第11話 夏休みの終わりと変わる常識
「わあい・・・」
「うっわぁ・・・」
夏休みが終わった登校日、自分達は普通より早く来て、家庭準備室、言い忘れたが2階の奥の方にある部屋の窓をカーテンの隙間から覗いた光景に絶句する。
「これは酷い」
部活登校してる者はともかく、おそらく探索者免許を取ったであろう者は一様に怪我、暗い顔での登校である。おそらく現実を見た者、無茶をした者様々ではあるが、そういう事だろう。コレ、無事っぽいの満16歳に満たないのと部活顧問から止められたの、んで、多分うちのクラスぐらいじゃねえ?ってぐらい登校してくる数が少ない。こりゃ、マジで免許没収が現実味帯びてきたな。
「あれ、多分・・・ポーションが良い稼ぎになるから使ってないな」
「ゲームじゃあるまいし、エリクサー症候群かよ」
「アレの方がマシまである説。アレは使わないんじゃなく、使わなくても良いという判断まであるからなあ」
「こりゃ・・・」
「分かってないの多そうだなあ」
アキラとうんうん頷き合いつつ、準備室に用意して貰ったパソコンにデータを打ち込むのだった。後で、佐々木さんとこにもFAXするか。
「先生、コレ先週分の課題です、今週分受け取りに来ました」
あれから朝昼までは道場で鍛錬と座学、昼は家で食べて、家の中で課題を行ったり、ストレッチをしたりを夕方まで道場で行う、放課後に課題を七生先生に渡してる所である。しかし、まあ、溜め息着く先生の多い事、多い事。周りの先生達の会話を聞けば、今日、自分の学年でまともに教鞭取れたのうちのクラスぐらいなのでは?ってレベルだったらしい。
「おう、お疲れ。こっちが課題になる」
「うす、受け取ります。なんか、やっぱりです?」
「ああ、先に言っておくとお前さん達の行動については今まで通りだ」
あ、この前置きが来るって事は・・・
「察しの通り、職員会議で怪我してる奴、保険医の判断から見て、大怪我しそうな奴は学校の権限で免許没収の上で補習する事が決定した。で・・・」
あ、やべ。この流れ、まさか、いや、先生が前置きした後、めっちゃ長い溜め息ついてるから間違いない。
「退学届けがかなりの数出たらしい」
オウ、アホ共だらけですねえ。今日の朝にレポートついでのとある書類出してなかったら、もっとヤバかったかも。何書いたって、多分ラッシュ来るであろう退学届けの一時預かり、つまりは退学届けは受け取るが有効にしない事である。
「親御さんには?」
「当然説明済みだ」
ですよねとしか言いようがない。多分、親にも説明してないの居るだろうしね。一時は好きにやらせてみて、現実を知らせる親も居るに違いない。
「あ、それと、佐々木さんって、お前さん等の知り合いだろ?後日、謝礼を作った口座に振り込んでおくってさ。後、欲しいものがあればどうぞだと」
あ、やっぱり、全国で同じ事起こってそうだもんな。徹夜記録更新お疲れ様です、南無。で、欲しいものねえ。マジックバッグは今はいらんし、貸しにするとして・・・ちょっと思いついた事があるので、一度佐々木さんにアポ取るか。
「緊急ではないが将来的に緊急案件?」
「ですね。ただ、大半が推測になりますが間違いなく、どれぐらい後になるかは分かりませんが大騒動になるかと」
「うん、話してくれ。音声記録頼むよ」
秘書っぽい人が頷き、録画機器を用意すると、どうぞと促される。
「まず確認なんですけど、前の騒動のマジックバッグ、アレ、ダンジョン出現からあの日まで各国でも日本でも見つからなかった・・・は間違いない?」
「うむ、間違いない」
「とすれば、間違いないかな。ここからは憶測と推測が多数混じります。しかし、根本的に間違いないと言う事を前提に聞いてください」
「了解した」
自分的にもまだ憶測ではあるが最も恐ろしい考えが浮かんでしまったと同時に、おそらくダンジョンが次の段階を踏もうとしているなら、これは、日本だけではなく、世界各国にも震撼を与えるだろう。いや、与えてしまうと断言出来る。出来れば、すっごく外れてほしいけどね。
「ゲームのような話ですが、持てる量が増えないと奥深くまで潜れない、これは初期の頃のあるあるだったと思います」
「だね。自衛隊もポーション類が外れ!と出たら、膝から崩れ落ちるぐらいだったからね」
オウ、思わぬ裏事情が聞けてしまった。まあ、瓶は普通にガラスだし、ポーションは医療に使えるしで、ずいぶんアレだったんだろうな。
「武器と防具はお世辞にもファンタジーとは言えませんが現代社会を考えると、手段選ばなければ強力な物はいっぱいあります」
「そう・・・だね」
佐々木さんも部屋に居る関係者も気付いたようだから、結論を言ってしまおう。
「これらの条件を前提として、結論から言えば、ゲームで言う所、ジョブを持つ者が現れると思います」
「ああ・・・・・・」
前回同様にすぐにでも話を終えて、対策に向かいたいのが顔に現れてるが、すいません、もう1つ爆弾を落とします。
「でですね。中でも厄介なジョブ。これは確実に誕生すると思うんですが、聞きます?」
「ちょっと待ってくれ。すぐに戻る」
しばらくすると、佐々木さんは茶色の瓶を持ってくる。中身は錠剤。まあ、つまり、胃薬だろう。それを飲むための紙コップに入った水を部下の人数分。要らなそうな部下にもいいから飲んでおけと上司権限で持たせたようだ。
「ふぅ、それでは始めてくれ」
なんか、佐々木さんが胃薬グイ飲みする姿に刑事ドラマとか漫画とかで見た胃薬飲む上司役の人を思い出して謎の感動。うん、まあ、でも、この人の行動、正解なんだよね。なんでって?
「テイマー。つまり、モンスターを使役するジョブが沸きます。確定レベルで」
『ゴッフゥ!!!』
あ、飲まなかった人達が震える手で薬飲み始めた。どうして確定かと言うと、先ず、マジックバッグを思い出してほしい。ダンジョン発見からずっとそんな兆候が無かったのにダンジョンが行き詰まり始めると見つかり始めた。まあ、つまりは・・・
「ダンジョンがある程度の攻略頻度になってきた所でマジックバッグで取得物の所持数の拡張。そうなると、次の問題は人間という限界」
「と言うと?」
「人間は死があります。ポーションがあっても限界と言うモノが存在します」
そこかあと言う顔をされる。どういう事かって、人間は怪我の処置が遅れれば死ぬし、致命的な攻撃を食らえば死ぬ。実際、最近死亡のニュースも少しづつ出て来ているのだ。
「と言うか、これからも死亡報告は増える傾向あると思いますよ。エリクサー症候群が完全に晴れたとは言い難いですし」
そう、一応、佐々木さんを中心とした探索者事業はポーションと命どっちが大事ですか?と言う感じの声明を出したのだが、まだ1年も満たない上に、ポーション系は未だに高額という事もあり、無茶する人間も一定数いるのだ。
「それなあ・・・私も大々的に触れ回ってるのだが、回復ポーションに安値は・・・ねえ?」
うん、分かる。マジックバッグが出た今、怪我が一瞬で治るポーションを買い取り値下げするとどうなるか?なんて容易く見える未来だもんなあ。何がって?探索者によるポーション詐欺の可能性である。買い取り易ければ、一般人にポーション売ればいいじゃない!ってなる奴も一定数いるのは間違いないからねえ。まあ、そこはさておき・・・
「で、話を戻しますが、人間はなんだかんだで限界があるんですよ、レベルが上がろうと歳には勝てませんし、怪我が重なれば後遺症も出ます。ポーションだって副作用がゼロとは限りません。何より、ダンジョンはゲームじゃありません。現実です。死は油断してもしなくても免れません、引退しない、もしくは関わらない限りはね」
「確かに」
ここで一息、ここからだ。
「だが、ダンジョンはモンスターだけに有利にならない為に色々出してきた」
「っ?!」
佐々木さんが目を見開く。おそらく政府、いや、世界中でも考えられていただろう。何がって?何故、モンスターは素材を落とすのか?また、ダンジョンは宝箱を出現させるのか?である。
「モンスターと闘う事で強くなれた、マジックバッグがドロップする事で防具や回復リソースの為の素材やポーションを多く持ち帰れるようになった。じゃあ、後、人間がモンスターと対峙する為に人間に足りない物は?」
「なるほど、戦いの手段・・・」
そう、ジョブって訳だ。そして、中でも手数を多くする手段であるテイマーは確実に入るだろう。で・・・
「まあ、早い目に作った方が良いと思いまして、御報告させて頂きました。何って、テイマーマニュアルの作成とモンスター宿舎場所の作成?」
『ごっふぅ!!!!!』
まあ、同時に佐々木さん達のお仕事も増える訳である。だって、モンスターテイムしたとしても、外に出すわけにはいかんでしょ、常識的に考えて。
まあ、そうなるなとしか言いようがない結果とも言えるという話。そして、まあ、あるんだろうなあと言うジョブのお話。




