが、しばらくの間、委員長に妹チーム、自分やアキラもしばらくはマク〇やK〇Cの店舗を遠回りしたのは言うまで無い事である。
本物の絶命ほどではないですが、こういう事をやっておいた方がショックは少ないというお話




